米日カウンシルの役割:日米関係強化に向けた多様性とリーダーシップ

スザンヌ・バサラ【Profile】

[2015.09.07] 他の言語で読む : ENGLISH |

人と人とのつながり:東日本大震災の教訓

今回、米日カウンシルでの私の職務について執筆依頼を受けたとき、自分がなぜ人と人とのつながりを大切にしているのか、改めて考えさせられた。日米同盟の管理に関わる仕事を始めた当初、私は、人と人との結びつきが、安全保障や通商政策、グローバルな関与の基盤になっていることを十分理解していなかった。だが、東日本大震災がこれを変えた。

当時、私はジョン・ルース駐日米国大使の上級顧問を務めていた。大使は就任当初から、メディアで取り上げられていた両国の政策論争を心配していないと明言していた。両国の指導者が共通の利益のために協力すると信じていたからだ。むしろ大使が懸念していたのは、人と人とのつながりが弱まっていること、特に学生間の消極的な傾向だった。

2011年3月11日の大震災はそれを改めて思い起こさせた。米国は被災地に対して、米軍による「トモダチ作戦」を開始、迅速かつ継続的で効果的な救援活動を大規模に展開した。軍人の多くは自分の隣人が助けを求めているように感じていた。さらに150人以上の政府関係者が米国大使館に支援に駆けつけた。多くが日本在住か、訪日経験のある人々だった。研究者や企業、コミュニティや非営利団体も昔のつながりを通じて支援に乗り出した。

何十年にも及ぶ人と人との結びつきがこうした支援につながったことは言うまでもない。震災は、そうした絆を育てることの重要性を強く印象づけた。次世代のリーダーを通して基盤を強固にしなければ、この特別な関係は将来の世代へと引き継がれない。「3.11」の悲劇から生まれた善意と新たな関心は、改めて絆を強める機会となった。

そうした経緯から私は、日系アメリカ人が主導し、グローバルな視点から日米関係の強化に専念する米日カウンシルに関心をもった。米日カウンシルは、人脈づくりや指導力育成のための革新的なプログラムを通して人的交流を促進することにより、意欲的で積極的な活動を促す役割を果たす一方、活気あるダイナミックな日米関係に取り組む次世代のリーダーを育成していた。これこそ日米関係が必要としているものである。

米日カウンシルの原点

日本を訪れた「在米日系人リーダー招へいプログラム」参加者

米日カウンシルの設立は、日本の外務省が2000年に始めた「在米日系人リーダー招へいプログラム(Japanese American Leadership Delegation Program)」に遡る。これは日系アメリカ人を毎年日本に招き、各界のリーダーや有識者との交流を深めようというプログラムで、これまでに176人が参加した。母国とのつながりに触れて刺激を受け、大きな影響を受けた参加者も多い。年を経るにつれ、多くが帰国後、訪日で得たつながりを通して日米関係に貢献したいと思うようになった。

一方、故ダニエル・イノウエ上院議員などのアメリカ人リーダーは、“ジャパン・パッシング”を懸念するようになっていた。イノウエ議員は他の日系人と協力し、さまざまな背景をもつ日系人が日米関係の強化に寄与できるような新たな場として、米日カウンシルを創設した。外務省の投資は、日米両国の支援に専念する新たな組織として実を結んだのである。

「3.11」と米日カウンシル:震災救援から「TOMODACHIイニシアチブ」まで

「トモダチ作戦」の軍人と会う東北出身のTOMODACHIプログラム参加者。

東日本大震災を受けて、米日カウンシルのメンバーは日本への支援に動いた。米日カウンシルは260万ドル以上の募金を集め、東北地方で活動する日本の非営利団体に資金を提供したほか、多くのメンバーがボランティアとして被災地に赴いた。米日カウンシルが東北地方の復興に同じ思いで取り組んでいることを知った米国大使館は、米日カウンシルと革新的な官民パートナーシップを構築した。のちに「TOMODACHIイニシアチブ」となる活動である。

このイニシアチブは、官民の力を活かして若い世代に投資する活動であり、政府職員や非営利団体、教育機関、篤志家などと連携し、毎年多くのプログラムを運営している。最も望ましい人と人のつながりを足場とするこれらの異文化リーダーシップ体験を通じて、TOMODACHIは、将来に向けた日米関係の強力な基盤となるTOMODACHI世代を育成している。

現在の米日カウンシル

「ウーマノミクス」に関するパネル・ディスカッション

これらの例は、米日カウンシルが行動面で、そして人的交流活動を通じて変化をもたらすという面で最適な存在であることを示している。米日カウンシルの目標は、強力な関係に関心をもつステークホルダー(利害関係者)の数と多様性を増やすことである。同盟の長期的な健全性を確保するため、日米関係に関わる人々には性別や出身地、民族的背景や職業、年齢など、多くの面で多様性を反映するような形にしなければならない。

