シリーズ 日中の架け橋
日本語で勝負する中国人若手声優—劉セイラさん
[2015.01.30] 他の言語で読む : 简体字 |

海外における日本のアニメや漫画の影響力は絶大で、社会主義・中国にも多くのファンが存在し、何と、日本にやってきて声優になった女性がいる。劉セイラさん。スタジオでは日本人のベテラン人気声優に交じって日本語で勝負。「パ、ピ、プ、ペ、ポの破裂音や(小さな)ッで表記される促音で苦労することもあります」とはいうものの、所属する「青二プロダクション」(東京・南青山)の事務所でインタビューに応じてくれた劉さんの日本語は完璧。改めて「好きこそ物の上手なれ」を実感させられた。

劉 セイラ

劉 セイラRYU Seira中国北京市生まれ。本名は劉婧犖(りゅう・せいらく)。北京外国語大学日本語科在学中の2006年4月、交換留学生として初来日。愛知県小牧市にある愛知文教大学で10ヵ月間学び、北京外国語大学卒業後の09年に再来日。日本工学院専門学校の声優・俳優科に入学。2年生のときにスカウトされ「青二プロ」に所属。11年に同校を卒業し、本格的に声優の道を歩み始め、最近はWebアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」で月野進悟役を務めている。

日本のアニメにはまった幼稚園時代

日本は今や“アイドル声優”ブーム。水樹奈々、田村ゆかり、宮野真守といった人気声優アーティストが「横浜スタジアム」「さいたまスーパーアリーナ」などでライブを開催し、1公演で数千人から1万人のファンを集める時代。声優にあこがれる若者は多く、日本人でも声優になるのは容易なことではない。この中で、中国からやってきた女性、劉セイラさんがプロの声優になり、活躍を続けている。

劉さんは“一人っ子時代”の一人っ子。両親に大切に、大切に、育てられた。日本のアニメに出会ったのは幼稚園時代だった。

「当時、幼稚園児も寄宿舎暮らしで、週末に家に帰るのですが、宿舎では毎日のように夕食後、先生がテレビで日本のアニメの『聪明的一休(一休さん)』や『圣斗士星矢(聖闘士星矢=セイントセイヤ)』などをみせてくれました。かっこよかった。それではまりました」

劉さんはこう振り返る。「他の園児たちも皆、大好きでみていましたよ」と、劉さん。子供たちにとって、面白いものは面白い。大きな瞳をさらに大きくして、幼稚園児のころにみた『圣斗士星矢(聖闘士星矢)』のかっこよさについて語る劉さんにいわせれば、アニメや漫画に国境はない。

「声優志望」で難関大の日本語科に入学

日本のアニメや漫画への劉さんの傾倒は幼稚園時代で終わらなかった。小学校のころ、いとこが日本の漫画本「圣斗士星矢(聖闘士星矢)」や「机器猫(ドラえもん)」などを譲ってくれたことで、今度は、日本の漫画本にも興味を持つようになり、声優になった今、「漫画も描いている」そうだ。

「出版できたらいいですね」

劉さんがnippon.comの読者のために書いてくれたイラスト

劉さんは、好きなことになると、まっしぐら。中学、高校の成績はトップクラスだが、卒業してやりたいことは日本のアニメ関連の仕事。そのためには「日本語を本格的に勉強しなければならない」と考え、名門難関校である北京外国語大学の日本語科を受験した。その際、高校の先生に「日本の声優になりたいから・・・」と言ったところ、先生からあきれられてしまったという。

勿論、劉さんは大学で日本語を猛勉強。ここでも成績抜群で交換留学生に選ばれ、06年4月に初来日。愛知県小牧市にある愛知文教大学で約10ヵ月間学び、日本語に磨きをかけた。

コスプレで“オタク度”アップ

「コスプレですか。どんどんやりましたよ」

劉さんの日本アニメ・漫画熱は、中学校で“オタク仲間”を見つけたことで、さらにヒートアップ。当時は、今のようにインターネットが普及していなかったため、アニメや漫画の情報専門誌「動漫時代」などを愛読。仲間と一緒にコスプレも大いに楽しんだという。

劉さんは大学卒業後の09年に再び来日。迷わず日本工学院専門学校の声優・俳優科に入学した。劉さんは、声優になるためのアフレコやアナウンスを学んだという。

「声優になるためです。(学生時代は)居酒屋、歯科医院でバイトもしました」

とはいえ、どんなに努力したからといってプロの声優になれるわけではない。

今は「食べていくのは無理」でも前進

ただ、劉さんには運もあった。ちょうど中国に戻っていたとき、日本の声優事務所としては最大手の「青二プロ」が北京でイベントを開催し、中国側の主催者から、劉さんに司会と通訳の仕事が舞い込んできたのである。

しかも、「青二プロ」の幹部が劉さんの仕事ぶりを高く評価し、日本に戻ったあと、劉さんを所属タレントとして採用してくれたというのである。

「もし、『青二プロ』に入れなかったら、日本で声優として活動することはなかったと思う。運がよかった」

しかし、それでも声優一本で食べていくのは難しい。劉さんはアニメやゲームの声優だけでなく、NHK(Eテレ)の語学番組「まいにち中国語」のナレーション、ラジオ番組のパーソナリティ、イベントでのMCや通訳など、できることなら何でもこなす。劉さんのこの真摯な態度に「だれもが応援したくなる」(青二プロ・平本正憲マネジャー)。分かる、分かる。頑張れ、劉セイラさん。

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