「豊年祭」が結ぶ台湾と沖縄・八重山の絆

松田 良孝【Profile】

[2017.09.17] 他の言語で読む : 繁體字 |

「豊年祭」(収穫祭)という祭りが沖縄県八重山地方と台湾にある。どちらも7~8月に行われる夏の風物詩で、豊かな実りを感謝・祈願する伝統的な祭祀(さいし)だ。呼び名もそっくりで、奉納する収穫物にも共通項があるが、その関係性については解明されていない。黒潮を挟んで向かい合う二つのエリアに足を運び、祭りを見ながらつながりの痕跡を探してみた。キーワードは「穀物」である。

キーワードはアワ

ざるにアワ束を入れ、頭に載せて歩く女性、台湾・台東県太麻里郷、2017年(撮影:松田 良孝)

台湾東部の台東県太麻里郷にあるルパカジ地区。パイワン族の収穫祭(豊年祭)が開かれ、女性たちが二つのグループに分かれてゲームをしている。ざるを頭に載せたまま歩いていき、戻ってきたら次の人にバトンタッチ。ざるには、ふっくらと盛り上がったアワの束が入っている。アワの穂先には黄金色の小さな実がたっぷり。ざるを手で支えてはいけないルールだが、厳密にのっとってはいない。ゲームは「伝統競技」というプログラムで「頂上功夫」と呼ばれるものだ。

出場者がドジを踏むたびに歓声が沸き起こる。一種の遊びには違いない。ただ、伝統的な衣装を身に着けた若者たちがゲームを見守るように手をつないで列を作り、おだやかなリズムで体を揺らしながら、低い声で歌を歌っており、落ち着いた気配も漂う。

この前夜、アワ束をくくりつけた竹竿(たけざお)の下で、同じ若者たちが広場で踊りを繰り返したり、大人の仲間入りをする儀式を行ったりした。パイワン族の別の村から大勢の若者たちが次々にやってきて、踊りを披露したりして敬意を表す場面もあった。

原住民(台湾の先住民族)の豊年祭・収穫祭を取り上げた「収穫祭」(黄国恩、2004年)という本がある。説明は「小米与原住民」(アワと原住民)という小文で始まる。「小米」は「アワ」のことで、「アワは、原住民の伝統的な社会の中で、食糧作物として大切にされているだけでなく、暮らしと祭祀のさまざまな場面で重要な役割を演じている。(中略)アワは、ただの食べ物ではなく、そこには神聖な力が宿っている」とあった。

アワで造った酒「小米酒」にもページを割き、「小米酒は原住民の祭祀に欠かせない。冠婚葬祭にはほぼこの酒が登場する」と述べる。

パイワン族の収穫祭で、竹竿(たけざお)にアワ束をくくりつける若者たち、台湾・台東県太麻里郷、2017年(撮影:松田 良孝)

これほどの作物だけあって、刈り取る時にくしゃみをしてはいけないとか、収穫は畑の右から左に向かって行うといった決まりごとがある。「守らなければ、せっかく育てた小米が小鳥のように去っていってしまう」という。日本統治期に作成された資料には、別の禁忌が取り上げられており、台湾総督府が進めようとしていた政策と密接に関わっていた。

この記事につけられたタグ:
  • [2017.09.17]

石垣島など沖縄と台湾の関係を中心に取材を続ける。1969年生まれ。北海道大学農学部農業経済学科卒。十勝毎日新聞、八重山毎日新聞を経て、2016年7月からフリー。著書に『八重山の台湾人』、『台湾疎開』、『与那国台湾往来記』(いずれも南山舎)、共著に『石垣島で台湾を歩く:もうひとつの沖縄ガイド』(沖縄タイムス社)。第40回新沖縄文学賞受賞作の小説『インターフォン』(同)もある。さいたま市出身。ブログ「台湾沖縄透かし彫り」

関連記事
その他のコラム

ピックアップ動画

最新の特集

バナーエリア2
  • nippon.comコラム
  • in the news
  • シンポジウム報告