学力テストが招く競争は、子供の成長につながらない

社会

競い合えば学力が上がる。学力テストには、そんな気にさせる何かがあるようだ。「ゆとり教育」による学力低下を心配する声に押されて始まった「全国学力テスト」がこの4月に2年ぶりに行われた。

「理科離れ」の原因究明が新たな役割に

このテストは、OECDによる国際学習到達度調査PISA2003の結果が発表になった直後、日本の国際順位が下がったことにショックを受けた当時の中山文部科学大臣が「学力を上げるには詰め込み教育も必要だ。全国的に学力テストを行う必要がある」と音頭をとって始められた。その後、競争の過熱を心配する声に配慮して、学校の取り組みの成果を検証し、結果を指導の改善に役立てるという別の理由を立てることによって2007年に実施に至った。

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で初めて実施された理科の問題用紙。上が中学3年生用、下が小学6年生用。(写真提供=時事通信)

テストの対象は小学校6年生と中学校3年生。当初は、全員参加で行われたが、前回の2010年から3割程度の学校を選んで行う抽出調査に変更された。政権交代後の政府の事業仕分けで「費用対効果を考えるとサンプル調査で十分だ」との指摘を受けてのことだ。調査対象にならなかった学校は、教育委員会や学校が希望すれば参加できる「希望利用」方式がとられた。しかし、学校同士の横並び意識からか、今回参加した学校は全国で2万5000校余りと前回の74%から大幅にアップして全体の81%を占めた。

今回からは、従来の算数・数学と国語に加えて理科のテストも行われた。科学立国を支える人材の育成めざすという国の方針と子供たちの間に広がる「理科離れ」の原因究明という2つの役割を担ってのことだ。今後も、理科は3年に1度の割合で実施が計画されている。

一日ですませるテストにあまりに多くのものを背負わせた感じだが、夏休み頃に予定されているテスト結果の公表次第で今回の成果が評価されることになる。

見えなくなった目的

今後の課題は、結果のひとり歩きへの懸念、この一点に集約される。5回のテストを重ねるうちに、競争を招かないようにするという当初の意図とは離れ、一部の自治体から学校ごとの競い合いのために必要だという声が上がり、保護者の間からは子供を通わせている学校が「よい学校」なのかを判断する材料がほしいという声が上がっている。

文部科学省は、数年に一度はよりきめ細かい調査を行う必要があるとして、来年は再び全員参加型のテストに戻す。人は比較できる材料が手に入ると、つい競い合いをしたくなる。ただ、瞬間風速のような測れる学力を競い合うことが将来の子供の伸びしろまで保証するとは限らない。目先の結果に一喜一憂する愚は避けたい。

NHK