アギーレジャパン、前途に険しい道—アジア杯でベスト8敗退

矢内 由美子【Profile】

[2015.01.26]

オーストラリアを舞台に行われているサッカーのアジア杯。前回王者の日本は1996年アラブ首長国連邦(UAE)大会以来5大会ぶりにベスト8で姿を消し、貴重なコンフェデレーションズ杯の出場権を逃した。

番狂わせ、PK失敗で万事休す

1月23日にシドニーで行われた準々決勝UAE戦。1-1のまま延長戦でも決着がつかずにPK戦に持ち込まれると、日本は1番手で蹴ったFW本田圭佑(ミラン)と6番手のMF香川真司(ドルトムント)の2人が失敗し、まさかの敗退を喫した。オーストラリアの地元紙が「本田と香川のスーパースターコンビがPKを外した。大会史上もっとも衝撃的な敗退劇の一つ」(ジ・オーストラリアン紙)、「現時点での最大の衝撃」(シドニー・モーニングヘラルド紙)と報じる大番狂わせだった。

グループリーグ3試合無失点勝利という盤石の戦いぶりを踏まえれば、誰も想像できなかった結果。グループリーグを3戦全勝で勝ち抜いたのは、UAE大会以来19年ぶり2度目だったというのだから皮肉なものだ。アジア杯のベスト8敗退は、1998年にフランスW杯初出場を果たしてからもっとも低い成績。どうしてこういう結果に終わったのか。この結果は今後にどういう意味を持ってくるのか。

アギーレ監督“八百長”告発で揺れた大会前

大会前、日本チームの外周は揺れに揺れた。ブラジルW杯終了後に就任したハビエル・アギーレ監督が、スペインのクラブで指揮を執っていた2011年5月の試合で八百長に関与したとの疑いをかけられ、スペイン検察当局に告発された。折しも、昨年12月14日にアジア杯出場メンバー23人を発表してから数時間後の出来事。日本サッカー協会(JFA)は噴出する解任論を封じ込め、アギーレ体制でアジア杯連覇に挑むことを決めた。

ざわついた状況の中で始まった代表合宿ではあったが、必勝を期して選び抜かれた経験豊富な選手たちに、目に見える動揺はなかった。DF内田篤人(シャルケ)が負傷のために出場を辞退するというアクシデントはあったが、本田や香川、DF長友佑都(インテル)、FW岡崎慎司(マインツ)ら欧州主要リーグでプレーする主力が勢揃い。

MF遠藤保仁(ガンバ大阪)をはじめとする国内組も、JFAが例年元日に行っていた天皇杯決勝を2週間前倒しする日程を組んでいたため休養十分で、年末から始まった千葉県内での合宿、年明けのオーストラリア合宿をチーム全体で順調にこなしていった。

1月12日のグループリーグ初戦のパレスチナ戦前日に開かれた公式会見では、各国メディアから八百長疑惑についての質問が相次ぐ中、アギーレ監督が「ここではサッカーの話しかしない」と突っぱねたことで、会見場が異様なムードに包まれたが、同席したキャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)が、「その影響はまったくないと断言できる」と即答。「このチームの良さは、互いを信頼し合う力があること。選手、監督、スタッフが同じ目標に向かって一つにまとまっている」と言い切り、結束をアピールした。

アジア杯準々決勝の対UAE戦。0-1とリードされた後半に同点ゴールを決めた日本代表のMF柴崎岳(中央、鹿島)=2015年1月23日、オーストラリア・シドニー (時事)

グループリーグでは見事なまとまり

長谷部の言葉通り、大会が始まると、アギーレジャパンは見事なまとまりを見せていく。指揮官は4-3-3システムを採用。パレスチナ戦ではGK川島永嗣(スタンダール・リエージュ)の前に右からDF酒井高徳(シュツットガルト)、DF吉田麻也(サウサンプトン)、DF森重真人(F東京)、長友の4人が並び、アンカーに長谷部、その前のインサイドハーフに遠藤と香川。3トップの真ん中が岡崎、右ウイングに本田、左にFW乾貴士(フランクフルト)が入った。

日本は前半8分、遠藤のミドルシュートで先制すると、同25分に岡崎が追加点。前半44分には本田がPKを決めて3-0と突き放した。後半4分にも吉田がヘディングで叩き込み、4-0の完封勝利。試合を通じて強風が吹き荒れる悪コンディションながら、風下に立った前半も含めて危なげない試合運びで、相手に決定機を与える場面は一度もなかった。 

