ソチ五輪展望 最大の注目は浅田真央VSキム・ヨナ

矢内 由美子【Profile】

[2014.01.29] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

4年に一度のウインタースポーツの祭典、ソチ冬季オリンピックが2月7日に開幕する。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから行われる最初のオリンピック。日本選手団の橋本聖子団長が掲げる目標は、1998年長野冬季オリンピックで獲得した「金メダル5、銀メダル1、銅メダル4」を超える「金メダル5個以上、メダル総数10個以上」。これが、ソチでの日本チームのターゲットとなる。

浅田真央、最後の大会で金メダルを獲得できるか

メダル量産に向けて、最も大きな期待が寄せられているのはフィギュアスケートだ。

中でも最大の注目は女子シングル。バンクーバーオリンピック銀メダルの浅田真央と、同オリンピックで金メダルを獲得したキム・ヨナ(韓国)の“対決”に強い関心が集まっている。2人はともに1990年9月生まれで、誕生日はわずか20日違い。ジュニア時代からのライバル同士である。

6種類ある3回転ジャンプの中で、最も難度の高い「トリプルアクセル」で勝負するのが浅田だ。

他のジャンプが後ろ向きで踏み切るのに対し、アクセルだけ前向きでの踏み切りになる。そのため恐怖感が強く、世界でもこのジャンプをプログラムに組み込んでいる女子は浅田しかいない。

浅田はバンクーバーでは、ショートプログラム(SP)で一度、フリーで二度、計三度トリプルアクセルを成功させているが、他のジャンプのミスなどがあり、惜しくもキムの後塵を拝した。

ソチでの目標は「最高のプログラムをパーフェクトに演技すること」(浅田)。ロシアの名コーチ、タチアナ・タラソワに師事していたこともあり、ロシアでの浅田人気は高い。トリプルアクセル3回をこなす究極のプログラムをミスなく成功させれば、おのずと頂点が見えてくるはずだ。

迎え撃つ形になるキムは、コンビネーションジャンプと滑りの美しさ、そして表現力で浅田を上回ってきた。バンクーバー後は出場する大会を絞っての活動だったが、出るたびにほぼ完璧な演技を見せてきたことは称賛に値する。

ただ、ソチオリンピックシーズンの今季は足の負傷で出遅れた。年明けの韓国選手権では世界最高点に肉薄する点をマークしたが、ジャンプでミスがあったほか、スピード感もやや物足りない印象だった。本番までにいかに調子を上げていくかがカギになるだろう。

あなどれないロシアの新星

そして、ここにきて大きく評価を上げているのがロシアの15歳、ユリア・リプニツカヤだ。1月中旬にハンガリー・ブダペストで行われた欧州選手権では、今季世界最高点をマークして初優勝を飾った。

欧州選手権を初出場で制したのは1931年のソニヤ・ヘニー(ノルウェー)以来83年ぶりだというのだから、そのインパクトは絶大。体の柔軟性を強調するキャンドルスピンは魅力満点で、地元開催という後押しもあり、浅田の強力なライバルになるのは間違いない。

一方で強調しておきたいのは、浅田とともに“チームジャパン”の一角を担っている鈴木明子と村上佳菜子の実力の高さだ。

特に鈴木は、昨年12月に行われた全日本選手権で初優勝。その際に見せた完璧な演技をソチオリンピックで再現することができれば、メダル候補であるのはもちろんのこと、金メダルも射程に入ってくる。28歳と、大人の表現力がある。

19歳の村上は浅田と同じ名古屋市の大須リンクで育ち、高校、大学とも浅田の後輩。かつて伊藤みどりをアルベールビルオリンピック銀メダルに導いた山田満知子コーチの指導を受けており、今後もますます伸びていくことが期待される。

男子・羽生への期待ふくらむ

日本勢が熱い戦いの主役となるのは女子シングルだけではない。女子との“アベック金メダル”を目指す男子シングルでは、台頭著しい19歳の羽生結弦に大きな期待がかかる。

宮城県仙台市出身。2011年3月11日の東日本大震災のときは、仙台市内のスケートリンクで練習しており、突然の激しい揺れにその場でうずくまり、余震の中を這いつくばりながら、命からがら建物の外に出たという。

ソチのフリーで披露するのは、震災後のシーズンにも使用していた「ロミオとジュリエット」の曲(今シーズンの音源はニーノ・ロータ作)を使ったプログラム。思い入れのある構成で、2種類の4回転ジャンプに挑む。

子供の頃のあこがれは、ソチで四度目のオリンピック出場となるエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)。ソチでは“打倒プルシェンコ”を目指すのはもちろんのこと、世界選手権3連覇中のパトリック・チャン(カナダ)に打ち勝って金メダルを獲得するのが目標だ。

また、バンクーバーオリンピックで日本男子初の銅メダルに輝いた高橋大輔、独特の表現力が魅力の町田樹もメダル射程圏にいる。

女子ジャンプ・17歳高梨のメダルは確実

日本勢で「金メダルに最も近い」と言われているのが、ソチオリンピックから採用された新種目・女子ジャンプの高梨沙羅だ。

北海道旭川市のインターナショナルハイスクールに在学中の17歳は、今シーズン、自然条件に大きく左右されるこの競技としては驚異的な勝率をマーク。ワールドカップ優勝回数17回は男女を通じて日本人最多となっている。

最大のライバルである昨年の世界選手権女王、サラ・ヘンドリクソン(米国)は昨年8月に右膝前十字じん帯を損傷し、ソチオリンピック出場が危ぶまれたが、懸命なリハビリの結果、このほど米国代表入りが決定。ソチのジャンプ台で激しい戦いが繰り広げられることになるだろう。

日本のお家芸と言われているスピードスケート男子五百メートルでは、長島圭一郎、加藤条治の“ダブルエース”が頂点を目指す。バンクーバーオリンピックでは長島が銀メダル、加藤は銅メダル。当然、今回は金メダルしか見ていない。

このほか、日本選手団最年長41歳の葛西紀明を擁する男子ジャンプ勢、女子モーグルで五度目のオリンピック出場となる上村愛子、スノーボード界に旋風を巻き起こしている男子ハーフパイプの15歳・平野歩夢らにもメダルの期待がかかる。

バナー写真提供=日刊スポーツ/アフロ

(2014年1月28日 記)

この記事につけられたタグ:
  • [2014.01.29]

スポーツライター。1966年6月23日、北海道生まれ。北海道大学卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、テニス、五輪、サッカーなどを担当。2006年に退社、以後フリーランス。著作は『Jリーグ15年の物語 カズ&ゴンたちの時代』(講談社/2009)、『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書/2011)など。

関連記事
その他のコラム

ピックアップ動画

最新の特集

バナーエリア2
  • nippon.comコラム
  • in the news
  • シンポジウム報告