東京都議選、米中首脳会談、ロックアーンG8サミット

白石 隆【Profile】

[2013.06.28] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

東京都議会選挙での自民・公明圧勝

6月23日、東京都議会選挙(定数127)が実施された。自民党は42選挙区に擁立した候補者59人全員が当選し、獲得議席は1977年と1985年の56議席を超えて過去10回の選挙で最大となった。公明党も候補者23人全員が当選した。一方、民主党は選挙前の43議席から15議席に大きく議席を減らし、17議席を得て第3党に躍進した共産党の後塵(こうじん)を拝し、第4党に転落した。日本維新の会も2議席にとどまった。

自民党、公明党の大勝は予想されたことであるが、それにしても圧倒的大勝利である。読売新聞が6月8~10日に実施した全国世論調査(電話方式)によれば、政党支持率は、自民党44%(5月10~12日の調査では47%)、民主党7%(同7%)、日本維新の会5%、公明党の5%だった。また、7月の参議院選挙で投票先を決める際に重視する政策(複数回答)としては、「景気や雇用」86%、「社会保障」84%、「東日本大震災の復興」79%などの回答が多く、安倍晋三内閣の経済政策を「評価する」との回答は59%、「評価しない」は26%、憲法96条で定められる憲法改正の発議要件を衆参各院の3分の2以上の賛成から過半数に引き下げることについては、「賛成」は34%、「反対」は51%だった。

今回の都議選に際し、安倍首相は憲法改正を争点とすることを避け、経済再生一本やりで選挙戦に臨んだ。それが功を奏したとも言えるが、2009~12年の民主党政権への国民の幻滅がそれほど大きなものだったとも言える。7月下旬予定の参議院選挙で与党が大勝し、「衆参ねじれ」が解消されるのはほぼ確実である。

米中首脳会談で「日米同盟」を強調したオバマ大統領

6月7~8日、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談がカリフォルニア州パームスプリングズで行われた。この会談で、習主席が尖閣諸島を「中国固有の領土」と主張し、これに対して、オバマ大統領が「同盟国である日本が中国に脅迫されるのを見過ごすことはできない」と述べたことはすでに広く報道されている。従って、これについては、日本の安全保障と東アジアの安定にとって、日米同盟がいかに重要であるか、あらためて確認し、日本としても防衛力増強、日米同盟の強化、アジア太平洋のパートナー国との連携強化、安全保障協力の推進にいままで以上に努力すべきだ、と述べるにとどめておく。

その上で、わたしとしてここで取り上げたいことは、この会談で習近平国家主席が米中関係について「新型の大国関係」を提唱し、「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と述べたことである。これはどういう意味か。

中国は、今年4月に発表された国防白書において、「強大な海軍の建設」、「海洋管理の強化」によって「海洋強国」の実現を目指すとしている。また、この国防白書では、尖閣諸島問題を作り出したのは日本であると、日本を名指しで非難するばかりか、「ある国」がアジア太平洋地域の軍事同盟を深化させ、軍事的緊張を高めていると、米国も非難する。さらに、中国はこれまで別々の機関であった公安部辺防管理局海警総隊(海警)、国土資源部国家海洋局海監総隊(海監)、農業部漁業局漁政総隊(漁政)、海関総署密輸取締警察(海関)を公安部次官(国家海洋局次官を兼務)の指揮下に統合して、国家海洋局内に中国海警局を創設し、これに交通運輸部海事局(海巡)を加えて第2海軍の建設を目指している。

習近平主席「太平洋」発言の意味

中国の海洋戦略については、近年、中国が東シナ海、南シナ海を「中国の海」にしようとしているとして、日本列島から、沖縄、南西諸島を経由して、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシアに至る「第1列島線」の戦略的重要性が近年、強調されている。しかし、この第1列島線は中国の支配下にはない。また、中国の戦略思想では一般に、国防は線ではなく面で構想される。これについては、寺島紘士氏(海洋政策研究財団)が、「海洋資源をめぐる日中の角逐」(『世界の艦船』2004年9月号所収)において、中国の海洋戦略を理解する鍵概念として「戦略的辺彊(へんきょう)」を取り上げており、これをわたしなりにまとめれば、次のようになる。

