沖縄反基地運動の構造的問題

ロバート・D・エルドリッヂ【Profile】

[2016.04.22] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL |

反対運動自体が自己目的化

沖縄は今、大変な混乱の中にある。米海兵隊の基地、普天間飛行場の辺野古への移転計画がいったん日米で合意し、法的、行政的な手続きも終えて着工段階にまで至ったのに、強い反対姿勢をとる翁長・沖縄県は裁判に訴え、国は工事の一時中断を余儀なくされた。この事態の中で私が憂慮しているのは、基地反対運動の存在ではない。いま行われている活動家中心の反対運動やそれを扇動する沖縄をはじめとする国内外のメディアが、どう見ても沖縄県民の平均的な意見の集約とは思えないことである。

私は日米関係を専門とする研究者として、この20年以上「沖縄問題」に関わってきた。そして2009年からは在沖縄海兵隊基地の政務外交部次長として、現地で事態を長年調査してきた。ここまでの混乱となった理由は確かに簡単ではない。それは歴史的な問題、日米両政府の対応の問題、メディアや社会の在り方の問題など、さまざまな要素があるが、反対運動がそれなりの利権になっているという構造的な問題もある。

反対すればするほど、運動への寄付などでお金が落ちるという構図が実際に存在する。普天間飛行場の辺野古移設反対運動では爆音訴訟団が中心的に動いているが、よく考えて欲しい。「移転反対」は、爆音の源となる飛行場を残すことを意味する。これは訴訟団の設立趣旨とは反対の活動であり、爆音の除去ではなく反対運動をすること自体が目的となっているのである。

また宜野湾市や名護市の市長選、沖縄県知事選で見られるように、反対運動が選挙運動の母体になっていることも注視しなければならない。メディアや「革新」系の政治家、そして学者らによる不健全で不透明な癒着がある。真実が見えなくなっている。

地元メディアのバイアス

私は2015年3月、海兵隊の職を更迭された。真相は複雑で自分自身もよく分からないが、キャンプ・シュワブのゲートでの2月の事件がきっかけだった。抗議活動をしていた1人の活動家が、基地敷地内を示すラインを越えて逮捕された。現場にいた地元メディアは一斉に「不当逮捕」と報道した。

しかし、基地の監視カメラの映像記録を見る限り、この活動家は抗議団体の先頭に立って、何度も基地内に入り警備員を挑発している。地元メディアは現場で一部始終を見ていたにもかかわらず事実と反する報道を行い、それは日々エスカレートしていった。

映像の公開は、虚偽の報道により海兵隊の名誉が著しく傷つけられている以上、妥当と判断してのことだった。しかしメディアは捏造報道の責任を取らず、「誰が映像を流出させたか」に論点をずらした。

その結果、私は「参謀長の許可なくメディア関係者と接触した」として更迭されたのである。この映像自体は軍の機密に触れるようなものではなく、私自身メディア対応が職務だったので、何ら問題のある行動を取ったとは思っていない

地元メディアの振る舞いは一時が万事同様で、極めてバイアスのかかった報道になっている。最近私が沖縄問題を論じる際、反対運動のイデオロギーではなく、地元メディア問題という枠組みで説明するのは、ここに沖縄問題が集約されていると思うからである。

バイアスがかかっているのは米国の新聞も同じだ。2014年の沖縄県知事選についてのワシントン・ポストの報道は、情報源があまりに反対運動側に偏っていた。記者はアジアを1人でカバーしており、自ら「丁寧な取材ができない」と話す。その結果、沖縄メディアと同様に反対運動の活動家を「平和のシンボル」として英雄的に紹介してしまうことになったようだ。

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  • [2016.04.22]

元大阪大学准教授、元米海兵隊太平洋基地政務外交部次長。1968年米国生まれ。神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。政治学博士。著書に『沖縄問題の起源』(サントリー学芸賞受賞)、『尖閣問題の起源』、『だれが沖縄を殺すのか』(PHP新書)『オキナワ論』(新潮新書)など多数。メールアドレス:robert@robertdeldridge.com.

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