安倍政権に求められる歴史的評価への想像力

政治・外交

衆議院の圧倒的多数の議席を得た自民党が、公明党とともに再び政権運営に乗り出した。新たに成立した安倍晋三政権は、内外に多くの問題を抱えながら、経済政策を中心に多くの施策を打ち出している。この新政権にとって心掛けることがあるとすると、次の2点ではなかろうか。それは経験に学ぶということと、未来からの歴史的な評価をいかに味方につけるのか、ということである。

民主党政権の失敗の経験に学べ

経験に学ぶというのは、先の民主党政権が、自民党政権との違いを強調しようとするあまり、外交面などで路線を見誤り、国家としての政策の連続性を軽視した失敗に学ぶことである。外交・安保の分野では、政権交代があっても、軽々に大幅な政策の変更を加えるべきではない。まずは慎重に事態を見極め、「違いを見せるため」ではなく、国益に照らして改善すべきは改善する、といった政治本来の姿に回帰すべきだろう。

安倍政権には、もしかしたら民主党政権が行ったことを全て白紙に戻して、かつての自民党の諸政策に回帰する、いわば「復古」的な衝動もあるかもしれない。しかし、政権交代のたびに前政権との違いを強調していては、日本としてはさまざまなことが遅々として進まないということになりかねない。従って、安倍政権は単純な復古を自ら戒めることが必要だ。それこそが健全な政権交代のあるべき範ではあるまいか。

未来から評価される政権に

歴史的評価を味方につけるというのは、50年後、100年後にこの政権がいかに評価されるのかという想像力を持って政策に取り組むということである。例えば、内政面では、衆参両院が「ねじれ」の状態にあっても、参議院で多数を占める野党がむやみやたらと政権与党の政策に反対するといったことを抑制するような枠組みを与野党でつくるとか、あるいは議会制度そのものを見直すとか、長期的な視野で政策を展開することが求められる。

外交面でも同様である。対アジア政策などについて、いかなる政策をとればいかに評価されるのか。この点は、対外強硬姿勢をとった1930年代の諸政権に対する現在の歴史的な評価を見れば明らかだ。それぞれの政治家に理念があるのはよく分かるが、その理念をいかに具体化するかは、状況に応じて変化すべきであろうし、そもそも国益にかなうものであるべきという大前提があるはずだ。

新政権が、限られた選択肢の中でプライオリティを明確にし、長期的な視野と歴史的な観点を持って、未来から評価される政権となることを期待してやまない。

(2013年1月7日 記)

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