このため、米日カウンシルでは、ハワイやシリコンバレー、シアトル、デンバー、ヒューストンなど、各地で教育・文化交流事業を開催している。女性のリーダーシップや起業家精神、地域経済などのテーマを中心としたプログラムは、日米関係に従来とは異なる見方を持ち込むのに有効である。また、州議会議員を対象とする「アジア系アメリカ人リーダー訪日プログラム」などの革新的プログラムもこの目的に適っている。

米日カウンシルは次世代リーダーの育成を最も重視しているが、それを具現化しているのが「TOMODACHIイニシアチブ」である。このイニシアチブを通じたプログラムは当初、東北地方の若者や被災地復興を対象としていた。東北から数百人の高校生が米国のリーダーシップ・プログラムに参加し、地域社会との関わりについて学び、地元へ持ち帰った。同様に米国の学生が東北地方を訪ね、復興への地道な努力を学んで帰国した。その後、プログラム参加者の多様性と対象範囲は徐々に拡大し、起業家をめざす沖縄の学生がシリコンバレーを訪問したり、福岡の女子大生がワシントンDCの学生と意見交換をしたりしている。今後はデトロイトの若い専門家が富山の若手専門家を迎える予定もある。米日カウンシルは若手の指導や世代を超えた関与を奨励しており、経験豊富なリーダーとの対話を通じた次世代の育成に取り組んでいる。

地方自治体、企業との連携促進も

また、米日カウンシルは、企業や政府、市民社会の新たな連携を通じて両国の機会を拡大するための架け橋でもある。その代表格が「ガバナーズ・サークル」と「シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム」である。ガバナーズ・サークルは、革新的な日本の知事との対話として出発し、ハワイ州知事と3県の知事との覚書につながった。2014年7月には、6人の県知事が中小企業事業主の代表団を率いてシリコンバレーを訪問し、ITやバイオ医療などの分野での協力について話し合った。これを契機に、シリコンバレーでの事業機会を視野に日本の中小企業を支援するための基盤整備に向けた取り組みが始まった。このプロジェクトは、2015年4月の安倍首相の訪米中、米日カウンシルが主催した首相とシリコンバレーの有識者との懇談の中でさらに大きな支持を得た。

米日カウンシルのイベントでの交流

米日カウンシルの取り組みの総決算ともいえるのがアニュアル・カンファレンスである。今年は11月9~10日、初の日本開催として東京都渋谷区で行われる。全米各地からカウンシル・メンバーが来日し、日本側のリーダーと合流して著名な政界、実業界、社会活動家などの重要なテーマに関する講演を聞き、投資や政治的関与、慈善活動、起業家精神などのテーマに関する将来の議題を決め、人脈づくりを行い、新しい協力関係を築き、互いの発想や考え方から刺激を受けることになる。

人的交流でビジョンを実現

米日カウンシルの仕事は、人と人との関係が日米関係の基盤を作っているとの理解に根ざしている。多くの先人が強固な基盤を作ったが、それを維持していくためには時間や労力、資源を投じることが必要である。米日カウンシルは、個人の新しい着想を積み重ねることにより、両国の関係を支える活動を始めるためのプラットフォームを提供している。

そうした活動はカウンシル・メンバー以外の人々にも関与を促し、刺激を与え、意欲を引き出す効果を与えている。米日カウンシルが最終的にめざしているのは、日米関係に取り組むリーダーの多様性を広げ、両国とアジア太平洋地域にとって有益な、前向きで効果的な協力関係を築くことにより、活気あふれるダイナミックな日米関係を構築することである。これは野心的なビジョンであり、両国の人々の支援があって初めて実現できるものである。

(原文英語。7月25日記。バナー写真:2013年12月13日、「TOMODACHIイニシアチブ」に参加した東北地方の高校生と大学生が米日カウンシルのアイリーン・ヒラノ・イノウエ会長、キャロライン・ケネディ駐日米国大使と懇談。©時事)

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  • [2015.09.07]

米日カウンシル取締役副会長兼COO(最高執行責任者)。2010年3月から2012年9月までジョン・ルース駐日米国大使上級顧問を務め、「TOMODACHIイニシアチブ」の企画・策定に関わった。元米国海軍将校で、2004年から2006年まで米国防総省の日本担当ディレクター、2006年から2010年まで国防長官室日本部長を務めた。ジョージワシントン大学でアジア研究修士号取得。2008年には日米同盟に尽力した実績を評価され、加藤良三賞を受賞。

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