日本が新たな人材育成援助を表明—アジア海上保安機関長官級会合

政治・外交

アジア各国の海上保安機関トップによる「長官級会合」が9月30日、10月1日の両日、横浜市などで開かれ、海賊対策や海難救助などで地域的な連携をさらに強化することで一致した。

「長官級会合」は日本が提唱して2004年からほぼ毎年開催。今回はバングラデシュ、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、モルジブ、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムから長官級が参加。カンボジア、中国、韓国、香港は代理者が出席した。

各国の若手幹部招き、1年間の「大学院」コース設置

海上保安庁はこの場で、日本が2015年からアジア各国の若手幹部職員を対象にした1年間の人材育成プログラムを開始する計画があることを明らかにした。海上保安に関する高度な実務能力とともに、政策立案のための分析・提案能力、国際的に活躍できるコミュニケーション能力を持つ人材を継続的に育成することで、各国機関が中長期的により緊密な関係を構築できるよう支援する。

計画では、同プログラムは「海上保安政策課程」(マスターコース)の名称で、2015年10月に開講予定。プログラム参加者は政策研究大学院大学(東京)で半年間、その後は海上保安大学校(広島県呉市)で学ぶ。カリキュラムは海上保安政策、関連する国際法の研究に加え、東アジアの国際関係、安全保障論、組織犯罪対策など多岐にわたる。日本各地へのスタディーツアーや論文作成も行われる。

参加対象者は、各国の海上保安機関で5年以上の勤務経験のある若手・中堅職員。政策研究大学院大学、海上保安大学校のほか国際協力機構(JICA)、日本財団が運営に協力する。受け入れ人員について、海上保安庁は「2015年度の政府予算案がかたまった段階で明らかにしたい」としている。

パシフィコ横浜での本会合

連携の取り組み状況を報告

パシフィコ横浜で9月30日に行われた本会合では冒頭、日本財団の笹川陽平会長があいさつに立ち、新たな人材育成プログラムについて「海上で発生する国際的な課題への対処は喫緊のテーマ」「私は、アジアの海上保安の協力体制を強化することによって、安全で豊かな海を次世代に引き継ぐことができると信じております」などと述べた。

あいさつする日本財団の笹川陽平会長

また、同会合が2012年から連携して取り組んでいる「捜索救助」「海洋環境保全」「自然災害への対応」「海上不法活動の予防・取締り」「海上保安能力の向上」の5つのテーマについて、インド、フィリピンなどの幹事国が具体的な取り組み状況を報告した。

一方、マラッカ海峡とその周辺で「タンカーから石油製品を抜き取る海賊被害が急増している」との最近の報道をめぐり、関係国の機関が適切な対処を行っていることを積極的にメディア広報していくことで一致した。

参加者は同日夕、東京で安倍晋三首相を表敬訪問。10月1日には東京湾で行われた日本、インドの海上保安船艇による捜索救助、海賊対策の合同訓練を視察した。

 

タイトル写真:安倍晋三首相を表敬訪問する「アジア海上保安機関長官級会合」の参加者=2014年9月30日、首相官邸(日本財団提供)

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