人口減少社会で注目される「札仙広福」の将来像

人羅 格【Profile】

[2014.07.16] 他の言語で読む : ENGLISH | ESPAÑOL |

地方の人口減少問題が安倍内閣でも重視される中、3大都市圏以外にある拠点都市の構想が注目されている。とりわけ札幌、仙台、広島、福岡4政令市など人口100万超のブロック拠点都市をどう位置づけていくかはこれからの国家像にも影響し得るテーマだ。

「消滅自治体リスト」機に地方創生へ軌道修正

2014年5月2日、仙台空港の運営権を民間企業に与える「コンセッション」の説明会が国土交通省で開かれ、約150社が参加した。同方式は空港施設の所有権を国などに残したまま運営権を期限つきで民間に任せるもので、活性化に期待する宮城県は「運営委託30年後に年間乗降客数600万人、貨物取扱量5万トン」との目標を掲げる。東日本大震災からの創造的復興を目指し、村井嘉浩知事が提唱するプロジェクトだ。

折しも、東京を中心とする3大都市圏重視が際立っていた安倍内閣の軸足が少しずつ変化している。安倍晋三首相は地方の人口減少抑制と地方再生の司令塔として内閣官房に地方創生本部を近く設置する方針だ。

その伏線となったのが、民間研究機関「日本創成会議」の分科会(座長・増田寛也元総務相)による「消滅自治体リスト」の公表だった。増田氏らは地方から大都市への人口移動には現状では歯止めがかからないとみて、自治体の将来人口を決定づける若年女性人口を推計し直した。その結果、調査対象約1800市区町村のうち若年女性が2040年までに半数以上減ってしまう「消滅可能性都市」は896と約半数にのぼった。

出生率が低い東京がブラックホールのように地方から人材を吸収し、地方の空洞化と日本全体の人口減少が相乗的に加速する現象を増田氏は「極点社会」と命名した。試算が地方に与えた衝撃は大きく、多くの自治体が地域崩壊を直視せざるを得なくなっている。

中核都市への「選択と集中」を検討

安倍政権が地方活性化に乗り出したのは、一義的には来春の統一地方選対策の色合いが濃い。だが、国家戦略特区構想に象徴される大都市圏重視が「東京集中」を加速させかねないとの懸念は政府内にもあった。「消滅リスト」を渡りに舟として、軌道修正に乗り出したのが実態だろう。

人口減少社会下の地方ビジョンを考えるうえで無視できない要素に「選択と集中」の是非と評価がある。総務省は3大都市圏以外の人口20万人以上の都市を「地方中枢拠点都市」として周辺市町との連携で医療などの機能を集約する構想を描く。盛岡、姫路、倉敷など9市でモデル事業が始動する予定だ。

一方、国土交通省は拠点への機能集中によるコンパクト化と、複数の都市を高速道路などで結ぶ30万人規模の「高次地方都市連合」で60~70カ所の都市圏を維持する構想を打ち出した。各府省が独自に描く拠点化構想をどう整理していくかが問われる。

東北、九州などで中枢的機能を担うブロック拠点都市の位置づけもポイントになる。札幌、仙台、広島、福岡4政令市は3大都市圏以外の中枢都市として「札仙広福」というネーミングがすでに1970年代後半に確立していた。

問われる「支店経済」からの脱却

東京集中が加速する中で4市は人口水準を維持、あるいは増やして存在感を保ってきた。4市がある北海道、宮城県、広島県、福岡県4道県の総生産は日本全体の約1割、人口で12%を占める。北大、東北大、広島大、九州大と学術拠点を擁する利点に加え、4市ともプロ野球球団やプロサッカーチームのフランチャイズが置かれるなど独自の発信力も共通点だ。「東京集中を食い止める防波堤と位置づける」発想は政府内にもある。

一方で「札仙広福」重視は東北、九州などで域内格差を広げ、他地方の切り捨てや将来的に都道府県を再編する道州制に連動するのではないか、との警戒も他県には根強い。現に北海道は札幌市への一極集中が加速している。人口、経済力に差がある「札仙広福」を同列に論じるのはもはや非現実的、との指摘もある。

「選択と集中」論議が進む警戒も地方側にはある。町村などの小規模自治体は人口減少論議が行政効率化や市町村合併への圧力を強めかねないとして「消滅リスト」についても批判的反応が多い。

それだけに「札仙広福」という選択肢が説得力を持つためには、国からの一定の機能分散、あるいは「支店経済」から脱してグローバル企業の拠点となるような変化が必要となる。こうした脱皮には国側の意思が欠かせない。

「札仙広福」側は他県との役割分担も含め、広域ブロック全体の発展をけん引するビジョンを描く必要がある。観光、農水業に恵まれた北海道の拠点である札幌市、東北の復興拠点の仙台市、瀬戸内経済圏の中枢である広島市、アジアに近い九州の玄関、福岡市と4都それぞれの潜在力をどう生かせるかがポイントになる。

地方創生本部が今後、どのような構えで「拠点」構想を検討していくかはまだ流動的だ。それだけに4道県知事と各政令市長の連携、発信・構想力が従来以上に問われることになるだろう。

タイトル写真=プロ野球チーム・楽天の根拠地で観光PRを行った村井嘉浩宮城県知事(写真提供=時事)

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  • [2014.07.16]

毎日新聞論説委員。北海道札幌市生まれ。85年毎日新聞入社。89年から政治取材に携わり官邸キャップ、政治部デスクなどを経て現職。

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