中国主導のAIIB、条件満たせば協力—中尾アジア開発銀行総裁

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アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁は3月25日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、「競争するのではなく補完する関係だ。アジア地域に膨大なインフラ資金需要がある限り、敵対するオプションはあり得ない。条件を満たせば協調融資などで協力していく」と述べた。ADBとAIIBは一部業務が重複する関係にある。

中国はアジア地域のインフラ整備を支援する目的で、3月末にAIIBを設立する。既に東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などのほか、同月12日には主要先進7か国(G7)で初めて英国が参加を表明、ドイツやフランスなども追随した。

中尾総裁は、最近のこうした一連の流れについて、「各国が主権国家として自分の判断で行っているものだ。執行機関のトップがメンバーシップについてコメントする立場にはない」と前置きしながらも、「ADBは巨額の資金を持ち、多くの専門職員、事務所を構えており、こうした基盤で築いた信頼を生かしながら、AIIBとは協力関係を構築していく」考えを表明した。

「条件満たせば」協調融資や技術協力

ADBの資本金は、2014 年末時点で約1531億ドル(約18兆3000億円)。職員数は2990人で、うち1074人は専門職員(日本人151人)。年間投融資承認額は同時点で約131億ドル、投融資残高は約843億ドルに上っている。

中尾総裁はAIIBとはどういう形の補完関係が考えられるかとの質問に対し、日本の国際協力機構(JICA)など各国政府機関などとの協調融資や技術協力を挙げた。ADBの協調融資承認額(14年)は88億ドル、融資総額(グラント=科学研究補助金=を含む)の約40%を占める。実際に協力する場合の条件としては、「ADBの基準が満たされる範囲内」と述べた。

AIIBが正式に発足した場合、アジアにはADBと並んでインフラ投資を目的とした2つの開発銀行が共存することになる。ADBが「貧困削減」といった業務に特化する可能性はあるかとの質問には、「貧困を削減するためにはインフラ基盤が必要だ。アジアには膨大なインフラ資金需要があり、あえて分ける必要はない」と指摘した。

米国は参加に慎重

AIIBの当初資本金は500億ドルと予定され、中国が最大の出資国になる見込み。資本規模はADBの約3分の1だが、中国の資金が背景にあることから、今後膨れ上がることも予想される。中尾総裁は、「将来のことについては予想できないが、現状について言えば、現在のADBの資金規模は大きいと考えている」と述べるにとどまった。

AIIBへの参加については、日本と並んでADB最大の出資国である米国が、組織運営の透明性や融資審査の公平性などが十分に担保されていないとして参加に慎重な姿勢を取っている。また日本も米国と同一歩調を取っている。

バナー写真:東京都内で記者会見する中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁=2015年3月25日午後、東京都千代田区(時事)