シリーズ 現代日本政治の動向
選挙制度改革後の議員行動の変容

濱本 真輔【Profile】

[2013.11.19] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 |

衆議院の選挙制度は1994年、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に改革された。以後、国会議員の行動はどう変化したのか。濱本真輔・北九州市立大学講師が分析した。

国会議員は東京近郊の議員を除いて、国会開会時に「金帰火来」というスケジュールで主に行動する。国会での活動がない週末は選挙区に戻り、街頭活動や支持者回りをする。東京においては、政党内での政策活動や国会活動に勤しみ、地元やさまざまな団体からの陳情や要望の実現に取り組む。また、毎週もしくは隔週で開催される所属政党内の派閥・グループの会合に出席し、情報を得ると共に、メンバー間の結束を固めていく。

議員には、再選・政策・出世という3つの目標があるとされる。上記の典型的な国会議員のスケジュールからも、議員がさまざまな目標を追求していることが窺える。特に3つの目標に関連して、後援会・族議員・派閥は、自民党や日本政治を理解する上で注目を集めてきた。このような行動パターンや組織が生まれる背景には、世界でもまれな中選挙区制という制度が影響しているとされ、1994年に小選挙区比例代表並立制へと制度改革がなされた。

選挙制度改革は議員の行動に変化をもたらしているのか。本稿では、国会議員の行動がどのように変化したのかを選挙制度改革前後の比較から明らかにする。

増加する選挙区活動

1994年の選挙制度改革では、1つの選挙区で2~6名が選出され、同一政党(特に自民党)から複数名が立候補する「同士討ち」が多かった中選挙区制から、1つの選挙区で1名のみ選出され、各政党から1名のみ立候補する小選挙区制に移行することで、選挙活動が政党組織中心になることが期待された。しかし、現在でも中選挙区制下と同様、議員は後援会を結成し、選挙戦に臨んでいる。

後援会が重要であるとの認識は、自民党や民主党などの多くの議員に見られる。例えば、2009年の総選挙で野党となった自民党の森喜朗は、政権奪還のために何が大切かという問いに対し、「選挙の原点を見直すことです。やはり後援会と党なんですよ。党公認になっても自分の後援会をしっかり作ることです」(日本経済新聞、2009年9月21日)と述べている。また、自民党の選挙対策委員会副委員長を務めた菅義偉も、同様の質問に対し、「個人の後援会を強くするのは当然だ」(日本経済新聞、2009年9月21日)と、後援会を通じた議員個人中心による有権者の支持拡大の努力が重要であることを認めている。以上の認識は議員に限定されたものではない。自民党の選挙用マニュアルを見ても、後援会を通じた個人中心の集票こそが最も有効な戦略であると論じられている。

しかし、議員を取り巻く環境は大きく変化している。政党システムは二大政党制の方向へと変化してきた。有効政党数を見ると、小選挙区レベルでは1996年の2.95から2009年の2.31へ、全国レベルでは2.94から2.08となり、着実に減少している。また、有権者の投票行動では、党首評価や内閣への業績評価の影響が指摘されるようになった。一方で、地域や集団などの個別的利益が投票において第二義的なものになっていることから、選挙政治の全国化が指摘されている。すなわち、有権者の投票行動やそれを制約する政党システムは、政党や政策を軸とした構造へと重心を移してきた。

全国的な得票変動を意味するスウィングが大きくなる中で、議員は選挙区活動をやや増加させている。特に、大規模な後援会を擁している議員ですらも、選挙に備えて選挙区入りを増やしている。図-1は、選挙区活動の平均値の推移を年単位で示している。(※1) 例えば、1985年の自民党議員(当選1-3回)の選挙区活動の平均は37%である。これは、該当の自民党議員が月の3分の1程度、選挙区に入っていることを示している。

所属政党による差もあるが、当選回数の多い議員ほど選挙区活動を抑えている。これは、自民党議員間、非自民議員間で共通している。当選回数3回以下と4回以上を比べると、当選3回以下の議員の方が10%から20%ポイントほど選挙区入りの頻度が高い。

