縮む・老いる日本:人口減少社会をどう生きるか

谷 定文【Profile】

[2017.07.04]

日本は、世界で先例のない人口減少=少子・高齢化の時代に突入する。いずれ働く人が足りない、経済力が低下する、政治家が老人の歓心ばかり引こうとする――といったきしみが顕在化するだろう。縮みゆく、老いゆく日本を救う処方箋はあるのか。

急速に進む少子・高齢化

本稿では、国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一副所長が6月14日に行った講演(共同通信社主催)とその際に配布された資料を基に、日本が直面する少子・高齢化の現実と課題を説明。その上で、筆者の私見も交えた対策を提示する。

まず図1「日本の人口ピラミッド」を見てほしい。前回東京五輪が開かれた翌年の1965年には若い世代が大きく横に張り出しているのに対し、半世紀後の2015年には高齢層が広がり、若年層は尻すぼみとなっている。これは50年前の若者があまり死なずに年をとり、分厚い高齢層を構成している一方、生まれてくる子供が少なかったことを示している。

この間、総人口は9827万人から1億2709万人に、3000万人(30%)近く増えているが、生産年齢人口(15~64歳)の構成比は68.1%から60.8%に縮小した。年上と年下の人口が同数となる、いわば分水嶺である中位数年齢は、27.5歳から46.7歳に上がった。この状況を端的に表す言葉が「少子・高齢化」だ。

50年後、日本人の半分は55歳以上に

それでは、日本の人口ピラミッドは今後どのように推移していくのだろうか。中位推計によると、主なポイントは下記の通りだ。カッコ内は2015年比。

2040年 2065年
総人口 1億1092万人(12.7%減) 8808万人(30.7%減)
中位数年齢 54.2歳(7.5歳上昇) 55.7歳(9.0歳上昇)
生産年齢人口比率 53.9%(6.9ポイント低下) 51.4%(9.4ポイント低下)
65歳以上の老年人口比率 35.3%(8.7ポイント上昇) 38.4%(11.8ポイント上昇)

2040年には何とか1億人を維持しているが、65年になると大台を大きく割り込む。中位数年齢は、1970年代まで一般的なサラリーマンの定年年齢だった55歳前後に上昇する。つまり、今から半世紀前の定年制度を適用すれば、人口の半分は引退した人たちという時代がやってくる。

一方で働く世代の厚みは、どんどん削られていく。生産年齢人口の実数をみると、比率は下がっても1965年の6692万人が2015年には7727万人に増えた。しかし、これからは40年5979万人、65年4527万人と急速に減っていく。今のままの社会経済構造では、労働力が決定的に不足することが容易に想像できる。

構造的にビルトインされた人口減少「慣性の法則」

国連の「世界人口展望2017年版」によると、世界の総人口は今後も増え続け、現在の76億人が50年に98億人、2100年に112億人に達する。こうした中、日本は現在の11位から2050年に17位、2100年に29位と人口ランキングの順位を落としていく。経済成長は一定程度、人口の増減と連動する。もう10年も前の2007年に米ゴールドマン・サックスが発表した50年の国内総生産(GDP)世界ランキングは、ショッキングだった。現在3位の日本はインド、ブラジル、インドネシアなどに抜かれ、8位に落ちるという内容だったからだ。人口以外の要因を重視したもう少し楽観的な見通しもあるが、人口減少が経済成長の足を引っ張るのは間違いない。

金子副所長は日本の人口推移について、「生物学・生態学の理論を逸脱」していると結論付けている。そして、21世紀を通して人口が減少するペース、高齢化とも世界一になると予測する。

なぜ、それほど悲観的かというと、「人口モメンタム」という慣性の法則が働くからだ。1人の女性が一生の間に産む子供の平均人数を合計特殊出生率という。人口が増えも減りもしない率は2.07だ。人口問題研究所によると、仮に出生率が2010年以降2.07に回復したとしても、70年代まで日本の人口は減り続ける(図2の赤線)。

なぜなら人口を維持するだけの子供が10年から生まれ続けても、その子供たちが自分の子供を産むようになるのは一般的には20歳代になってから。40~50年ごろまでは、出生率1台と母数が小さい女性が出産適齢年齢であるため、出生数は減少傾向をたどる。一方、母数の大きい高齢者の死亡数は増えていく。つまり日本の人口は今後60~70年間にわたり、減り続けるモメンタムが構造的にビルトインされていると言える。

まして現実の出生率は、ボトムだった2005年の1.26から上昇したと言っても、1.5を割る水準で推移している。それでも、出生率が回復すれば人口減少に多少なりともブレーキが掛かり、長期的には大きな差になることが図2で分かる。図の右半分にある青線を赤線に近づける努力が求められる。

都市で介護難民が大発生―「シルバー民主主義」の弊害も

次に高齢化が将来、どのように進むのか見よう。図3は高齢者を「65~74歳」「75~84歳」「85歳以上」の3層に分けた人口構成だ。高齢層の中でも、より年齢の高い老人の比率が今後、高くなっていく。100歳を超えて元気な人がいるし、医療は進歩するだろうが、やはり健康や生活に支障を来すリスクは年齢を重ねるとともに増大する。