グループリーグ第2戦で当たったイラクは、先発メンバーの多くが13年のU-20W杯トルコ大会で4位に入り、昨年1月のU-22アジア選手権で優勝した若い選手たちだ。リオデジャネイロ五輪世代の強豪である彼らは「黄金世代」と呼ばれており、勢いをつけさせると後々やっかいな存在になりかねない。

だが、初戦と同じ11人が先発した日本はイラクを問題としなかった。前半23分、本田の2戦連続となるPKで先制すると、その後は多くのチャンスを生かせずに追加点を奪えなかったものの、守備陣が奮闘。接触のたびに主審が笛を吹いたことで、ゴール前でたびたびセットプレーのピンチを迎えながらも、吉田や森重が集中力を切らすことなく守り抜き、2試合連続無失点。1-0というスコア以上の内容で2連勝を飾った。

第2戦で決勝T進出決まらず、先発の疲労が蓄積?

ところがアギーレジャパンがここで不運だったのは、2戦を終えてグループで唯一2連勝しながら、決勝トーナメント進出が決まらなかったことだ。しかも、続く第3戦の相手は、優勝した前回のアジア杯ではグループリーグ初戦で1-1の引き分けに終わり、13年3月のブラジルW杯アジア予選では敵地アンマンで1-2の敗戦を喫しているヨルダン。ブラジルW杯予選でプレーオフ進出も果たしているチームとあって、アギーレ監督はこの試合でも先発をいじらなかった。

結果としては本田の3試合連続得点と香川の今大会初ゴールで2-0の勝利を飾ったが、先発メンバーの固定による疲労の蓄積という不安要素はこのときから膨らみ始めていた。果たして日本は、中2日で臨んだUAEとの準々決勝で立ち上がり7分にカウンターから大会初失点を喫すると、最後までそれが重くのしかかり、PK戦での敗退につながった。

ベスト8敗退の要因には、もちろん不運もある。しかし、グループリーグ最終戦と準々決勝の間隔が相手より1日少ないことがあらかじめ分かっていたにもかかわらず、4試合連続同じメンバーを先発させたことは正解だったのだろうか。UAE戦での試合の入り方の失敗につながっているのではないか。

先発、交代起用メンバーの顔触れが固定

加えて、アギーレ監督は年末の合宿からすべて先発とサブを完全に分けており、選手によれば「誰が試合に出るのかがハッキリ分かる」。これではモチベ―ションを保つのが難しくなる選手が出ても不思議ではない。

また、交代で起用される選手も顔ぶれが固定されており、4試合でピッチに立ったのは先発の11人とサブの5人。7人の選手は貴重な経験を積むことなく大会を終えた。こういった流れが、サブ組が次から次へと日替わりヒーローになっていった前回大会とは違っている部分だ。

シュート数35本対3本という猛攻を見せながら勝てなかったUAE戦に象徴される、決定力不足という課題はもちろん深刻だ。だからこそ、「この問題を何とかするための魔法のレシピはない」(JFA霜田正浩技術委員長)というのなら、何とかできる別の要素で補っていこうという方策は間違いではない。そのためのボールポゼッションであり、チャンスメークの質向上であり、隙のない守備であり、隙のないチームマネジメント、ゲームマネジメントなのである。

痛いコンフェデ杯の出場権喪失

とはいえ、厳然たる事実として突き付けられたのは、アジア杯連覇に失敗したことで、2017年のコンフェデレーションズ杯の出場権を逃してしまったということだ。世界の強豪と公式戦で戦う貴重な機会を失ったことで、今後はコンフェデに代わる強化の場を自ら作りだしていく必要がある。過去2度にわたって招待を辞退してきた南米選手権に今ひとたび招待してもらうというのも一策だろう。

一方で、アギーレ監督の八百長問題が今後どうなっていくかは現時点では不透明のまま。続投するにせよ監督交代となるにせよ、6大会連続出場となる2018年ロシアW杯を目指す日本の目の前には、いくつもの難関がそびえる険しい道が広がっていそうだ。

タイトル写真:PK戦でUAEに敗れ、ぼうぜんとする本田圭佑(右から2人目、ACミラン)ら日本代表イレブン=2015年1月23日、オーストラリア・シドニー(時事)

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  • [2015.01.26]

スポーツライター。1966年6月23日、北海道生まれ。北海道大学卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、テニス、五輪、サッカーなどを担当。2006年に退社、以後フリーランス。著作は『Jリーグ15年の物語 カズ&ゴンたちの時代』(講談社/2009)、『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書/2011)など。

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