より興味深いのは、当選4回以上の自民党議員の選挙区活動が徐々に上昇していることである。特に、2007年以降に平均が上昇し、他の政党や当選回数の議員のそれとほとんど差がない。自民党の中堅以上の議員であっても再選が危ういと認識し、選挙区活動を増やしたのであろう。

また、紙幅の都合で分析結果のみを示すと、中選挙区制下に比べて、選挙区活動が得票に結びつく程度(選挙区活動の有効性)は小選挙区制下で低下している。議員個人の再選基盤が弱まる中で、議員は選挙区活動を増やすという従来のスタイルで対応している。

政策活動の活発化

次に、政策活動を見ていこう。議員の政策活動は、党内での活動だけでなく、国会や議員連盟など、多岐にわたる。例えば、各政党では日々、政策に関する会議が開催されている。自民党、民主党どちらも年間で800‐1200回程度、会議を開催している。また、議員連盟の正確な把握はなされていないが、約400の議員連盟があるとされる。(※2)

ただ、活動の中心は与野党の議員によって異なる。与党時代の自民党で見ると、個々の議員が政策決定に影響を与える最も重要な場は、政務調査会である。中選挙区制下では、特定の政策領域を中心に活動する族議員の存在が指摘されてきた。他方、野党は政策決定に直接影響を及ぼすことが難しいため、国会を軸に議員自身や政党の政策を訴えることになる。

選挙制度と議員の政策活動を考える場合、選挙制度改革によって発生する次の2点が重要である。1点目は、定数が1となり、同士討ちが解消されたことである。中選挙区制下では同じ選挙区の議員が建設族になると、他の議員は社労族になるなど、特定の政策領域をすみ分ける傾向があった。しかし、小選挙区制下では選挙区を代表する議員は1人であり、中選挙区制下に比べて、政策領域をすみ分ける必要性がなくなる。

2点目は、定数が1となり、当選に必要な得票水準が上昇することである。中選挙区制下であれば、約20%前後の支持を集めれば当選できたものの、小選挙区制下では約50%へと得票水準が上昇する。そのため、特定の団体や有権者を対象とした従来の選挙戦略に影響を与え、より広範な有権者に接近するインセンティブを生み出す。つまり、選挙制度改革後の議員は政策活動が増加するとともに、中選挙区制下に比べてさまざまな政策領域に関与するようになると考えられる。

実際に議員の政策活動は変化したのだろうか。以下では、自民党議員を中心にしつつ、政策活動の変化を示す。図-2は、地方新聞紙に掲載された、自民党議員の政務調査会および議員連盟への参加回数の平均を示している。選挙制度改革後に参加回数が上昇していることがわかる。政務調査会の開催頻度自体は1960年代後半からほぼ一定であるのに対して、各議員の党内での活動量は増加しており、政策決定過程への積極的な参加傾向が読み取れる。

次に、国会での活動は増加したのだろうか。選挙制度改革前後の比較に焦点を当てるため、1983年に初当選を果たした18名の議員(以下、83年組)と1996年に初当選を果たした24名の議員(以下、96年組)を比較してみよう。83年組の対象期間は1983年から1991年(第101回から第122回)であり、96年組の対象期間は1996年から2004年(第138回から第161回)までである。それぞれの対象期間は9年間であり、総選挙を3回経験している。(※3)

紙幅の関係から表を示さないが、96年組が83年組よりも発言総日数(平均値、以下の数値も同様)を増加させている。改革後の発言総日数は、35.3日(83年組)から56.7日(96年組)となり、約21日の増加である。特に、発言の中でも質疑と政府側での発言が増加している。質疑は選挙制度改革以前に比べて、10.3日から28.1日へと約3倍の伸びを示している。また、政府側での発言も選挙制度改革以前に比べて、5.3日から19.6日へと約4倍に増加した。国会の審議時間自体はやや減少傾向にあるものの、自民党議員の国会での発言日数は改革後に上昇している。