戦略的辺彊は、軍事力、科学技術力、生産力などによって担保された国家の実質的な生存空間の範囲を示す概念で、その範囲は軍事力をはじめとする総合的国力の増減によって拡大することもあれば縮小することもある。つまり、総合的国力が弱く、戦略的辺彊が国境まで及ばないときには、結局のところ国境は戦略的辺彊まで後退して国家は領土を失ってしまうだろうし、一方、総合的国力が伸長して国境の外まで戦略的辺彊が拡大し、これを長期間、有効に維持することができるならば、国境はいずれそこまで拡大することになるだろう。その意味で、中国の海洋戦略においては、軍事力の裏付けをもとに総合的国力を増強し、三次元的に戦略的辺彊を拡大していくことがその基本となる。

この「戦略的辺彊」概念に照らしてみれば、習近平主席の「太平洋」発言は、中国が軍事力をはじめとする総合的国力を伸長させるに伴い、その戦略的辺彊を西太平洋への拡大を米国としても受け入れるべきだ、ということを意味するものだろう。これは、別の言い方をすれば、第1列島線、特に沖縄、南西諸島、そして台湾の戦略的重要性が、中国にとってこれからますます重要となることを意味している。しかし、それは防衛ラインとしてではない。中国の戦略的辺彊の拡大において、これが大きな障碍(がい)になるからである。

G8サミットで広域EPA、FTA推進を合意

6月17~18日、北アイルランドのロックアーンでG8首脳会議(サミット)が開催された。首脳宣言では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、日本・欧州連合(EU)経済連携協定、米国・EU自由貿易協定など、日米欧で始まった経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉について、「可能な限り速やかにすべての協定の完結を目指す」と明記し、同時に貿易促進を経済成長の主たる原動力と位置付けて、「保護主義を抑止し、野心的な協定を締結して障壁を取り除く」とした。

すでに広く指摘されるように、自由貿易推進の柱は、近年、世界貿易機関(WTO)から広域EPA、FTA交渉に移行している。2001年に開始したWTOのドーハ・ラウンドが、米国をはじめとする先進国と中国ほかの新興国の対立で行き詰まっている一方で、それほど遠くない将来、おそらく2020年代前半には、世界経済における先進国と新興国・発展途上国のシェアが逆転することを考えれば、日米欧としては広域EPA、FTAの形で21世紀の世界貿易のルールをできるだけ早く作り、投資、サービス、知的財産、政府調達、安全基準などのルールの標準化を進めていくことが望ましいからである。

幸い、日本も、第2次安倍内閣成立以来、TPP交渉に参加し、日本とEUのEPA交渉も立ち上がった。また、最近の報道(『日本経済新聞』2013年6月17日)によれば、日本とEUは、6月24日から7月3日まで東京で開催される第2回EPA交渉で、自動車、電気機器、医療機器、医薬品(ワクチンなど除く)、化学製品の安全基準の相互承認で合意する予定とのことである。安全基準の統一、安全規格の統合は「世界標準」の制定につながる。大いに歓迎である。

(2013年6月24日 記)

 
  • [2013.06.28]

nippon.com編集企画委員会顧問。政策研究大学院大学学長、ジェトロ・アジア経済研究所所長。1950年愛媛県生まれ。1974年東京大学大学院国際関係論修士課程、1977年米コーネル大大学院博士課程修了。コーネル大歴史学科・アジア研究学科教授、京都大学東南ア ジア研究センター教授を経て2005年から政策研究大学院大学教授。2007年、紫綬褒章を受章。2009年1月から2013年1月まで内閣府総合科学技術会議議員。2011年10月から2014年3月までnippon.com編集長。著書に『海の帝国―アジアをどう考えるか』(中央公論新社/2000年/吉野作造賞受賞)、『帝国と その限界―アメリカ・東アジア・日本』(NTT出版/2004年)など。

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