2012年は日本の社会保障の分岐点

政治・外交

野田佳彦首相は2015年度に現在5%の消費税率を10%へ引き上げることを柱とする、社会保障と税の一体改革実現に「不退転の決意」を示している。しかし反対論は与野党に広がり、政府が3月に国会提出を目指す関連法案の成否は依然見通せない。同法案の行方が最大の焦点となる12年は、日本の社会保障が安定に向かうか否かの分岐点となる。

世界最速級で進む少子高齢化

1月20日午前、政府は急きょ一体改革に関する5閣僚会合を開いた。その場で消費税率のアップ分、5%の使途を全額社会保障財源とし、内訳について1%分(約2.7兆円)を社会保障制度の充実に、4%分を現行制度の維持に充てる、との統一見解を決めた。

5%の使い道に関し、政府はこれまでも「社会保障財源化する」と表明していた。増税に対する国民の拒否感を和らげる狙いからだ。とは言え、実態は増税分の約1割を政府の物品調達費増に回す仕組みで、「目的外への流用は理解を得られない」との批判が出ていた。そこで13日の内閣改造で入閣した岡田克也副総理が、即座に修正を決めた。

現在は65歳以上の高齢者1人につき、現役世代2.8人で支えている格好だが、40年後には1.3人で1人を支えねばならなくなる。年金、医療、介護にかかる国費は17.2兆円(11年度)。それなのに今の税収では6割近い10兆円分を賄えず、赤字国債発行で補っている。20年度にはこの不足分が16.3兆円に膨らむ。国の借金が1000兆円になろうとし、欧州危機の影が忍び寄る中、大幅増税は避けられないのが現状だ。

整わない増税への環境

実際、一体改革の社会保障部分は、消費増税抜きには成立しない。基礎年金の国庫負担割合を50%に保つ費用(約2.6兆円)など現行制度の維持費に加え、市町村の国民健康保険の保険料軽減(約2200億円)、幼稚園と保育所の機能統合(約1兆円)などの新規施策はほぼ消費増税頼み。このため、政府は増税への地ならしに躍起となっている。

それでも環境は一向に整わない。22日の自民党大会で、谷垣禎一総裁は野田政権が求める消費増税の与野党協議を「密室談合」と切り捨てた。公明党も基本的に自民党に足並みをそろえている。さらに野党ばかりか、与党・民主党内の慎重論も強まっており、小沢一郎元代表は同日、北海道釧路市の会合で「改革が何ひとつなされていない中で増税するのは、国民に対する背信行為」と述べ、消費税率アップに反対する考えを重ねて示した。

一体改革の素案には、「新年金法案の13年国会提出」といった民主党がマニフェストに掲げた項目が並ぶ。マニフェストを重視する小沢氏らの賛同を得るため、実現困難なのを承知の上で、土壇場で盛り込んだ。だが、同党マニフェストは自民、公明両党を下野させるきっかけとなっただけに、今度は両党を刺激している。政府は結果的に自ら増税へのハードルを高め、社会保障の先行きを不安定化させている。

消費税