日本政治の閉塞状況を克服するために

舛添 要一【Profile】

[2012.04.18] 他の言語で読む : ENGLISH | FRANÇAIS | ESPAÑOL |

日本の政治は閉塞状態に陥っている。重要な政治課題に答えを出すことができない。そして、答えを出すにしても、時間がかかりすぎる。なぜ、このような状態に陥っているのか。これは日本だけの問題なのか、それとも先進民主主義諸国に共通した問題が何かあるのか。あるいは、日本人だけが自虐的に自国の政治を観察しているのか。

たとえば、ベルギーでは1年半にわたって正式な政権ができず、昨年12月になって、やっと社会党を中心とする6党の連立政権が誕生したが、これなど日本人の理解を超える事態であった。これには、歴史的な言語圏の対立が背景にあるが、政治の機能不全をもたらしたことは言うまでもない。

機能不全の制度的な理由

日本の場合、3年前の総選挙で政権交代が起こり、これまでの自民党に代わって、民主党が政権の座に就いた。しかし、有権者にマニフェストで約束した公約を実行することができないのみならず、大震災、原発事故への対応も時間がかかりすぎたり、不適切だったりしている。

その理由は、様々であるが、制度的な問題もある。それが、衆議院と参議院の多数派が異なるという、いわゆる「ねじれ現象」である。日本国の憲法は、二院制で、議院内閣制を採用している。両院の任期が異なり、選挙の時期も異なることが多いので、そのときどきの民意で、「ねじれ現象」は起こる。

そして、衆議院が参議院に優先するのは、予算、首班指名、条約の3点のみで、他の法案については、すべて両院同一の権限を持っている。そこで、予算は衆議院の優越で採決されても、予算関連法案は、参議院が反対すれば可決されないことになる。税収が十分でないときには、公債に頼らざるをえないが、その裏付けとなる公債特例法案は、昨年同様に今年も、予算案が衆議院の優越規定によって成立した後も、成立しないままの状態である。

この状況を打開するため、憲法上は、衆議院で3分の2の再可決という手段がある。私が閣僚であった自公政権の安倍、福田、麻生内閣のときは、与党で3分の2の多数を衆議院で握っていたので、この方法で再可決して法案を成立させたものである。しかし、今の民主党政権は3分の2の多数を擁していない。そこで、衆議院で可決、参議院で否決ということになり、必要な政策が遂行できずに妥協を繰り返さざるをえなくなっているのである。これが、マニフェストを実現できない制度的な背景である。

「ねじれ国会」解消を真剣に考える時だ

「ねじれ国会」を解消する方法は、二院制を一院制にすることである。あるいは、議院内閣制から大統領制に変えることも考えられる。しかし、いずれも憲法の改正が必要であり、それは容易ではない。そこで、憲法改正を伴わないでできる改革としては、まず両院協議会の構成を、今のような衆参平等から衆議院優先に変えることが考えられる。しかし、これは実質的にすべての法案について衆議院の優越を認めることになり、参議院の同意を得ることは難しい。そこで、首相公選制という改革案もよく提案される。しかし、ポピュリズムの蔓延を考えると、独裁への道を開くのではないかという懸念もある。

フランスでも、大統領と首相の属する党派が対立するという事態がこれまでも生じている。これをcohabitation(コアビタシオン、保革共存)というが、大統領と首相の役割分担をうまく決めることによって、政治の機能不全を防いできた。日本でも、「ねじれ現象」に対する対策が真剣に考えられなければならない。

(2012年4月15日 記)

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  • [2012.04.18]

1948年福岡県生まれ。71年東京大学法学部政治学科卒業。東京大学法学部政治学科助手、パリ大学現代国際関係史研究所客員研究員、ジュネーブ高等国際政治研究所客員研究員を経て、79~89年東京大学政治学助教授。2001年参議院議員に初当選。07年から安倍晋三内閣、福田康夫内閣、麻生太郎内閣で厚生労働大臣を務めた。現在、新党改革代表。

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