シリーズ 日中の架け橋
強靭な精神で日中交流を支えるNPO法人日中交流支援機構理事長・段躍中さん
[2014.05.15] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 |

ギクシャクした昨今の日中関係においても、黙々と日中交流を続け、じっと春がやってくるのを待つ段躍中さん。そんな信念の人、段さんの素顔に迫る。

段躍中

段躍中DUAN Yuezhong1958年中国湖南省生まれ。「中国青年報」の記者を経て91年に来日。新潟大学大学院博士課程を修了。96年に「日本僑報」を創刊し、98年には「在日中国人大全」を出版。99年に株式会社日本僑報社を設立した。09年度の日本外務大臣表彰を受けている。NPO法人日中交流支援機構理事長、日本湖南人会会長でもある。

日中関係揺れても怯(ひる)まない

「日本僑報社」の外観

「中日関係は確かに厳しい状況にあり、政府間で話し合いが進まないが、そんなときこそ、民間レベルでの交流が大切になってくる。必ず春はやってきます」

小さいながらも、日中関係者の間では名の知れた出版社「日本僑報社」(東京都豊島区池袋)を経営し、NPO法人日中交流支援機構の理事長を務める段躍中さんは尖閣諸島(中国名・釣魚島)や靖国参拝などの問題で揺れる日中関係について、即在に、こう言い切った。

ぎくしゃくした日中関係は中国側だけでなく、日本社会にも暗い影を落とし、“嫌中”ムードが蔓延。これが、草の根レベルで日中の交流を進めてきた人々にとって、激しい逆風となっている。だが、段さんは怯(ひる)まない。

中国からの応募は驚きの約3千作品

「日本僑報社」は最近、こうした状況の中で、中国の大学生の日本語作文コンクールの受賞作をまとめた『中国人の心を動かした「日本力」』を出版した。コンクールは「日本僑報社」と「日中交流研究所」が主催し、05年から毎年実施されているもので、今回は第9回の受賞作61本を収録した。中国からの応募作品は、何と2938本。当然のことながら、作品はすべて日本語で書かれ、「明らかな間違いや“てにをは”を少し直した程度。皆、すばらしい日本語です」と、段さんは語る。

本棚に並ぶ『中国人の心を動かした「日本力」』

この書籍のトップを飾ったのは最優秀賞(日本大使賞)に選ばれた中国の国際関係学院大学院1年、李敏さんの作品「カルタ・カンタービレ」で、「百人一首」との出会いとその恋の歌のすばらしさについて紹介している。李さんが最も好きだというのが大伴家持の和歌「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける」で、李さんは、天の川の織姫星と彦星(牽牛星)をとりもったカササギ(中国名・喜鵲)のようになって日中友好や世界友好のために尽くしたいと結んでいる。

この本の存在をメディアで知って感激した東京・八王子のおばあさんは、本を3冊購入。その後、段さんに葉書を送り、「1冊を手元に置き、残りの2冊を日本と中国の友人に贈った」という。いい話ではないか。

日本メディアの“公正さ”を知らされた投稿掲載

段さんが日本にやってきたのは33歳の時。理由は奥さまが先に日本に留学していたからだった。当時、段さんは『中国青年報』の記者で、新聞社側は訪日する段さんの才能を惜しみ、「1年間は籍を空けておく」と言ってくれたそうだ。

「最初は本当に困りました。(日本の)物価が高く、理髪店にも行けない。不審者として警察官から職務質問を受けたこともあります。貧乏で身なりもよくなく、妻の赤い自転車に乗っていたらで、さんざん調べられました。メディアで中国人の犯罪が盛んに報じられていたからです」

日本のメディアが中国人の悪い面をことさらに強調しているようにも見えた段さんは、意を決し、日本の新聞に投書したところ、それが掲載された。日本のメディアの公正さを感じたという。

公園での中国語勉強会は大盛況

段さんが来日後、最初に出版したという『在日中国人大全』

大学院に進学した際、記者経験を活かそうと日本の中国語メディアなどを研究した。当初はつたなかった日本語もみるみる上達。日本社会や文化への理解も深まり、留学を延長し、新潟大学大学院の博士課程を修了した。

また、この間に自ら出版社を設立。日中関係の本を多数、出版し、日中の理解の促進を図ってきた。西池袋にあるオフィス近くの公園で毎週日曜日の午後開催している中国語の勉強会「星期日漢語角(日曜中国語コーナー)」は既に336回を数え、多いときには100人近くが集まることがあるという。

「おカネにならない仕事が多い。経営者としては失格かもしれませんが、出版の目的はおカネだけではありませんから・・・」

“友好の架け橋”段さんを訪ねた村山元首相

こうした段さんの努力は日中両国政府からも認められ、高い評価を受けており、村山富市元首相がオフィスに訪ねてきたこともあった。

「日本に来たばかりの頃は、生ものを食べることができませんでしたが、今は大好き。毎朝、妻の作る御飯と味噌汁、そして、納豆と梅干を食べています」

段さんの予定は毎日、ぎっしり。休む間もなく、次々にこなしていく。生まれつきの丈夫さだろうが、「日本食で健康です」と段さん。日中友好の架け橋は段さんのような信念の人が支えている。

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