再起動する地方の独自課税

政治・外交

地方自治体による独自課税に対する関心が高まっている。関西国際空港の連絡橋を通る車両に「通行税」を課す大阪府泉佐野市の新税構想に川端達夫総務相がゴーサインを出した。

原発が再稼働しない場合の電力確保に向け、橋下徹大阪市長が「節電新税」の検討を表明するなどの動きも出ている。これまで広がりを欠いていた地方の独自課税が改めてクローズアップされそうだ。

関空「通行税」に国が同意

自治体による独自課税は税法に定めがなくても条例で税目を創設する「法定外税」が代表的だ。泉佐野市の新税は関空と対岸を結ぶ連絡橋の通行車両に1台あたり100円(1往復)を課税するもの。10月からの実施を目指し当面5年間、年間3億円の税収を見込んでいる。

「法定外税」の実施には総務相、つまり国の同意が必要だ。物流に重大な障害を与えたり、国の経済施策に照らして適当でないと判断した場合などは総務相は同意を拒むことができる。

泉佐野の場合、連絡橋が国有化されたため年間8億円の固定資産税が入らなくなり、補てん策をめぐり国側と調整が難航した事情があった。通行税構想は以前も浮上し立ち消えとなった経緯があり、「国は同意しないだろう」との観測も根強かった。それだけに国が今年4月「100円の徴収は重要な影響を与えず、国の経済政策に照らし不適当とまでは言えない」と同意したことは多くの関係者に驚きをもって迎えられた。

「法定外税」議論が活発化

自治体による法定外税導入はこれまで決してさかんではなかった。国の許可制が2000年に同意制に緩められたが首長は新税に慎重な傾向があることや、他地域から来る人や特定の住民層が課税対象として「狙い撃ち」になりがちな点がネックとなった。横浜市が馬券の売上げ金に課税しようとしたが国が同意を拒み、断念したようなケースもある。

平成22年度決算ベースで全自治体の法定外税による税収の総額は516億円どまりで、地方税収全体の0.1%に過ぎない。しかも核燃料税など原子力関連が主要部分を占めており、今般の一連の原発稼働停止に伴う税収の減少が予想されている。

一方、住民税など法定税に法律の許す範囲で自治体が税率を上乗せして課税する「超過課税」は法定外税と対照的に多くの自治体に浸透、合計額は4677億円に達する。国の同意を条件としていることが法定外税が不人気な一因との指摘もあるだけに、要件を柔軟に解釈する意識が政府に働いたのかもしれない。

従来にない角度から論議も起きている。原発を再稼働しない場合の夏期の電力対策として新税の導入を橋下氏が提唱している。関西の住民から総額数百億円規模を法定外税として徴収し、節電や自家発電に貢献する企業や個人に配分する仕組みを想定しているとみられる。実現に動く場合は「関西広域連合」が制度化を検討していくことになりそうだ。

法定外税は財源対策そのものよりも、特定の政策目的を達するために活用した方がなじみやすい、との指摘がかねてからある。使い道を限定する目的税とすることも制度上は可能だ。たとえば沖縄の離島である伊是名、伊平屋、渡嘉敷3村は島を訪れる人から1回100円を徴収する環境協力税を目的税として徴収し、環境美化や観光施設の維持費用にあてている。

「地域主権改革」を掲げる民主党政権だが、税源移譲をはじめ地方税制改革への関心は必ずしも高くなかった。だが、名古屋で市民減税が曲折を経ながらも実施されるなど、地方税制の自由化を求めるうねりは確実に強まっている。

政府も法定外税への同意手続きや要件を緩和する方向で検討に乗り出している。税制をめぐる議論が地方議会など自治体レベルでお世辞にも活発と言えない現状に「泉佐野ショック」が一石を投じたことは間違いなかろう。

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