60周年を迎えたバンドン会議で人気高めたインドネシア大統領演説

リチャード・スシロ【Profile】

[2015.05.29] 他の言語で読む : ENGLISH | العربية |

アジア・アフリカ会議(バンドン会議)開催から60周年を迎えた2015年4月、インドネシアのジャカルタで首脳会議が開催された。「南南協力」の強化を掲げる“バンドン・メッセージ”の採択など2015年バンドン会議の成果はさまざまなウェブ上ですでに伝えられているが、私は興味深い話題に焦点を当てたい。

ウィドド大統領が安倍首相と習主席の調整役に

まず始めに、安倍晋三首相と中国の習近平主席とがインドネシアのジョコ・ウィドド大統領の両脇を囲むような場面がしばしば目撃されたことである。会議が開幕した4月22日、ウィドド大統領を中心に3人がしばしば一緒に歩いたり、着座したりしていた。

ウィドド大統領は22日の朝、安倍首相との会談に臨んだあと、次は振り返るように、習主席との会談に臨む光景が見られた。夕方に開かれた芸術イベントでは、ウィドド大統領夫人のイリアナさんが、日中両首脳に交互に気を使う役割を演じた。

ウィドド大統領は安倍首相と習主席との間の緊張感を感じ取り、スマイルと打ち解けた会話でなんとか緊張感を払しょくしようと努めた。大統領は「私の身体をふたつに分けてこのふたりの偉大なリーダーと同時に歓談できるなら、みんなハッピーになるのに」と自問しているようであった。緊張感は残っていたものの、大統領は平和と友好ムードをかもし出すため相当の努力をしたことだ。

安倍首相はスケジュールの都合で翌日帰国を余儀なくされたが、習主席は1955年に開催された第1回バンドン会議を記念して24日に行われた散策に、ウィドド大統領ら各国リーダーとともに参加した。

国際機関に対する批判

2つ目の関心事は、ウィドド大統領が開幕演説で、国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)およびアジア開発銀行を厳しく批判したことである。

ウィドド大統領は演説で、主要国の利益のためにしか動けない国連の改革を訴え、インドネシアが先進国と途上国との間のバランスを取ることに助力できると示唆した。

演説の内容は以下の通りである。

富裕国のグループが武力行使によって世界を変えることができるとき、明らかに世界的な不均衡が、とりわけ国連が無力の場合、悲惨さをもたらすでしょう。

わたしたちが見てきたように国連の明確なマンデートがない中の一方的な武力行使は、わたしたち共通の国際機関である国連の重要性を弱めてしまう。従って、われわれアジア・アフリカ諸国は、わたしたちすべてにとっての正義を優先する世界機関として国連がよりよく機能することを求めます。

わたしたちはまた、確立された諸国のグループが世界が変化したことを認識したがらないときに、世界的な不正義があると感じています。世界的な経済問題は、世銀、IMF、アジア開銀によってだけ解決できるという考え方は時代遅れです。

わたしは、世界経済をこれら3つの国際金融機関だけで管理することはできないという意見です。わたしたちは新興経済諸国にオープンな新しい経済秩序をつくり上げなくてはなりません。

わたしたちは、あるひとつの国のグループが他国を支配することを排除するために、世界的な金融構造の改革を求めます。

世界は、公正で責任あるかたちで行使する、集団的なグローバル・リーダーシップが必要なのです。インドネシアは新興経済国家、世界で最大のモスレム国家、また世界第3位の民主国家として、積極的な勢力としての世界的役割を果たす用意があります。

ウィドド大統領の演説は多くの人を驚かせるとともに、世界中そしてインドネシア国内から賞賛を得て、大統領の人気をさらに高めた。大統領の言葉を軽くとらえることはできない。それは、成長率6.5%、20年後には世界で有数の経済国家になる可能性のある人口2億5000万人の国家の声を代表しているからだ。

小さな国家の役割

上記の2つのことは、比較的小さな国々が世界平和や経済正義を維持する上で役割を果たす必要性があることと関連する。当然、これを実現するには大きな改革、特にいくつかの世界機関の改革が必要となるだろう。

大統領に就任した際、ウィドド氏に対して国際舞台での能力に疑問を呈する向きもあったが、バンドン会議でのパフォーマンスで、大統領は今後語り継がれる世界のリーダーへと変容を遂げたといえる。

(2015年5月7日記。原文インドネシア語から英語へ翻訳し、英語から日本語へ翻訳。バナー写真=バンドン会議の夕食会にて。筆者提供。)

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  • [2015.05.29]

ジャーナリスト、実業家。1961年インドネシア・ジャカルタ生まれ。90年ニューポート大よりMBA取得。76年以降、Business Indonesia、Kompas紙を含むインドネシアの主要紙向けに政治、経済問題を記者としてカバー。現在、月刊誌Japan Indonesia Economic Forumの編集長。対インドネシア投資を検討する日本企業に対するコンサルも行う。東京に20年滞在。著書は「インドネシア人外交官の眼から見た日本」など。

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