では、どのような委員会において議員は発言しているのか。族議員のように特定の政策領域に特化した行動パターンは変化し、選挙制度のインセンティブに沿って、さまざまな委員会での発言が見られるだろうか。表-1(文末参照)は、議員の委員会別の発言状況を見たものである。表では各議員の発言比率の高い上位2つの委員会を示している。また、農林水産、商工(経済産業)、建設(国土交通)委員会はクリーム色にしている。ピンク色の部分は、40%以上の比率があり、特定委員会への集中傾向を示している。

表を見ると、96年組の発言する委員会にはあまり偏りがない。平均から見ると、第1位の委員会の占める割合が83年組の45.3%から96年組の32.2%に、第2位の委員会の割合も22.9%から17.6%に低下している。委員会における発言パターンは、選挙制度改革後にやや分散しており、族議員型の行動パターンからの変化が窺える。

この他に、野党議員の国会での政策活動も活発になっている。議員立法や質問主意書の提出件数は改革後に急増している。例えば、質問主意書で見ると、選挙制度改革以前(1955―1995)は平均で年間43件であったが、選挙制度改革後(1996―2011)は平均で384件に上昇している。(※4) この背景には、選挙制度改革により政党の評判や政策をアピールする戦略の価値が相対的に上昇したことがあるのであろう。

昇進経路の変容

政党や政策を重視する選挙制度および有権者の増加は、党内の昇進経路にも影響を及ぼしている。議員が自らの昇進確率を上げようとすれば、複数の選択肢がある。1つ目は特定の派閥やグループに所属し、貢献することで役職に就任する機会を高める経路である。2つ目は、政策活動などの派閥に依拠しない党への貢献により、役職就任機会を高める経路である。もちろん、2つの経路は排他的ではなく、両方を同時に選択していくことも可能である。ただし、2つの選択は議員にとって違いがある。派閥やグループに所属する選択は各議員に同じ機会が与えられているものの、政策に対する知識やネットワークは各議員で同一ではない。官僚出身者や法曹関係者等は、より政策活動を行う上での優位性がある。そのため、政策に関する活動量には差がある。

中選挙区制下の自民党を見ると、派閥と当選回数に基づく役職配分が制度化していった。当選回数に応じた役職が与えられ、ほぼすべての議員が当選6回前後で大臣に就任できた。しかし、小選挙区制によって、政策や政党の重要性が高まったことは、政党内でも党の政策や評判を上昇させる議員をより人事上も優遇することにつながっている。一例として、民主党政権下の大臣・副大臣・政務官人事では、議員立法などの活動に積極的であった議員がそうでない議員に比べて、任命される確率が高かった。

選挙制度と議員行動、政党組織

このように、選挙制度改革によって、議員の再選、政策、出世目標の追求のあり方は変化している。政策や政党を中心にした選挙への変化は、議員の再選基盤を弱め、選挙区活動を増加させている。他方、同士討ちがなくなり、再選のためのハードルが上昇したことで、議員はさまざまな政策領域への関与を強め、政策活動を増加させている。さらに、政党内での昇進経路にも変化は及んでいる。

このような新たな議員行動のパターンが改革後に現れてきている。ただし、政党・政策中心になることは、自らの望まない政策を党の方針として受け入れ、また自らの再選にマイナスな影響を受ける確率も高まる。そのため、いかに造反を抑制するかということが課題になっている。

かつて、自民党では中選挙区制下で、選挙の公認に関しては現職優先、政策決定においては法案の事前審査制と全会一致制、役職配分では派閥や当選回数に重点が置かれていた。再選、政策、出世という議員が追求する目標に対して、党執行部よりも議員個人の利益により配慮した制度化を進めてきた。しかし、小選挙区制の導入、政党システムの競争性が高まる中で、いかに党としてのまとまりを維持するのか。政党組織は新たな制度化を進める必要に迫られており、その模索が続いている。

表-1 議員別の発言上位の委員会 ^

1983年初当選(1983年-1991年)

