待ち続けるか、それとも行動を起こす時が来たのか?

ワシーリー・モロジャコフ【Profile】

[2016.12.26] 他の言語で読む : Русский |

先日のウラジーミル・プーチン・ロシア大統領の訪日は、ここ日本では予想通り、大きな反響を呼んだ。政府高官を含む多くの日本人が、安倍晋三首相とプーチンの会談の結果に「がっかりした」と公に語っている。訪日したプーチンに多くのことを期待していたのだが、プーチンは…。

日本人の多く、政治家や政治学者、ジャーナリストらはプーチン訪日に何を期待したのだろうか?はっきり申し上げよう。何よりも「領土問題の解決」を期待していたのである。プーチンの「お土産」を期待していたのだ。「北方領土問題」を解決していく心積もりがあるという趣旨の発言、または、日本に譲歩するという何らかの意思表示を期待していたのだった。しかし「お土産」はなかった。そのために多くの人が「がっかりした」のだ。

プーチン大統領自身は、「期待」をさせるようなことを一切してこなかった。訪日の直前にも、そのもっと前にもだ。今年、日本を訪問する前にプーチン大統領は安倍首相と2度会談し、忌憚(きたん)ない話し合いをしている。安倍首相は、これらの会談の中身に満足しているのだろうか、私には分からない。しかし、安倍首相がサプライズを期待していなかったことは明らかであるし、そして、実際のところサプライズは起こらなかった。

公式の声明から考えると、安倍首相はロシア大統領の訪日と会談の結果に満足している。首相というのは、当たり前だが個人ではなく、国家行政の長であり、実質的に国家の長だ。首相はその両肩に、国、そして選挙で首相の政党とその政策に票を投じてくれた国民に対する大きな責任を負っている。首相は「全権委任」されているのであり、自分の責任の重大さを認識している。首相に不満を持った人々は、次の選挙で他の政党に投票するのだ。首相は、このような批判を受け止めることもあれば、無視することもできる。

多くの日本人がプーチン訪日に満足しており、満足している人たちの視点の方に私は共感するし、そちらの方が正しいと考える。まず、訪日そのものが成立したことは、非常に素晴らしいことだった。ロシアや日本のような国のリーダーは、国際フォーラムのような場の隙間時間に「立ち話」をするだけではなく。少なくとも1年に1度は、公式訪問という形で相互に訪問し、二国間関係、地域内また国際問題全般について交渉しなければならない。このような交渉は、彼らの職務の一つであるだけではなく、義務なのだ。

プーチン大統領と安倍首相は交渉の場で、両国にとって重要ではあるが、それが全てではない平和条約の問題にとどまらず、幅広いテーマについて話し合った。安倍首相が、ロシアとの関係における新しいアプローチを模索していることは非常に素晴らしい。安倍首相が賢明で先見の明をもつ政治家であることの証左である。プーチン大統領が、隣国間の関係を変化させ、本物のパートナーシップに転じていくために、安倍首相の呼び掛けに応じたことも、正しい対応だった。

プーチン大統領との交渉における安倍首相の方針を批判する人々は、ロ日関係は「領土」や「平和条約」の問題だけではないということを思い出さなくてはならない。なぜ、そのような人々は、今回の訪日で達成された、他の分野における結果については言及しないのだろうか?これらの成功は、それほど重要ではないとでもいうのだろうか?私は、日本の国益という観点から、これらの分野での交渉結果は、明確な成功だったと考える。ロシアの国益からしても同様だ。両国の国益は多くの点で合致しているのであり、まさに、そのような分野で協力を推し進めていかなければならないのだ。

プーチン大統領の「島に関しての歴史的なピンポンに終止符を打つ時がきた」という言葉が私の心に響いた。しかし、日本とロシアで「歴史的なピンポン」を生業としている人々は、この言葉を良しとしなかったようである。なぜなら、自らの仕事を失ってしまうからだ。

日本側のプーチン訪日への反響の中で、私は特に、ロ日関係や国際政治の専門家である佐藤優氏による記事に触れたい。佐藤氏は、今日の状況を深く理解しているだけではなく、好き嫌いをはっきりと表現することで知られている人物だ。実は私は、佐藤優氏が安倍首相を批判するだろうと考えていた。私は、佐藤氏がプーチン訪日を成功だと評価していることをとても嬉しく思う。

安倍晋三氏は4年前、日本の首相となった。まだ、評価を下すには早いが、安倍氏が今後も首相として仕事を続けてくれることを願う。また、新年を前にして、日本の人々が「安倍さん、ご苦労様。良い仕事をしてくださってありがとう」と感謝するよう願う。

待っている時はもう終わり、行動すべき時がいよいよ到来したのだ。これからは、皆で一緒に仕事をし、前進していかなければならない。

(原文ロシア語。ロシア語版は2016年12月22日公開)

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  • [2016.12.26]

拓殖大学日本文化研究所教授。1968年モスクワ生まれ。1993年モスクワ国立大学卒業、1996年同大学博士課程修了。歴史学博士(Ph.D., モスクワ国立大学、1996年)、国際社会科学博士(Ph.D.,東京大学2002年)、政治学上級博士(LL.D., モスクワ国立大学、2004年)。2000~2001年、東京大学社会科学研究所客員研究員。2003年、拓殖大学日本文化研究所主任研究員。2012年より現職。ロシア語で著書30冊以上、そのうち日本に関するもの15冊。日本語での著書に『後藤新平と日露関係史』(藤原書店、2009年)、『ジャポニズムのロシア』(藤原書店、2011年)。

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