警察庁の発表によると、2016年の認知症の行方不明者は、1万5432人と前年より3224人も増えた。統計を取り始めてから毎年、最多記録を更新し続けている。独居老人の人数、割合とも増加傾向にあり、届け出のなかった行方不明者はもっと多いだろう。

若者が流入する首都圏や大都市では高齢化は問題にならないという認識もあるが、これは大きな間違い。東京都と神奈川、沖縄県では65歳以上の高齢者人口が、10年から40年に50%以上増加する。同じ期間中、埼玉、千葉、愛知、滋賀県で40~50%、宮城、茨城、栃木、兵庫、福岡県と京都、大阪府で30~40%増えるなど、大都市での増加率が高い。大都市で将来、介護難民が大発生することも十分予想できる。

政治面では、有権者の高齢化が著しい。有権者に占める35歳未満と65歳以上の比率は下記の通りだ。16年以降は選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げた新制度で、推計している。

1960年 2016年 2030年 2060年
35歳未満 42.9% 20.3% 18.5% 15.7%
65歳以上 9.6% 32.7% 36.8% 45.9%

1960年と2060年では、青年と老人の政治パワーが劇的に逆転しているのが一目瞭然。しかも、09年の第45回衆院選挙の投票率でみると、最も低い20~24歳が46.7%、最も高い65~69歳が85.0%だ。こうした状況をプレストン効果、またはシルバー民主主義と呼ぶ。雇用、子育て支援、教育の充実を求める青年の声は、年金、医療、介護の後退を許さない老人の怒りにかき消されてしまう可能性がある。

考え得る政策の総動員を

ここまで金子副所長の分析に沿って、日本の暗い未来を描いてきた。ここからは金子副所長の分析・提言を基に、筆者の私見も交え、明るい未来図を実現するための処方箋をいくつか提示する。

▼年金インセンティブ

子供を産んだ女性の年金給付額を上乗せする。例えば、子供1人で1万円、2人で3万円、3人で6万円と、子供の数が1人増えるごとに上乗せ幅を拡大する。年金受給開始年齢(現在65歳)に達するまでの財政負担はないし、老後の不安を緩和することで、消費を刺激する効果が期待される。

ただ、離婚後に苦労して育てたり養育費を払ったりした男性をどう処遇するか、といった制度設計に工夫が必要だろう。また、子供を持つという本来は自由な選択を、現金給付で誘導することへの反発も予想される。

▼養子縁組

望まない妊娠で中絶する女性がいる一方、子供を欲しい家庭がある。この2つを結び付ける。2016年12月に養子縁組あっせん法が成立し、「アボーション(中絶)からアドプション(養子縁組)へ」の基盤は整った。悪徳あっせん業者の排除やマッチングなど運用上の課題を克服する必要がある。

▼移民

賛否が大きく分かれる対策だが、既に多くの外国人労働者が日本経済を支えている現状もあり、いずれ真正面から議論しなければならない対策だ。金子副所長は、若年人口が今後、アフリカでは急増する一方、アジアなどの地域で減少していくため、移民争奪戦が起きる可能性を指摘し、「移民は決め手にならない」との考えを示している。

▼女性と高齢者の社会進出

日本における女性の社会進出は進んでいるが、企業の役員や管理職、政治家など要職に就く比率は先進国の中で低水準にとどまっている。せっかく能力があるのに、単純作業に甘んじている女性は多い。彼女たちの選択肢を増やし、能力を生かすような社会を構築していくべきだろう。そのためには、子供を安心して預けられる保育園などの充実、自宅勤務を含む柔軟な勤務時間・スタイルの導入が必要になる。

高齢者について金子副所長は、1960年に男性11.6年、女性14.1年だった65歳の平均余命が2060年には男性22.3年、女性27.7年に延びるとの予測を紹介している。昔より元気な老人が増えると言っていいだろう。また、パソコンを「使いこなせる」割合(2015年調査)は、70歳代の男48.1%、女15.6%に対し60歳代は男68.4%、女27.5%と、若い老人ほど情報技術との親和性が高く、その分野での労働力になる可能性を示唆している。

▼技術革新

現在では想像できない新技術が開発されるのは、間違いない。「人間の仕事を奪ってしまう」とAI(人工知能)の進歩を恐れるのではなく、人口減少時代を支える道具として賢く利用していく必要がある。

上記の対策には一長一短があり、組み合わせて講じる方が効果を発揮すると考えられる。また、他にもさまざまな処方箋があるだろう。明るい未来を実現するためには、人口減少のインパクトが比較的小さいうちに、考え得る政策を総動員することが求められる。それも今すぐに。

バナー写真:敬老の日に東京・巣鴨のとげぬき地蔵尊高岩寺で高齢者向けに行われた「健康ガムカムダンベル体操」=2015年9月21日撮影(時事)

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  • [2017.07.04]

ニッポンドットコム常務理事・編集局長。1954年、東京都生まれ。上智大学外国語学部卒業後、時事通信に入り、経済部長、編集局長、常務取締役などを歴任。88~92年にはワシントン特派員として、激しさを増す日米貿易摩擦を最前線で取材した。2016年から現職。

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