日本企業の今後を占う試金石となる2013年

平井 孝志【Profile】

[2013.01.29] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL | العربية |

日本企業の2013年業績、底堅く推移

2013年、日本企業の業績は、おそらく底堅く推移するだろう。それにはいくつかの理由を挙げることができる。

まず第1に、国内の環境要因だ。政権復活を果たした自民党が本年夏の参院選をにらみながら、景気対策を積極的に進めることが挙げられる。復興需要の拡大をはじめ、国内景気の下支えがなされるだろう。

第2に、海外市場の復調だ。長期化傾向を見せる日中関係悪化に伴う問題も、経済的な側面ではいずれ収束するだろうし、遅々とした動きではあるものの欧州危機打開の動きも着実に前に進んでいくと思われる。また東南アジアをはじめとする新興国市場も総じて大きく成長するだろう。これらの海外動向は日本企業にとっての追い風になる。

第3に、企業自身の取り組みだ。日本経済の柱のひとつともいえる電機業界や自動車業界において、さまざまな取り組みが行われつつある。過去最大の赤字を記録した大手電機メーカーも、過去の負債を整理し、新たなマネジメント体制のもと将来を向いて動き始めている。同時に大企業の合従連衡も少しずつではあるが進みつつある。リーマンショックで大きく後退した自動車業界も、ようやく危機以前の水準に生産規模を回復した。

中長期の業績回復に不可欠なイノベーションと市場開拓

このように、今年1年という時間軸で日本企業の業績を考えると、好転の兆しを見ることができるだろう。しかし、これが直接、日本企業の中長期的な好業績を意味するわけではない。なぜなら、先ほど挙げた要因は、外部環境における追い風だったり、過去の遺産の整理にすぎないからだ。

言うまでもなく、企業活動の中には必ず競争がある。魅力的な新興国市場や、いまだに巨大な日本市場を虎視眈々(たんたん)と狙う海外企業も存在する。これらの競争相手に打ち勝つ真の競争優位を取り戻し、新たな成長分野を切り開いていかない限り、日本企業の中長期的な業績回復は望めない。

そのために日本企業が取り組むべきことは、大きく2つ挙げられる。1つ目はイノベーションを起こす努力をすることである。これは、顧客に対する価値提供のあり方を今一度見直していくことだ。国内市場は成熟化しているが、顧客への新たな提供価値を見いだした企業は元気だ。例えば、昔から存在し、超成熟市場ともいえる古本市場において、古本買い取りの仕組みを刷新し、明るい店舗できれいな古本を販売するブックオフは大きく成長を果たした。伝統的な日本食である寿司の世界では、スシローをはじめとする回転寿司チェーンは低価格と高品質を武器にいまだに成長を続けている。海外勢では、iPhoneやiPadでなじみ深いアップルや、巨大な物流網を整備しさまざまな商品をネットで提供するアマゾンが日本においても大きく成長している。新たな価値創造によって既存市場を活性化していくことが、縮小均衡を避ける唯一の方法だろう。

2つ目は、グローバル市場の開拓に真剣になることだ。これまでの日本企業は、お互いに切磋琢磨し、良い製品をつくり、海外勢に打ち勝ち、強い企業体質をつくり、成長を果たしてきた。これは日本発の一方通行の成長戦略といえる。その結果、日本製品は高品質・高機能だけれども、海外の顧客ニーズに合わない高価なものになってしまった。今後、日本企業が目指すべきグローバル化は、双方向のグローバル化である。つまり、海外進出先での現地化の推進に軸足を置いたものにすることだ。これはモノの輸出ではなく、現地における価値創造活動ともいえる。当然、現地企業との提携や、合併・買収(M&A)なども視野に入ってくることになる。

危機感とスピード感を持った再成長の模索

今、日本企業には、健全な危機感とスピード感が必要である。危機感が高まったとき、往々にして日本企業は大きく組織能力を発揮する。そして、スピード感を持って再成長を模索することは、新たな道を切り開くための原動力になるはずだ。内向きな赤字事業の整理やコスト削減だけでは、対症療法にはなっても、決して根本治療にはならない。

新たな1歩を踏み出せるか否か。そういった観点において、2013年は日本企業の今後を占う上での重要な試金石になるかもしれない。

(2013年1月14日 記)

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  • [2013.01.29]

ローランド・ベルガー取締役シニアパートナー。東京大学大学院理学系研究科相関理化学修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学経営学修士。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程修了。ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン、デル、クレイフィッシュ、スターバックス コーヒー ジャパンを経てローランド・ベルガーに参画。企業の経営戦略、営業・マーケティング戦略、新規事業戦略の立案・実行支援を行う。著書に『日本企業の収益不全 収益性向上のための最適成長速度』(白桃書房/2012年)など。

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