期待過剰で増え続ける中国語不動産投資サイト

信太 謙三【Profile】

[2014.05.26] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 |

東京ベイエリアの高級タワーマンションが中国人の金持たちに次々と買われているといった情報が飛び交い、ネット上には中国語の不動産投資サイトが次から次に登場している。日本の不動産市況回復を見越して中国からの投資を呼び込もうという狙いがありそうだが、実態はというと、動いているのは対日感情が比較的良好な台湾や対外投資に慣れたシンガポールの華人たちだけで、大陸からの投資は伸び悩んでいる。日本の不動産が中国マネーで買い占められるというのは今のところ杞憂でしかない。

不動産紹介の中国語サイト制作専門会社も登場

中国語のネット上には今、日本の不動産物件を紹介するサイトがあふれている。そのひとつが社団法人・日本温州総商会(東京台東区)が運営しているサイト「日本捜房」。温州は中国・浙江省の東南沿海に位置する地方都市で、民間企業が多く、同地の資金が中国の不動産価格を吊り上げているといった批判もあり、サイトの設立には「不動産投資に対する中国政府の規制強化によって行き場を失った“温州マネー”を日本に引き入れる狙いもあった」という。

対日不動産投資サイト

同サイトには日本の不動産物件の写真が多数、掲載され、住所や価格、築年数などの説明があるのも日本と同じ。物件の多くは東京や神奈川のビルやマンションで、那須高原の別荘や東京港区高輪の土地も紹介されていた。また、「販売済み」の物件も掲載されていたが、これは東京新宿区四谷にある築20年の多目的ビルで、価格は13億円となっていた。

中国語の対日不動産投資サイトは「日本捜房」以外にも、台北に本部を置き、上海と香港に事務所を構える「日本房産網」や東京江東区青海に本社を置くインターネットビジネス会社ジェーシーヒア株式会社が運営する「JC here」などもあり、中国のネットに入っていくと、次々にでてくる。また、東京港区赤坂には何と、中国人向けの、中国語による不動産ホームページを制作する会社もできており、この会社は中国のネット検索大手「百度(バイドゥ)」へのサイト登録サービスも行っているという。

大陸からの投資は反日感情、地震で伸びず

かげりが見え始めたとはいえ、7%超えの成長を続ける中国のカネに対する日本の不動産業界の期待の大きさを示す例として、冒頭の「東京ベイエリアの高級タワーマンションが中国人の金持たちに次々と買われている」といった噂が流れるわけだが、これは事実とはいえない。

「台湾のお客さまでマンションを購入された方はおりますが、大陸の方はまだおりません」

こう語るのは東京港区芝浦で高級タワーマンションの分譲販売を進める企業のスタッフ。「日本のマンションを買っている中国(大陸)の人はやはり、日本に住んでいるとか、また、日本と関係がある方に限られており、投資で日本の不動産を購入するという方は少ないのではないでしょうか」と語る。こうした意見は取材した日本の不動産会社に共通するもので、「中国からの投資は欲しいが、思うように来てくれない」というのが実情のようだ。

“中国マネー”は欧米と豪州に集中

しかし、中国の対外不動産投資はここ数年、急増しており、シカゴに本社を置く大手不動産会社「ジョーンズ・ラング・ラサール」(中国名・仲量聯行)によると、中国の海外商業不動産投資は2013年、76億米ドルと前年比で124%も増えており、今年は100億米ドルに達する見通しという。しかし、そのカネの行き先は欧米やオーストラリアが中心で、日本にはあまり来ていない。(※1)これが実情だ。

中国語の対日不動産投資サイト「日本捜房」の責任者、大平修一さんはこれについて「反日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日中間の緊張関係、そして、地震でしょう。(中国国内の)景気が以前に比べてよくないということもありますね」と解説してくれた。

「日本の不動産が“中国マネー”に買い占められる」と大騒ぎする前に、日本はまず、一刻も早く経済を立て直し、中国から買われるような魅力的な国になることが必要だ。

(※1)^ ジョーンズ・ラング・ラサール社のニュースリリース(中国語)より

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  • [2014.05.26]

ジャーナリスト(中国問題専門家)、元東洋大学社会学部教授、公益財団法人新聞通信調査会評議員、ニッポンドットコム理事。1948年静岡県生まれ。73年早稲田大学第一文学部卒業、時事通信社入社。香港特派員、北京特派員、北京支局長、解説委員、上海支局長などを歴任。優れた中国報道によって96年度ボーン・上田国際記者賞を受賞。著書に『巨竜のかたち 甦る大中華の遺伝子』(時事通信社)、『中国ビジネス 光と闇』(平凡社)などがある。

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