2017年の日本経済予想: 16年の「足踏み」脱し、「改善」の年に

経済・ビジネス

2017年、日本の景気は上向くのか。見通しを解説する。

各種経済指標に「改善」の兆し

日本の景気は、方向性がはっきりしない不透明な状況が2015年後半から16年秋ごろまで続いてきたが、10~12月期になって、改善の兆しが見え始めた。景気動向指数の基調判断は約1年半にわたる「足踏み」が続いてきたが、12月7日発表の10月分で「改善」に戻った。それに先立ち、一致指数に最も影響を与える鉱工業生産指数が8月分で「緩やかな持ち直し」に上昇修正され、今もその傾向が続いている。在庫調整が終了し、生産が増加しやすい局面に入っている。日銀短観12月調査・大企業・製造業・業況判断DIは+10と、9月調査の+6から1年半ぶりに上昇した。

12月19日に日本経済研究センターから発表された「ESPフォーキャスト調査(12月調査)」によると、16年度の成長率は実質1.19%、名目1.21%となった後、17年度も実質1.09%、名目1.37%と1%台に乗るというのが総平均予測だ。消費者物価指数(コア)の前年比は16年7~9月期を底にマイナスながら持ち直し、17年1~3月期からはプラスに転じ、18年1~3月期の0.88%まで緩やかに上昇。年度の上昇率は、16年度▲0.24%の下落の後、17年度は0.73%と上昇に転じるというのが総平均の見通しだ。

個人消費、設備投資ともに増加か

「ESPフォーキャスト調査」は、民間エコノミスト(フォーキャスター)に毎月、日本経済の重要な指標の予測値や総合景気判断などについて先行き見通しをアンケートし、その平均をコンセンサスとして発表するものだ。

この調査では、毎年度、参加しているエコノミストの予測に関し主な項目をチェックすることで評価し順位づけを行っているが、それと同時に総平均の順位も評価している。

総平均の順位は意外な結果になっている。フォーキャスターの総数が40名程度だから総平均の順位は15位程度と思われがちだが、調査開始の04年度から15年度までの12年間は順位が全て1ケタ台で、最高3位、最低9位、15年度は第7位であった。楽観的見方と悲観的見方はあるが、極端な見通しは少数派とすれば分散投資と同様の理由で総平均の予測パフォーマンスが優れているのだろう。

さらに12月調査の他の項目の総平均をみると、米国の実質GDP成長率は16年1.59%、17年2.32%である。トランプ新大統領による減税、インフラ投資などへの期待が高いようだ。また中国の実質GDP成長率を16年6.65%、17年6.37%と、減速すれども6%の高水準で安定推移するとみている。その結果、日本の外需の実質GDP成長率に対する寄与度は17年度では0.0%というのが総平均の見方だ。

17年度の内需の寄与度は1.0%である。個人消費の伸び率が17年度は0.82%の増加で、16年度の0.70%の増加から伸び率を高める。雇用環境は良く、完全失業率は16年度の3.07%から17年度は2.94%へと低下する見込みだ。

設備投資の伸び率の総平均は16年度が1.36%の増加だったが、17年度は1.90%の増加へとやや伸びを高めそうだ。16年度は0.65%と熊本地震の影響などもあってもたついた鉱工業生産指数は、17年度では2.18%の増加に持ち直すことが予測されている。

7~9月期実質GDP第2次速報値は前期比年率+1.3%と、第1次速報値の+2.2%から基準改定や季節調整替えの影響で下方修正されたが、12年10~12月期から13年7~9月期の4四半期連続増加以来、3年ぶりの3四半期連続増加になった。

名目GDPが大きく上方修正。2020年度ごろの600兆円も視野に

2011年基準への改定により、研究開発費が設備投資にカウントされたことなどの影響で15年度の名目GDPは大きく上方修正された(表)。

2011年基準改定:2015年度の名目GDP水準の改定要因

金額 改定前GDP比 影響する主な需要項目
全体(新基準―旧基準) 31.6兆円 6.3%
うち 国際基準対応(2008SNA)要因 24.1兆円 4.8%
 研究・開発(R&D)の資本化 19.2兆円 3.8% 民間企業設備
公的固定資本形成
 特許等サービスの扱い変更 3.1兆円 0.6% 財貨・サービスの純輸出
 防衛装備品の資本化 0.6兆円 0.1% 公的固定資本形成
 所有権移転費用の扱い精緻化 0.9兆円 0.2% 民間住宅
 中央銀行の産出額の明確化 0.2兆円 0.0% 政府最終消費支出
うち その他(約5年毎の基礎統計の取込み、推計手法の開発(建設部門等)QEから年次推計への変更(15年のみ) 7.5兆円 1.5% 各項目

*名目GDP:旧基準(改定前2005年基準)500.6兆円 → 新基準(改定後2011年基準)532.2兆円
(出所)内閣府

過去最高水準の名目GDPである16年4~9月期の537兆円を今後各半期年率+2.3%成長で延長すると、20年度下期595兆円、21年度上期602兆円になる。名目GDP成長率がこれまで必要とされた3%台ではなく15年度の2.8%等と比べ実現可能性が大きい2.3%で達成可能になった。GDPの計算が、欧米諸国が先に適用している国際基準に追いついたことで20年度ごろの名目GDP600兆円というアベノミクス新3本の矢の第1の的が現実味を帯びてきた。

バナー写真:東京証券取引所の大発会式典後、記念撮影する晴れ着姿の市場関係者ら=2017年1月4日、東京・日本橋兜町(時事)

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