シリーズ シンポジウムリポート
革新的手法で社会問題の解決を:日本財団がフォーラム
最優秀賞に「教育魅力化による地方創生プロジェクト」選ぶ
[2016.10.03] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | Русский |

少子高齢化による地域の疲弊、“格差社会”の進展による子どもの貧困など、さまざまな社会的な課題を革新的な手法を用いて解決しようと活躍するソーシャルイノベーターが一同に会するイベント「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム」が2016年9月28日から3日間、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開かれた。

全国から公募で選出されたソーシャルイノベーター10組11人による事業プレゼンテーションの結果、「教育魅力化による地方創生プロジェクト」を掲げた岩本悠さん(36)=学校魅力化プラットフォーム共同代表=が特別ソーシャルイノベーター最優秀賞に輝いた。

また、河内崇典さん(39)、高亜希さん(36)=Collective for Children共同代表=の進めるプロジェクト「子どもの貧困サポートパッケージづくり」、林篤志さん(30)= Next Commons Lab代表=の「地域交響圏システムNext Commons Labの構築」が同優秀賞に選ばれた。

日本財団(笹川陽平会長)はこの3組の特別ソーシャルイノベーターに対し、年1億円を上限に3年間の継続支援を行う。

過疎の高校が変わり、地域に活気

岩本さんは2006年、人口約2400人の島根県・海士町に移住。過疎に悩む島で「人づくりこそまちづくり」をスローガンに、町や地域住民とともに、学校を「魅力化する」プロジェクトを推進してきた。島唯一の高校、県立隠岐島前(どうぜん)高校に地域起業家的人材を育成する新コースを創設し、地域の人々と協働して学んでいく「開かれた学校」を実現。また学校と地域が連携した公立の塾を立ち上げたほか、全国から多彩な能力や意欲ある生徒を募集する「島留学」制度も整備した。

最優秀賞に輝いた学校魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠さん

その結果、高校進学時に地域外へ流出していた地元の子どもたちが、島前高校を自ら希望して選択するように。「ここの教育を子どもに受けさせたい」という親子での教育移住、家族連れのUターン、Iターンが増加し、少子化で廃校寸前だった高校の生徒数は2008年を底に「V字回復」した。海士町の人口も減少から増加に転じた。

学校と行政、地域住民をつなぐコーディネーターを配置し、それぞれのセクターが協働して「学校魅力化」と「地域の将来を担う人材育成」、「地域活性化」を同時に進める海士町のモデルは全国的にも注目を浴び、島根県は県内19地域で海士町と同様の手法を使った「学校魅力化プロジェクト」を6年前から推進してきた。

現在、島根県の「教育魅力化特命官」を務める岩本さんは同フォーラムでの発表で、県内19地域で6年間行ってきた学校魅力化プロジェクトの失敗と成功を通じ、「海士町でのモデルを普遍化できるポイント、突破口が明らかになった」と指摘。このノウハウを基に、「3年後に全国100校規模に『学校魅力化プロジェクト』を拡大する。また、東京五輪開催年の2020年9月に地域社会の課題解決のために取り組んできた地域の高校生が集う『ユース・イノベーター・オリンピック』を東京で開催する」と将来構想を語った。

フォーラム会場でトークセッションを行う学校魅力化プラットフォームのメンバーら=2016年9月29日

社会貢献分野で国内最大級のイベントに

同フォーラムは「日本の将来をつくる」をテーマに、日本財団が今回初めて開催。笹川陽平会長は開幕冒頭のスピーチで、「子どもの貧困問題や待機児童、障害者雇用、若者の自殺など、日本が直面する社会課題は多様化、複雑化している。国、行政だけでは解決できないレベルにあり、マルチセクターとして取り組む必要がある。このフォーラムを通じ、マルチセクターのプラットフォームをつくりたい」と述べ、既存の枠組みにとらわれない形での協働、チームによる課題解決への動きに期待を示した。

フォーラム開幕時にスピーチする笹川洋平・日本財団会長=2016年9月28日

基調講演では、自民党の小泉進次郎衆院議員が登壇。「ソーシャルイノーベーターとは、社会の景色を変えることができる人」と述べた上で、人口減少と少子化は不可避の現実として受け止めるべきだと主張。「悲観的な考えしかできない1億2000万人の国より、将来を楽観し、自信に満ちた6000万人の国の方が、さまざまなイノベーションの成功事例が生まれるのではないか」と指摘した。

基調講演する小泉進次郎衆院議員=2016年9月28日

フォーラムでは、選出された10組11人のソーシャルイノベーターが参加者にプレゼンテーションし、対話を重ねたほか、有識者や社会企業家、NPO関係者らによる30以上のセッションが行われた。同財団によると、3日間の参加者はのべ2187人で、非営利活動・社会貢献分野では国内最大規模のイベントとなった。

取材・文=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:フォーラム参加者に紹介される、公募で選出されたソーシャルイノベーターの各氏(檀上左側)=2016年9月28日、東京都港区の虎ノ門ヒルズフォーラム

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