シリーズ 日中の架け橋
中国ネット通販市場での日本企業の強い味方、盧八味さん
[2015.02.12] 他の言語で読む : 简体字 |

急拡大する中国のネット通販市場は大きな利益が見込まれるが、参入が多く競争が激化しており、中国事情に疎い一部外資系ネット通販企業は苦戦を強いられている。こうした中で、日本の通販会社の心強い味方になっている中国人がいる。ネットを使った対中プロモーション企業「Find Japan」副社長の盧八味(ろ・はちみ)さんである。

盧八味

盧八味LU Bawei1979年中国浙江省寧波市生まれ。大連市の東北財経大学に進学したが、中退し、日本に留学。早稲田大学商学部で学び、卒業後は光通信に入社。中国やアジア向けの投資業務を担当し、2010年に光通信などが出資した「Find Japan」の副社長に就任。2013年には同社中国法人の「Power Wave(上海八微網絡科技有限公司)」を設立してCEOを務めている。

中国のネット通販市場は日本の4.6倍

中国の調査会社、艾瑞諮詢(アイリサーチ)によると、中国のネット通販の取引額はここ4年間で5.3倍に拡大。2014年の取引額は2兆7600億元(約52兆1640億円)と、日本のネット通販全体の4.6倍の規模になった。2017年には4兆1400万元(約78兆2460億円)規模となる見通しという。

しかし、中国のネット通販市場の開拓は容易なことではない。ライバルが多く、事業認可手続きの煩雑さや細かい法規制があり、日本企業にとって、単独で、中国で事業を展開するのは至難の業。「Find Japan」の役割はこうしたさまざまな問題を、日本企業に代わって、解決し、依頼企業の売上を伸ばすことにある。同社はこのため、ソーシャルメディアを活用した広告サービスを実施しており、特に、中国最大級のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)新浪微博(ウエイボー)の日本総括代理店にもなっている。

ソーシャルメディア広告で売上10倍

ソーシャルメディア広告は対象を細分化してアプローチできるのがメリット。例えば、「上海エリアに住む日本旅行に興味のある20代女性のうちiPhoneユーザーのみ対象」というように属性を絞り込んだ広告を打てる。同社クライアントの日本の家電販売大手は、日本への中国人旅行客をターゲットにした広告によって、1カ月で1500万円~2000万円も売上を伸ばした。また、大手眼鏡メーカーは、ソーシャルメディア広告をスタートしたことによって、昨年1年間でネット通販の売上が10倍に伸びたという。

ただ、盧さんは「現在、新浪微博のアカウントを持つ日本企業は約4000社あるが、十分に活用しきれていない企業もまだ多い」と指摘し、日本企業に次のようにアドバイスする。

「中国人ユーザーが読みたいと思う内容を、簡潔に的確なタイミングで発信して、初めてSNSの効果が発揮できます。成功しているクライアントの広告は、私たちが企業の代わりに新浪微博を運用したり、わが社の74万人の新浪微博フォロワーと連動したりと、さまざまな手法を駆使して効果を引き上げて行くのです」

ごみ箱から新聞、210円の牛丼がご馳走

盧さんは1979年、中国浙江省の港湾都市、寧波(ニンポー)市で生まれた。大連市にある東北財経大学に進学したが、中退。「見聞を広げたい」と一念発起し、日本に留学。語学学校を経て早稲田大学商学部に入学した。卒業後は株式会社、光通信に入社し、中国やアジア向けの投資業務に従事。その縁で、2010年、光通信などが出資したネットによる対中プロモーション企業「Find Japan」の副社長に抜擢され、今も大活躍を続けている。

が、日本留学時代は、アルバイトで生活費を稼ぐ毎日。初めて働いた居酒屋では、日本語ができず、右往左往する盧さんに、日本人スタッフからしばしば罵声が浴びせられたという。

「新聞は買うカネを節約するためにごみ箱から拾い、210円の立ち食い牛丼がご馳走だった」

しかし、そうした苦労は、就職してから大いにいきた。光通信は当時、アジアへの投資を進めており、盧さんは入社半年で投資部に配属された。

「毎日がわからないことばかりの中、成果を求められ、精神的プレッシャーは非常に大きかった」

盧さんは当時をこう振り返り、「学生時代に培ったタフさがいきた」と笑う。

入社5年目のある日、盧さんは突然、社長から呼ばれ、「これから何がしたいか」と尋ねられた。そこで、盧さんは、それまで温めていたソーシャルメディアを活用したビジネスを立ち上げたいと提案した。そうして出来たのが「Find Japan」だった。

微博に乗り込んで日本での独占権を獲得

日本を訪れる中国人観光客向けのネットによるターゲット広告

盧さんはこの会社で、他社との差別化を目指し、当時、中国でブームとなっていた新浪微博に乗り込み、競合他社を抑えて日本での独占権を勝ち取った。2011年7月のことで、事業の飛躍的発展につながった。

「自分を信じてくれた社長、そして、自分を育ててくれた会社にとても感謝しています」

盧さんの日本に対する思いは深い。だからこそ、今の日本の現状にはがゆさを感じているという。盧さんは「日本には高品質で多様性に富んだ素晴らしい商品がたくさんある。しかし、日本の商習慣や観念にとらわれ過ぎて、中国でのビジネスチャンスを逃している」と指摘する。

中国の大手動画サイトが、日本のアニメや漫画の使用について交渉するため、日本の出版社やテレビ局を訪問した。その際、同行した盧さんが見たのは日本企業の保守的対応。各社とも「海賊版対策を講じてから出直して来い」と言うだけで、中国側の提案内容も見なかったという。

「100年もの間、アジアで一番だった日本という大きな船が方向転換をするのは簡単ではない。でも、ビジネスや社会の変化が昔より速くなっている今、もうそろそろ変わらないと、取り返しがつかないことになってしまう」

盧さんの率直な感想だ。

スタッフと話し合う盧さん。新しい情報をタイムリーに発信していく

合弁で日本漫画をオンライン発信へ

盧さんが、今、目指しているのは、「日本と中国の人をつなぐパイプを太くすることだ」という。「個人と個人、企業と個人がリアルタイムでつながることができるソーシャルメディアは、これまでフェリーで行き来していたところを、高速道路でつなぐようなものだ」と盧さんは言う。

「Find Japan」は日本の漫画をオンラインで発信する電子書籍提供事業を今年からスタートさせる。日本の電子書店「イーブックジャパン(eBookJapan)」と中国大手出版会社「上海故事会文化伝媒」、そして「Find Japan」が合弁会社を設立し、正規版の漫画を中国市場で流通させるのだそうだ。勿論、海賊版対策も同時進行させる。これが中国流。

「Find Japan」という社名は、多くの人に「さまざまな日本を見つけて欲しい」と願ってつけたものだそうだ。日本企業や日本文化発信のため、これからも盧さんは頑張っていくという。

(文・写真 永島雅子)

バナー写真=新たに設立した中国法人「Power Wave」玄関前に立つ盧さん

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