まやかしの参議院定数変更案

政治・外交

7月25日に参議院の選挙制度協議会が開かれ、自民党は民主党が提案していた「4増4減」案に賛成する考えを示した。「4増4減」案とは、神奈川と大阪両選挙区の定数を2つずつ増やして8にする一方、福島と岐阜両選挙区の定数を2つずつ減らして2にするものである。

自民党が民主党案に賛成したことにより、公職選挙法が改正され、2013年の参議院選挙から選挙区の定数が変更されることが確実になった。定数変更の背景には、2010年7月の参議院選挙に対する違憲訴訟がある。この選挙では「1票の格差」が最大で5.12倍あり、昨年11月以来、全国の高等裁判所で現在の定数配分について違憲、あるいは違憲状態とする判決が相次いだ。今回の変更により格差は4.75倍に縮小される。

最高裁判所は、最大格差が4.84倍あった2007年7月の参議院選挙については違憲ではないという判断を示している。このため、民主党も自民党も4.75倍なら許容されると考えているのであろう。

変更案でも憲法に反している

残念ながら、今回の変更案実施後も参議院の定数配分は日本国憲法に2つの意味で反しており、より抜本的な改革が必要である。

そもそも、居住地によって投票権の重みが違うことは、憲法第14条第1項の平等原則に反している。多くの参議院議員は、参議院議員が都道府県代表の性格を有しているので平等原則にこだわる必要はないと考えている。しかしながら、憲法は参議院を地域代表の院とする考えは採っていない。

また、憲法の基本原理は民主主義であり、民主主義の根本的決定方法は多数決である。国会議員は選挙区の住民の委任をうけて国会で議決権を行使していると考えると、人口が少ない地域が過度に代表される場合、少数の人口の代表者が参議院では多数派となることもあり得る。これはやはり憲法に反している。

最高裁判所も2007年の参議院選挙における一票の価値については「大きな不平等が存する」と判断しており、参議院選挙制度の抜本的改革が必要であるという考えを示しているのである。

衆議院議員が決起を

一票の価値を等しくするためには、選挙区を都道府県ごとに定めている現在の方式を改めるほかはない。衆議院の選挙制度との差別化などを考えると、全国を地域単位のブロックに分け、ブロックごとに大選挙区を導入するのも一案である。

しかし、参議院議員に委ねていたのではいつまでも改革は進まないようである。そこで、私は衆議院議員の決起を求めたい。与野党を越えて衆議院議員が日本国憲法の原則を徹底するような参議院の選挙制度改革を策定するのである。参議院議員が反対しても、衆議院にはいわゆる3分の2の再議決がある。これによって反対を乗り越え、改革を実現すべきである。(2012年7月30日 記)

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