シリーズ シンポジウムリポート
未来志向の食糧支援:笹川アフリカ協会の25年
マリで農業支援に取り組む日本のNGOを訪問して

ポール・メリー【Profile】

[2012.02.21] 他の言語で読む : ENGLISH |

笹川アフリカ協会(SAA)はサブサハラ・アフリカ諸国で食糧の安全保障をめざす「笹川グローバル2000」プロジェクトを実施している。2011年11月2~4日、笹川アフリカ協会の設立25周年を記念するシンポジウムがマリの首都バマコで開催され、マリのアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ大統領や日本財団の笹川陽平会長が出席した。イギリス人ジャーナリストが現地の様子を取材した。

セリンゲ・ダムを車で超えながら北に目を向けると、水田が地平線まで広がっている。だが、肥沃なのは谷底だけで、周囲の丘陵は乾いている。

マリ南部は国内でもっとも豊かな地域だが、そこですら農業で生計を立てるのは難しい。地域の繁栄や住民の健康状態、開発の程度は、天候、穀物価格、生活必需品のコストに大きく左右される。農業による利幅は薄い。雨不足だった雨季が過ぎ去り、収穫がほぼ終わったところだ。大地は干上がって硬く、草地は色あせて緑色より砂の色に近い。

「住民たちは金儲けのために農作物を売っているのではありません」。セリンゲ村のブゥルヒマ・ドゥンビア村長はそう語る。「彼らは農業資材の仕入れや学校の授業料など、必要最低限の費用を賄わなくてはなりません。この辺りには中学校がないので、バマコなど離れた都市で中学校に通う子どもへの仕送りも必要です」

笹川アフリカ協会はこうした厳しい環境下で活動を続け、小規模農家の生産性向上や、農作物の加工・販売を支援している。具体的には、小規模農業の機械化や、少量の化学肥料で収穫量を増やすための助言などを進めている。

笹川アフリカ協会の誕生

25周年を迎えた笹川アフリカ協会にとって、マリはエチオピア、ナイジェリア、ウガンダと並ぶ4つの重点地域の1つだ。いずれの国でも地元のフィールドワーカーが協力先の村を定期的に訪れて、専門的なアドバイスを提供している。そうしたアドバイスの元となる知識と経験は、笹川アフリカ協会が数十年にわたり蓄積され、創立者自身による個人的貢献に根ざしたものだ。

笹川アフリカ協会25周年記念式典。笹川陽平日本財団会長、マリのアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ大統領をはじめとする要人が出席した。

笹川アフリカ協会は慈善活動家の笹川良一氏、ジミー・カーター元米国大統領、1960年代に南アジアで「緑の革命」を主導してノーベル平和賞を受賞した農業学者のノーマン・ボーローグ博士との先駆的な試みから誕生した。

1980年代半ば、アフリカを襲った深刻な飢饉に衝撃を受けた笹川氏は、ボーローグ博士に連絡を取り、アフリカの食糧問題を解決して将来の危機を回避したいと協力を要請した。ボーローグ氏は高齢を理由に断ったが、笹川氏は自分の方が10歳あまり年上であることを告げ、年齢のために傍観することはできないと説得した。大統領退任以降、アフリカの開発問題に関心を注いできたカーター氏の支援も得て、笹川アフリカ協会はサブサハラ・アフリカの食糧増産を使命とする組織として発足した。

農業の重要性

笹川アフリカ協会は現在、故笹川良一氏の子息である笹川陽平氏が会長を務め、父と同様の情熱を注いでこの問題に取り組んでいる。

「人間は生まれたら、生まれ落ちたその瞬間から生きる権利を持っています。そして生きるためには、食べなければなりません」。笹川氏はマリの南の国境に近いメディナ村で催された25周年記念式典で、住民とスタッフに語りかけた。「アフリカには今も、腹を満たすだけの食糧が得られない人々がいます。ここアフリカでは何百万人もの人々が、空腹を抱えて眠らなければならないのです」

道義的責務を見極めることは最初の一歩だが、最大の試練は問題に取り組むための有効な方法を考案することにある。当面の食糧不足を解決するためにも、草の根経済を将来発展させる基礎を築くうえでも、農業の生産向上が鍵を握る――。笹川アフリカ協会の創立者らはやがてそう考えるにいたった。笹川氏はインタビューでこう説明する。

「アフリカの人々の約70~80%は農村地帯に住み、食糧の生産量は自分の家族がやっと食べられる程度で、何も残りません。現金収入もなく、栄養を考えるゆとりもない場合がほとんどです」

政治家はココアやコーヒーのような換金作物のことばかり考えすぎると、笹川氏は考えている。政治家は農家の大半が頼みの綱としている自給作物を無視しがちだ。そのため笹川アフリカ協会は、新品種を導入したり、化学肥料や殺虫剤を使用したりすることで、いかに収穫量を増やせるかを小規模農家に示すところからスタートした。

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  • [2012.02.21]

フリーランス・ジャーナリスト。開発問題に関心があり、アフリカ西部・中部、マグレブ諸国、湾岸諸国の経済、政治に関する記事多数。ジャーナリストのネットワークである「インデプス・レポーターズ・グループ(InDepth Reporters Group)」に所属し、ロンドンにある外交問題シンクタンクの英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のアフリカ・プログラム準研究員。

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