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ミャンマー和平に向け大きな第一歩

政治・外交

ミャンマーの少数民族問題を担当するアウン・ミン大統領府大臣が来日。少数民族武装勢力との和平に向けた支援を行ってきた日本政府に謝意を表するとともに、停戦合意に向けたプロセスと今後の見通しについて報告した。

ミャンマー少数民族問題担当相が安倍首相と会談

ミャンマーでは、1948年の英国領からの独立以降、人口の約7割を占めるといわれるビルマ族が政権を握り、中央集権的な統治体制を敷いて130を超す少数民族を支配してきた。これに対して一部の少数民族が反発し、各民族と政府との間で内戦状態が続いていた。 

2011年3月、テイン・セイン政権の誕生による民政移管に伴い「民主化」が加速する中、少数民族問題が最大の懸案事項となり、同政権は2011年8月以降、政府と対立関係にある16の少数民族武装勢力との和平交渉を行ってきた。これまでに14勢力と停戦合意した。

さらに、2015年3月31日、残りの2勢力であるカチン独立機構(KIO)とタアウン(パラウン)民族解放軍(TNLA)を含む全国規模停戦調整委員会(NCCT)との間で、停戦合意文書の草案について基本的な合意に達した。今後、少数民族側の各組織のリーダーが同意し、政府側と署名を交わせば、「全国停戦協定」として発効することになる。

日本政府は、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の基本方針のもと、笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表とともに、ミャンマー政府と少数民族との国内和平に向けたプロセスをさまざまな形で支援してきた。2014年1月には、少数民族との和平に5年間で総額100億円の支援を実施することを表明している。

来日した少数民族問題担当のアウン・ミン大統領府大臣は、4月14日、安倍晋三首相を表敬訪問し、日本政府の支援に謝意を表するともに、テイン・セイン大統領の親書を手渡し継続的な支援を要請した。これに対して、安倍首相は「停戦協定案の基本合意にこぎつけたテイン・セイン大統領の努力を高く評価する」と述べた。

停戦協定に向けて

4月16日、アウン・ミン大臣と笹川政府代表は、東京都内のフォーリン・プレスセンターで少数民族との和平交渉について報告する記者会見を行った。

ミャンマーで少数民族問題を担当するアウン・ミン大統領府大臣

この中で同大臣は、和平プロセスを説明するとともに、停戦協定案合意までの日本政府や笹川政府代表からの支援に謝意を示した。

今後については「停戦協定の署名後に、少数民族が求めてきた自治権拡大や民族間の平等といった問題を話し合う政治対話を始める。政治対話は、政府、軍、少数民族武装勢力、少数民族の各政党など各層の国民が含まれた形で行う予定。対話を通じて、国民全体が納得できる政治的な結果を出していきたい。平和構築により、ミャンマーの本格的な国づくりが始まる」と述べた。

また、一部内戦が続く地域について「現在、戦闘はかなり収まっており、最も激しい時に比べ10%ほどになっている。信頼関係をより強化し、内戦の終結に向け努力していく。今後は監視委員会のような組織を立ち上げ、国際機関にもオブザーバーとして参加してもらう予定である」と語った。

笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表

笹川政府代表は、「アウン・ミン大臣が、少数民族代表のいるタイに何度も赴き、粘り強い交渉を行った結果、今回の合意に至ることができた。60年以上にわたって続いてきた紛争の解決にはさまざまな困難があり、まさに画期的なこと。ミャンマー和平に向けた大きな一歩だと思う」と強調した。

また日本財団会長として、軍政時代の1970年後半から始まったハンセン病制圧活動や、少数民族地域における小学校建設など、ミャンマーに対する支援を続けてきたことに触れ、「第二次世界大戦後、食糧難の時代に、ミャンマーからのお米で日本国民は飢えをしのいだ。当時ミャンマーはアジアでも有数の豊かな国だったが、今では最も貧しい国の一つになっている。しかし非常にポテンシャルの高い国であり、テイン・セイン政権の民主化への推進によって、再び経済的にも成功する国になりうる。そうしたミャンマーを支援するのは、日本政府ならびに日本国民の大きな役目だと考えている」と語った。

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