シリーズ 国際社会とともに
アジアで社会貢献する3人の日本人
[2017.10.13]

グローバル化に伴う経済格差などの問題を解消するため、開発途上国や地域の人々を支援する国際協力の重要性が増している。日本も政府開発援助(ODA)をはじめ、さまざまな民間組織が開発途上国・地域を支援している。2017年6月30日に発表された第48回社会貢献者表彰(主催:公益財団法人 社会貢献支援財団)の受賞者の中から、アジア各地の最前線で国際協力に汗を流す3人の日本人を紹介する。

医療の届かないところに医療を届ける

認定特定非営利活動法人ジャパンハート 吉岡春菜さん

ミャンマー、カンボジア、ラオスなど東南アジア地域で、貧困層を対象にボランティアでの医療活動、現地のニーズに合わせた子ども養育施設の運営、視覚障害者の自立支援、東南アジア諸国連合(ASEAN)圏内の大規模災害に対する国際緊急救援のほか、医師・看護師の人材育成など幅広く活動しているのが、認定特定非営利活動法人ジャパンハート。2004年に小児外科医の吉岡秀人(よしおか・ひでと)さんが中心となり、設立された。吉岡代表とともに設立当初からミャンマーでの医療活動に従事する妻で小児科医の吉岡春菜(はるな)さんは、最初に現地を訪れた時の衝撃をこう振り返る。

「日本では考えられませんが、ミャンマーでは患者の経済状態によって受けられる治療に差が出てしまいます。医療者は患者の所得に見合った治療をしなければならないのです」

治療に必要な薬や医療器具は病院側が用意する日本に対し、ミャンマーは医師が必要とするものを患者が全て薬局で購入しなければならない。用意できないと診察は受けられても、治療はしてもらえない。「貧富の差が医療格差を招いているのです」と指摘する。しかし、ジャパンハートは子どもであれば誰でも無料で治療する。入院した場合の費用は患者側が一時的に負担するが、その後、ジャパンハートから戻る仕組みになっている。こうした取り組みが口コミで広がり、ジャパンハートの医療施設には遠方から貧しい小児患者たちが次々と救いを求めて訪れる。手術は大小合わせて年間2000件にも及ぶ。

とはいえ、いくら技術があっても現地で手に入らない薬や医療器具があると、患者の治療はできない。数多くの命を救ってきた半面、救えなかった命もある。少しずつ改善されてはいるものの、小児がんの場合、認可されている薬剤が日本と異なるため、現地での治療を諦めざるを得ないこともあった。それでも治る見込みのある患者は、日本で治療が受けられるよう手を尽くしている。

「貧しい人たちにとって医療機関にかかれるのは、一生のうちで1回あるかどうか。貧富の差に関係なく、治療を受けられる環境を整えたいと思います」と吉岡さん。現在、カンボジアで準備を進めている病院が完成すれば、小児医療全体がカバーでき、救命率が上げられるという。

ジャパンハートが活動するミャンマーのサガイン地区ワッチェ慈善病院 (上) 吉岡さんの夫で、代表の秀人さん(下左) ジャパンハードのうわさを聞き、遠方からやってきた親子(下右)

こうした海外での活動とともに、日本では小児がんと闘う子どもを対象に家族旅行をサポートする「すまいるスマイルプロジェクト」を展開する。医療機器を外せない子どもと家族の旅行にジャパンハートの医療スタッフが同行し、思い出づくりを支援。子どもや家族の心の中にある医療の届かない領域もケアする取り組みだ。

吉岡さんは「東京ディズニーランドに行きたいという子どもの夢をかなえてあげるためにも、私たちは医療というすべを持って、医療の届かないところへの活動を続けたいと思います」と力を込める。自身も二児の母。それだけに双方の気持ちがよく分かる。

「医療の届かないところに医療を届ける」。こうした理念を掲げるジャパンハートの取り組みは、実際の医療行為にとどまらず、その活動領域を拡大していくに違いない。

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