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電機と自動車の融合進む:IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」
[2013.10.18] 他の言語で読む : ENGLISH |

アジア最大級のIT(情報技術)・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」が2013年10月1-5日、千葉市の幕張メッセで開催された。14回目の今年は自動車メーカーの参加が4社に増え、IT・エレクトロニクス分野と自動車分野の融合を強く印象づけた。

存在感強める自動車メーカー

CEATEC(シーテック)は最先端のITやエレクトロニクス技術がけん引する新しい社会の姿を世界に向けて情報発信する展示会。パナソニック、ソニー、シャープ、三菱電機、富士通、東芝などの電機メーカーの展示が中心だが、今回は国内テレビ生産を昨年停止した日立製作所が単独出展を見送り、存在感を見せたのは自動車メーカーだった。

フォトセッションで手を組む(左から)ITSジャパンの渡辺浩之会長(トヨタ自動車技監)、電子情報技術産業協会(JEITA)の山本正已副会長(富士通社長)、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)

11年は日産自動車と三菱自動車、昨年は日産とトヨタ自動車が出展。今年は本田技研工業とマツダが初参加し、トヨタ、日産を加えた4社となった。米アップル、韓国サムスン電子などの台頭で一般消費者向け製品の優位性が低下した日本の電機メーカーが自動車向け新技術に力を注いでいることもあり、電機業界と自動車業界の接近が加速している。

そのことを象徴したのが会場近くのホテルで行われたオープニングレセプション。フォトセッションに日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が顔を見せた。豊田会長は「車はIT化、電動化により、今や走る情報端末だ。ITとエレクトロニクスの進展により車も進化していく」とあいさつした。

今秋は、シーテックに続き、10月14-18日にITS(高度道路情報システム)の国際会議「ITS世界会議東京2013」、11月22-12月1日には「第43回東京モーターショー」が相次いで開催。フォトセッションは3イベント連携の発信を狙ったものだが、豊田会長にひときわ注目が集まり、自動車がそのリード役であることを示す形になった。

日産、自動運転技術を日本初公開

現在の自動車にはさまざまな電子部品が組み込まれ、エンジン回りもほとんどが電子化。ドライバーがクルマの操作に関わる余地が少なくなっている。「人間がハンドルを握って運転する」という最後のとりですら「電子化」の波が及ぶ。

それが今回、日産が日本で初めて公開した自動運転技術のデモンストレーションだ。会場内に日本の市街地走行を想定した特設コースを設け、実演走行した。

車両は電気自動車(EV)の「日産リーフ」をベースに製作。5台のレーザースキャナーと5台のカメラを組み込み、360度方向の道路状況をリアルタイムで認識し、ハンドルやブレーキを制御しながら自動運転を行った。

他の車に遭遇すると、人工知能(AI)が相手の動きを読み、その場に応じた適切な行動ルールを蓄積された知識の中から選び出す。信号機のない交差点への進入や駐車車両の追い越しなど複雑な運転環境も正しく状況判断し、安全走行を確保する。

日産がデモで公開した技術は、「自動運転」を可能にしつつも、あくまでも人間が乗り込んで、必要に応じて常に運転に介入できることが大前提となっている。ドライバーの運転を黒子になって支援する「高度運転支援技術」システムだ。

自動運転機能を備えた自動車は「自律走行車(autonomous car)」と呼ばれ、米IT大手のグーグルも研究開発に参入するなど、近年世界的な開発競争が進んでいる。

日産は今年8月、米国で先立って自律走行車を公開した際、2020年に自動運転技術を組み込んだ乗用車を発売すると発表している。公道実証実験を重ねた上、技術をさらに向上させ、自動運転システムを実用化したい考えだ。

日産の自動運転技術のデモンストレーション

“眠気検知”など安全運転支援技術目立つ

電機・電子部品メーカーからの出展にも安全運転支援技術が目立った。その1つが富士通の「ドライバーを見守る眠気検知技術」だ。心拍数の変化を読み取って事前に眠気を検知し、走行中の長距離トラックやバスのドライバーに注意喚起できる。既存の運行管理システムと組み合わせることで、運転手の眠気の進行リポートをまとめ、眠気の起こりやすいスポットをまとめたハザードマップ(危険度予測地図)を作成できる。

電子部品大手のアルプス電気は未来の運転席をイメージしたデモ装置を展示した。複数のセンサーでドライバーの視線や動きなどを検知・解析することで、ドライバーが次にどのような行動を起こしたいかを予測。安全・快適運転に貢献する。

自動車勢では、初参加のマツダが独自開発した新HMI(ヒューマン・マシーン・インターフェース)「ヘッズアップコックピット」を出展した。ドライバーの不注意運転要因を最小化するため、視線を下げずに見られるディスプレイや手元を目で確認しないで操作できるようにした技術で、11月から発売する新型アクセラに搭載する。

富士通によるドライバーの眠気検知技術の展示

グーグル音声認識・検索対応のカーナビも登場

スマートフォン地図アプリの充実で市場縮小に見舞われているカーナビ業界も生き残りに必死だ。最大手のパイオニアは人間の持つ感知・認知能力を活かした直感的な運転操作を実現するためのクルマ空間を提案している。

フロントガラスに道路データなどの映像情報を表示させることで、ドライバーは運転中に視線を動かさずに情報を入手できるほか、ハンドルに振動機能を持たせ、信号が変わったときなどにドライバーに知らせることが可能だ。

国内5位のクラリオンはグーグルと提携。グーグルの音声認識技術と店舗・場所情報(グーグルプレイス)を結合した「インテリジェントボイス」機能搭載の最新機種をシーテックで発表した。人がカーナビに話した言葉で検索した情報を画面に表示させることができる。今後は、英語やフランス語などに対応した音声検索サービスを海外で展開する予定だ。

クラリオンによる「インテリジェントボイス」の展示

家庭向けエネルギーシステムでも接近

今回のシーテックでは、家庭向けエネルギー管理システム(HEMS)に関する展示も電機と自動車の接近を感じさせた。HEMSは、家庭内の電気使用量を一元的に管理したり、電気製品を遠隔操作できるシステムだ。

巨大なやかんにつながったバイクにまたがるホンダの伊東孝紳社長

シーテック初参戦のホンダは小型EVを展示し、車載タブレットで家庭の照明や扇風機を点けたり消したりできるシステムを披露していたが、来場者の目を引き付けていたのはブースの中央にどんと据えられた「巨大なやかん」だった。ホンダは都市ガスで水を沸騰させて発電する家庭用コージェネレーション(熱電併給)システムを開発。開催初日に行われた伊東孝紳社長によるプレゼンテーションの冒頭には、バイクのエンジンから伝わった熱でやかんのお湯を沸かす映像が流され、ホンダの技術を活用したHEMS事業への新規参入をアピールした。

トヨタ自動車は、昨年に続いて子会社の住宅メーカー、トヨタホームとともにHEMSを展示。プラグインハイブリッド車の非接触充電システムも同時に展示し、近い将来の家庭における電気製品と自動車のトータルなエネルギー管理の形を提案した。

自動車向け技術だけではなく、家庭向けシステムでも電機と自動車の業界の垣根を越えた展示が目立った2013年のシーテック。自動車の電子化やEVの本格的な実用化によって「クルマの家電化」が指摘される中、これまで別の業界とされてきた電機産業と自動車産業が一体になる日は近いかもしれない。

文=長澤 孝昭(一般財団法人ニッポンドットコム・シニアエディター/ジャーナリスト)

  • [2013.10.18]
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