中国と韓国の不可思議な連帯

小倉 和夫【Profile】

[2014.07.16] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 |

最近行われた中国首脳の韓国訪問は、表面的には、次のような中国の外交戦略に基づいているように見える。

韓国訪問に透けて見えた中韓、両国の思惑

中国はアジアにおいて、その経済力を誇示し、アジアの国々の、中国に対する経済的依存度を高める(あるいは、高い水準に維持する)ことを狙っている。首脳の訪韓に、多くの中国人ビジネスマンが同行したことは、こうした中国の戦略を暗示している。それだけではない。経済的影響力を増大することによって、アジアの周辺諸国が中国の政治的立場に理解を示し、アジアにおける中国の立場を強化することにつなげようとしている。今回、中国首脳が、ことさらに日本と朝鮮との対立の歴史に公に言及し、韓国における日本の政治的立場を一層弱めるような言動を取ったことからもうかがえるところである。

同時に、中国は、韓国重視の外交姿勢を示すことにより、北朝鮮を牽制し、あわせて米韓同盟を牽制し、米国、日本、韓国という三国間の軍事的、戦略的関係にくさびを打ち込もうとしたと考えられる。

他方、韓国としては、今や最大の貿易パートナーとなった中国との関係を安定させることによって、日本を始めとする貿易上のライバルに対抗することを狙ったと見られる。また、中国首脳の韓国訪問は、北朝鮮への政治的圧力ともなり、北朝鮮の核武装に対する中国の反対を確実なものにするねらいがあったことは、発表された声明からも明らかである。

中国首脳の不用意で、不可思議な歴史認識

しかしながら、中国首脳の韓国滞在中の発言、特に、日本に関連する発言は、中国の戦略が、実は、かなり不可思議な基礎の上に成り立っていることをはからずも暴露した。特に問題の発言は、中国と韓国は、400年前から日本の侵略に共同で、肩を並べて対抗した、というものだ。明らかに、豊臣秀吉の朝鮮侵略にあたって、李朝朝鮮と明が共同で戦ったことに言及したものにほかならない。

一見、朝鮮民族の長い間の対日嫌悪感を呼び起こす、巧妙な発言のように響く。しかし、一国の最高政治指導者の発言としては、極めて不用意であり、不可思議な歴史認識を露呈したものと言わざるを得ない。

朝鮮と中国は、秀吉の朝鮮侵略のちょうど300年ほど前、共同で日本を侵略し、日本人を多数殺傷し、また日本人を拉致して行ったのである、その歴史を、中国と韓国がどのように認識しているかという点を全く横において、400年前の歴史に中国の政治指導者が公に言及することは不可解である。

しかも、秀吉から約50年後、中国(清)は、朝鮮を侵略し、その際朝鮮の王がひざまずいて中国に服従を誓っている場面は、石碑となってソウルの町に残っている。このことはどのように解釈されているのであろうか。

中国と韓国の歴史認識には大きな問題がある。それにもかかわらず両国が「不可能な」認識に固執する理由は何であろうか。それは、中国共産党の統治の正当性が、いまだに大きく抗日戦争にその根拠を置いているからではあるまいか。そして、韓国も、その点では中国共産党に似て、ややもすると日本への抵抗が政権の正当性を強化するという、不可思議な連帯が中韓に存在すると言えようか。

タイトル写真=2014年7月3日に行われた中韓首脳会談(写真提供=Yonhap/アフロ)

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  • [2014.07.16]

青山学院大学特別招聘教授。東京2020オリンピック・パラオリンピック招致委員会評議会事務総長。1938年生まれ。東京大学法学部、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。1962年外務省入省。文化交流部長、経済局長、外務審議官、駐ベトナム大使、駐韓国大使、駐フランス大使などを歴任。2003年10月から 2011年9月まで独立行政法人国際交流基金理事長を務める。著書に『グローバリズムへの叛逆』(中央公論新社/2004年)など。

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