超金融緩和の「出口」はどこに:求められる日銀の説明責任

桑原 稔【Profile】

[2017.07.10] 他の言語で読む : ENGLISH |

日銀が量的質的金融緩和政策からどう抜け出すのか、その「出口」が注目されている。金融政策を長年にわたり取材してきた筆者は、その手順を予想すると同時に、①金融政策が財政政策に振り回される危険、②日銀の説明責任、③円安リスク―を指摘する。

国債の4割を日銀が保有

日銀が2014年4月に始めた巨額に上る国債買い入れを主軸とする金融緩和政策(量的・質的金融緩和=QQE(※1))によって、日銀が保有する国債残高は420兆円(うち長期国債は390兆円)となり、国債発行残高の4割にも上る。米連邦準備制度理事会(FRB)のそれは12%であり、世界の中央銀行の中でも飛び抜けた水準だ。

日銀の政策目標である消費者物価(CPI)の2%上昇が達成された時、当然これまでの大規模な量的金融緩和策は収束に向かっていく。その際、金利水準がマイルドに上昇するのなら、市場の混乱も少ない。しかし、長期金利が急上昇する可能性があるのではないかという懸念が市場関係者の間に広がっている。金利急上昇ショックは金融機関の収益を直撃する。ショックを回避し、あらかじめ市場に金利観の形成を促すために、日銀に対し出口時の具体的なシミュレーション開示を求める声が高まっている。

マイナス金利が銀行収益を直撃

最近、再び出口戦略に関心が高まっている。これは自民党の行政改革本部が4月に公表した「日銀の金融政策についての論考」がきっかけ。この論考は、巨額の国債を抱えた日銀が債務超過となり、円の信認、ひいては日本全体の信用が失われるのではないか、出口の際に準備預金金利の上昇によって金融機関収益が圧迫されるのではないか、そして国債金利の急上昇によって財政健全化に支障を来すのではないかと指摘した。現在こうした論点について、さまざまな論議が交わされている。

加えて、年間80兆円(現在は60兆円程度の水準)にも上る国債買入自体が難しくなっているという事情がある。すでに毎年の政府の新規国債発行額を上回り、マイナス金利(オーバーパー発行)で市中から強引に吸い上げなければ目標の買い入れ額を達成できない事態となっている。

当然のことながら、マイナス金利で買い入れれば償還時に日銀は損失を計上することになる。こうした政策に持続性があるのかという疑問が生じている。いずれ、どこかの時点で現行政策に終止符を打たざるを得なくなることが明らかなら、どのような手順で出口に向かうのか、そのシミュレーションを示すべきだとの市場関係者の要請は至極当然である。

さらにQQEの弊害も広がってきた。例えば、長期にわたるゼロ金利、あるいはマイナス金利政策により金融機関の貸出利ザヤは縮小、収益を圧迫している。リスクバッファーが少なくなった金融機関は新たな貸し出し余力を奪われている。

また、国債流通市場からあまりにも多額の国債を吸い上げてしまったために、日々の取引が少なくなり、日本の市場から「長期金利」の指標が消失しつつある。最も信用力が高いとされる国債の金利が、信頼すべき指標ではなくなりつつある。長期金利の指標がなければ、企業の社債発行金利の根拠が失われる。住宅ローン金利も同様だ。企業の財務運営の不安定化を招き、金融機関は長期の貸し出しに及び腰にならざるを得ない。

とっくに過ぎ去った約束の2年

QQEは、そもそも2年間の短期の金融政策であった。しかし、原油価格の低下など環境の激変によって、長期化を余儀なくされている。政策の目標は2%の物価上昇達成だが、4年以上経過した今もCPIはゼロ近辺にある。日銀がこの2%に固執する限り、日銀はQQEを継続していくだろう。

しかし、2%が絶対的な目標なのか、冷静に考えるべき時期にきている。確かに2%は実現していないが、QQE当初の隠れた目標であった円安と株高は実現した(黒田東彦総裁は、国内のデフレ脱却のための金融政策であって為替政策ではないという説明で海外の中央銀行を説得した)。

アベノミクスが評価されたのもこの点であって、CPI2%の実現ではない。すでにデフレ的な経済スパイラルが起きる可能性はなくなっている。ならば、CPI目標の下方変更も政策のテーマとして捉えるべきだろう。

日銀は4月の「経済・物価情勢の展望」リポートで、「2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤(2018年ごろ)になる可能性が高い。その後は、2%程度で安定的に推移していくものと見込まれる」と強気の見通しを掲げている。政策委員の見通しの中央値も18年度が+1.7%、19年度は+1.9%と高い。

しかし、図を見れば分かるように、17年からグラフは大きく折れ曲がり、非現実的と言わざるを得ない形状を示している。しかも、このCPI見通しをQQE導入後、日銀は5回も変更している。こんな見通しを一体誰が信用し続けるだろうか。

(※1)^ 日銀は政策の限界を補完するため、追加的に2016年1月にマイナス金利政策を導入。同年9月には国債10年物金利を0%に固定するイールドカーブ・コントロール政策を導入した

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  • [2017.07.10]

ニッポンドットコム・シニアエディター。1952年、東京都生まれ。中央大学法学部卒業後、社団法人金融財政事情研究会に入り、事務局次長、週刊「金融財政事情」編集長、編集主幹を歴任し、2017年から現職。

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