自民党型政治に回帰する民主党の政策決定

政治・外交

日本の政策決定過程はどうなっているのか。誰が一番政策を決める力を持っているのか。政治家か官僚か利益(圧力)団体か。自民党の長期政権が続いているときには、これらの問題を研究する学者も多く、一定のパターンが抽出できた。

癒着の温床、政官業の「鉄のトライアングル」

自民党の政務調査会の下に、テーマごとに部会を形成し、そこを舞台に族議員と呼ばれるその分野に利害と関心とを持つ議員と、担当官庁の役人と利益団体の代表が集まって、政策を決めていく。議院内閣制なので、与党の議員たちが閣僚となって、各分野の政策を実行する。その過程で政府(内閣)と与党とが対立するようなケースは、ほとんどなかったと言ってよい。

したがって、官僚も利益団体も、与党の政治家に影響力を行使することが、自らが追求する政策を実現させる近道であった。分野別の部会のほかには、たとえば、税制調査会が毎年の税制改正の中身を決めた。税制改正が業界に与える影響は大きく、それだけに、租税特別措置などを求める業界団体が税調に影響力のある議員に陳情を繰り返していた。

政治家は、業界に政治献金と票を求め、業界は集金・集票マシーンと化していく。官僚は、政治家に政策の青写真を提供し、業界に対しては、規制や補助金などの手段で支配力を行使する。こうして、政官業の「鉄のトライアングル」が形成されていったのである。

有名無実と化した「コンクリートから人へ」

民主党は、自民党政権下のこのような政官業の癒着構造を批判して、政権を奪取した。「コンクリートから人へ」というスローガンは、土建業界と癒着する自民党政治を批判した象徴的な言葉であった。このスローガンも、政権交代を実現させるのに大きな力となった。

さて、以上のような自民党的政治を批判して権力の座に着いた民主党であるが、政策決定過程は自民党時代から大きく変わったのであろうか。答えは否であり、時間の経過とともに自民党型政治に回帰していっている。これは、マニフェスト違反であり、それが民主党政権の支持率の低下につながっている。

民主党も政権をとった当初は、政官業の癒着を打破し、政治家が主導する政策決定を行おうとした。それが、たとえば仕分け作業などに表れており、役所の無駄遣いを止めさせるなど一定の成果をあげて、世論の評価を得た。しかし、結局は専門知識に勝る官僚の反撃に太刀打ちできず、次第に官僚に政策決定の主導権を握られるようになっていった。それに伴い、業界も官僚と協力して民主党議員にすり寄っている。

膨らむ橋下大阪市長への期待

この傾向は、昨年の3月11日に発生した東日本大震災を機にますます強まっていった。それは、民主党に危機管理能力が欠けているからであり、結局は官僚依存にならざるを得なかったのである。また、権力には、蜜に蟻が集まってくるように、業界が接近する。そして、その蟻が運んでくるカネと票を民主党は次第に頼りにするようになっていく。

かつての自民党政権以上に、自民党的な政官業癒着構造を形成していきつつある民主党政権に、国民が失望を感じるのも当然である。その失望が、橋下大阪市長という現状打破的なリーダーへの期待となってふくらんでいる。

(2012年5月21日 記)

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