ゲーム業界でインディーズに成長の兆し

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独立系クリエイターによるインディーズのゲームソフトが、北米や欧州の市場でちょっとしたブームになっている。大手ゲーム会社の存在が圧倒的だった日本でも、これまで日陰の存在だったインディーズが注目を集める兆しが見えてきた。

ソニー、マイクロソフトが連携強化に動く

インディーズゲームの復興に一役買っているのが、新たに登場したさまざまなプラットフォーム。デジタル配信ではプレイステーション・ネットワークやスティーム、Xboxライブ、モバイルゲームではiOSやアンドロイドが浸透。加えて、多くの人からネットで幅広く開発資金を集めるクラウドファンディングも台頭している。欧米のクリエイターらは以前に比べ、より簡単に自社で開発したゲームを消費者にアピールようになった。

日本ではゲームソフトを購入する際、まだまだ店頭での「パッケージ版」が幅を利かしている。クラウドファンディングもまだ本格的に普及していない。しかし、デジタル配信は拡大しつつあり、ソニーやマイクロソフトはクリエイターとの関係強化に動きつつある。ソニー・コンピュータエンタテインメントの多田浩二 氏は「より簡単にゲーム開発ができる状況を迎える中、独立系クリエイターとの連携はきわめて重要。ソニーは世界中の新しいインディーズ・シーンをサポートしたい」と話す。

中小クリエイター活躍の余地

独立系クリエイターにとって、ソフト開発資金の調達は悩みのタネ。だが、それは大手のゲーム会社も事情は同じで、目玉作品の開発・販売にかかるコストはこの10年で確実に増加し、最新の家庭用ゲーム機ソフトは6,000~7,000円といった価格まで上昇した。その結果、一部の制作会社は企画が失敗に終わった場合の損失を恐れ、独創的なアイデアで勝負を賭けようとしなくなっている。

日本のインディーズゲーム発展に心を砕くジェームズ・ミエルケ氏(写真提供 Jeriaska)

ヒット作品の続編ばかりが増え、独創性は失われていく。インディーズゲームに詳しいキュー・ゲームス(本社・京都)の元プロデューサー、ジェームズ・“ミルキー”・ミエルケ氏は「高橋慶太(小さな王子がスティックを使って塊を動かし、モノを巻き込んで塊を大きくしていき、宇宙を再構築していく『塊魂』の責任者)や斉藤由多加(『シーマン~禁断のペット~』作者)のようなクリエイターがいて、斬新なゲームが日本の大手から出たことは幸運としかいいようがない。だが目標に一直線に進んでいこうと思ったら、独立系クリエイターになって自分でやるのが一番なのだが」と語る。

ゲームファンは既存の作品とは一線を画した、できれば値段も安いゲームを探している。携帯向けでもゲーム機向けでも、クリエイターが年齢層や株主に気兼ねすることなく自由に作ったインディーズゲームは、ますます彼らの注目を集めている。

立ちはだかる言語の壁

ミエルケ氏は2013年、日本の独立系クリエイターとゲーム業界を取り巻く各メディア、ソニーやマイクロソフト、キックスターターなどの大手企業を一堂に集めたインディーズゲームの祭典BitSummit(ビットサミット)を京都で開催。過去2回とも大きな成功を収めた。

BitSummit2014のPRポスター

「日本でこの種のイベントが開催されるとは考えていなかった。やっと自分のゲームを見せる新しい場所ができた」。3月にあったBitSummit 2014の会場で、Onion Gamesの木村祥朗社長は語った。

BitSummitは作品を見せる場を提供しただけではない。クリエイター同士が互いに関係を結び、情報やアイデアを交換する場にもなった。

とはいえ、日本でインディーズ市場が育ったとしても、クリエーターとそれを取り巻く世界の間には英語の壁が立ちはだかる。かつて大手ゲーム会社で勤務し、2012年に独立してディスコピクセル社を設立した米国のゲーム開発者、トレバー・ストリッカー氏は「言葉の壁は非常に大きい。日本の人たちが海外に出ていこうとすると、常にそれが問題になる」と語る。

「だけど、それでもやっぱり日本は『テレビゲームの母船』みたいな存在。例えば、日本の独立系クリエイターがPAX(米ボストンで開催される大規模ゲームイベント、ペニーアーケード・エキスポ)の巨大なインディー・ブースにやってきたとしよう。そこで日本人であることは、すごく特別な意味を持つ。日本とつながりがあることは、とても好意的に受け止められる」。

(原文英語、2014年3月24日執筆)

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