議員名 比率/第1位の委員会 比率/第2位の委員会
野呂昭彦 94.3 社会労働    
東力 92.3 農林水産    
北川正恭 86.7 文教    
衛藤征士郎 49.2 農林水産 33.3 大蔵
尾身幸次 46.4 商工 14.3 予算
額賀福志郎 45.0 商工 30.0 逓信
伊吹文明 45.0 社会労働 30.0 予算
野中広務 45.0 建設 37.5 逓信
大島理森 40.7 大蔵 22.2 内閣・議院運営
鈴木宗男 39.1 農林水産 17.4 沖縄
熊谷弘 38.1 大蔵 9.5 商工
田中秀征 37.5 大蔵 25.0 商工
二階俊博 33.3 運輸 18.5 予算
町村信孝 31.6 文教・沖縄 18.4 予算
谷垣禎一 25.0 社会労働・逓信 21.4 予算
自見庄三郎 24.1 社会労働 17.2 石炭
中川昭一 21.1 大蔵・安全保障 18.4 農林水産
加藤卓二 20.8 商工・交通 12.5 社会労働
平均 45.3   22.9  

 

1996年初当選(1996年-2004年)

議員名 比率/第1位の委員会 比率/第2位の委員会
渡辺喜美 59.6 財務 21.2 国会移転
能勢和子 53.1 厚生労働 18.8 環境
嘉数知賢 48.4 沖縄・北方 16.1 安全保障
菅義偉 40.9 国土交通 25.8 経済産業
佐藤勉 40.7 総務 20.4 国会移転
滝実 40.0 総務 11.3 予算
下村博文 37.5 法務 11.3 憲法・国会移転
田村憲久 35.6 厚生労働 19.2 法務
桜田義孝 34.3 経済産業 9.0 国土交通
河野太郎 33.9 外務 21.0 消費者問題
渡辺博道 32.5 文部科学 25.0 内閣
棚橋泰文 32.0 国会移転 28.0 厚生労働
木村隆秀 31.4 内閣 20.0 国土交通
望月義夫 30.4 環境 26.1 総務
西川公也 27.0 経済産業 20.3 内閣
大野松茂 26.7 文部科学 15.6 環境
今村雅弘 25.5 国土交通 14.9 農林水産
山口泰明 25.0 予算 18.8 環境
水野賢一 24.2 外務 12.1 環境
平沢勝栄 20.7 総務 13.8 内閣
渡辺具能 20.0 内閣 11.1 国土交通・厚生労働
大村秀章 18.6 経済産業 15.7 内閣
竹本直一 18.1 総務 15.3 経済産業
岩永峯一 15.5 農林水産 11.3 行政改革特別
平均 32.2   17.6  

注)クリーム色の部分は農林・建設・商工関連委員会を示している。ピンク色の部分は40%以上の割合を示している。

(※1)^ データは、地方新聞紙に掲載される議員のスケジュール記事から作成している。9紙9県の国会議員を対象としている。選挙制度改革以前の衆議院議員123名、改革後は176名が対象として含まれている。詳細は濱本・根元(2011)を参照されたい。

(※2)^ 約400の議員連盟のうち、民主党政権下で活動が確認されたものは、185である。

(※3)^ サンプルの選択に当たって、当選回数や過去の政党所属が影響を与えないように、連続当選を果たしている自民党議員全員を対象としている。

(※4)^ 鈴木宗男議員の提出件数は非常に多いけれども、それを除いても選挙制度改革以前より増加していることに変わりない。

参考文献

根元邦朗・濱本真輔「選挙制度改革による立法行動の変容」『レヴァイアサン』(木鐸社、2013年)、116‐142頁。

濱本真輔・根元邦朗「個人中心の再選戦略とその有効性」日本政治学会編『年報政治学2011‐Ⅱ』(木鐸社、2011年)、70‐97頁。

濱本真輔「選挙制度改革と自民党議員の政策選好」『レヴァイアサン』(木鐸社、2007年)、74‐96頁。

濱本真輔「民主党の役職配分の制度化」上神貴佳・堤英敬編『民主党の組織と政策』(東洋経済新報社、2011年)、29‐69頁。

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  • [2013.11.19]

北九州市立大学法学部講師。1982年兵庫県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。博士(政治学)。日本学術振興会特別研究員を経て2011年から現職。主な論文に「小選挙区比例代表並立制の存立基盤」(『年報政治学2009‐Ⅰ』)、「政権交代の団体-政党関係への影響」(『年報政治学2012‐Ⅱ』)など。

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