2012年・アジア太平洋「新秩序」の胎動と日本外交

政治・外交

2012年は、アジア太平洋の新秩序づくりが始まる年だ。「アラブの春」「欧州危機」「イランの核疑惑」「金正日死後の北朝鮮」等々―着地点の見えぬ国際的な難題・課題。今こそ新たなルール作りとアーキテクチャーが求められているが、政権トップの交代あるいはその可能性を孕(はら)みながらの政治的胎動は既に始まっている。

試練の日本外交

アジア・太平洋地域で米中両国の覇権争いが本格化する中で、日本外交には何が求められ、日本政府は今年、どんな外交を展開しようとしているのだろうか。 

日米同盟基軸の日本外交にとって、中国の動向は最大の変動ファクターだ。米国では国防予算の制約が今後も長期的に続くと見られるが、その米国を下支えしながら「いかに日米同盟の抑止力を維持・向上させるのか」―これが今後、日本の外交安全保障の長期的な課題になると言えるだろう。

例えば、その際、日本の対フィリピン支援は大きなポイントとなる。

フィリピンは、在日駐留米軍の要となる沖縄と豪州との間、即ち軍事的真空状態をつくりかねない地域の中間に位置する。1990年代初頭、米国は台湾危機にも即応できるフィリピンのクラーク空軍基地とスービック海軍基地から軍を撤収したが、中国海軍の外洋化が進む今、アジア・太平洋における有力な足場としてフィリピンの重要性を痛感している。

その後、米国は比軍事施設の一部使用など軍事的プレゼンスを再び確保したものの、対中抑止力としてはまだまだ不十分だ。日本政府としては、「フィリピン沿岸警備隊の能力向上に協力する用意があり、武器輸出三原則の緩和はこうした観点からの対比支援に大いに貢献できる」(外務省筋)としている。

インド洋への足場づくり

また政府部内では、インド洋における拠点整備策も検討されている。日本としては、インド洋における軍事的プレゼンスの向上をうかがう中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗、自衛隊の艦隊親善訪問、遠洋航海、共同訓練などの寄港を通してスリランカやバングラデシュの拠点化を図る方針だ。加えて、対中一辺倒から米国との均衡策に振り子を修正したミャンマーとの関係緊密化を進める方針だ。そしてインド洋に面する港湾への足場づくりを模索することになるだろう。

「2012年は、これまで先延ばしされている懸案をこなし、13年以降に備える年」―ある外務省幹部は今年をこう位置づける。昨年暮れ、日中国交正常化40周年の年を控えて野田佳彦首相は中国、続いてインドを訪問した。国境を接する両大国へのこの訪問で注目されたのは、とりわけ日印関係に関連して両国首脳の毎年交互に訪問する定期的往来が定着、対中けん制に使える次元にまで高まりつつある点だ。

そして、続く年明けの1月9日から日本の防衛担当閣僚(当時、一川保夫防衛相)がモンゴルを訪問。防衛協力強化の覚書を交わすなど、中国やロシアを意識した戦略外交を展開した。これは、「中国の裏庭」に足を踏み入れたことを意味するが、小泉政権以後、「一年交代宰相」が恒例化した日本政治の漂流が続く中で、果たしてこうした戦略外交の「点」を「線」に、さらには「面」にまで展開させることが出来るのか否か―13年以降につながる成果を挙げられるかどうかが、今年は問われることになろう。

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