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『光』(河瀨直美監督)【第30回東京国際映画祭 Japan Now】
[2017.10.25] 他の言語で読む : ESPAÑOL |

海外でもっとも知られる日本人映画監督の1人、河瀨直美。第30回を迎えた東京国際映画祭の「Japan Now」部門において、カンヌ映画祭でエキュメニカル審査員賞を受賞した『光』が上映される。

10月25日開幕の東京国際映画祭(TIFF)。1985年にスタートして以来、アジア最大級の国際映画祭に発展を遂げ、今年は第30回の節目を迎えている。

コンペティション部門のほか、アジアの新鋭監督が賞を競う「アジアの未来」、勢いのある日本のインディペンデント映画を紹介する「日本映画スプラッシュ」など、ユニークな部門が並ぶのもTIFFの魅力だ。その中で一昨年に創設された「Japan Now」は、近年公開された日本映画の中から「世界に発信したい作品」をセレクトした部門。今年は河瀨直美監督の『光』など15作品が上映される。

今回はこの『光』について、映画祭開幕に先立つ10月3日、河瀨監督が日本外国特派員協会で行った会見で語ったことを紹介しよう。

東京国際映画祭の開幕に先立つ上映会で会見を行う河瀨直美(2017年10月3日、東京都千代田区・日本外国特派員協会)©TIFF

見どころ

©2017 “RADIANCE”FILM PARTNERS/KINOSHITA, COMME DES CINEMAS, KUMIE

『光』は今年5月のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選出され、エキュメニカル審査員賞を受賞した作品。視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作する女性(水崎綾女)と、視力をほぼ失った元フォトグラファー(永瀬正敏)をめぐって物語が展開する。

前作の『あん』(2015年)に目の不自由な人のための音声ガイドが付くことになり、初めて音声ガイド制作という仕事があることを知った河瀨監督。『光』の着想についてこう語った。

「音声ガイドの仕事を知って、目の不自由な人に映像を伝えようとする言葉の美しさに感動しました。私は極力言葉で表現せず、映像の表現で映画を作っているのですが、音声ガイドはそこに言葉を足していく作業です。この仕事をしている人を主人公にすると、映画に対する愛が描けるんじゃないかと思った」

前作で描いた元ハンセン病患者に続き、今回は視覚障害者。またしても社会生活に困難を抱える人びとを取り上げた。

「私が映画に出会って人生を豊かにしてもらっていると感じるのは、自分にないものにフォーカスすることで、それを知ることができるからです。また、映画作りにおいては、称賛されるべきものを取り上げがちですが、私は世の中でスポットライトを浴びない存在に焦点を当てたい。よく分からないもの、暗闇に光を当てることで、それらがこの世界に存在できるようになると思うのです」

河瀨作品の特徴として知られているのは、役者に一定期間、登場人物と同じ環境で生活させ、役になり切ってもらうこと。この映画で永瀬正敏は、弱視と同じ視野になるゴーグルを着けて生活したという。もう1つの特徴として、撮影は完全に「順撮り」で行われることが挙げられる。つまり、脚本に書かれたシーンの順番通りに撮影が進められるのだ。

「撮影期間を経て、俳優の中にその役柄の時間が蓄積されていく。それによって出てくるエピソードは、私の頭の中にある脚本を超えて、非常にリアリティのある、その時間を生きている人たちのドキュメンタリーのようなシーンになるのです」

会見では、永瀬正敏の提案で脚本にないシーンを終盤に1つ付け足したことが明かされたが、これは相手との関係を築きながら役を生きてきたからこその主張だった。それがどんなシーンになっているかは劇場で発見してほしい。

またキャストの1人には、実際に視覚障害のある女性が音声ガイドのモニター役として起用されている。脚本になかったという彼女自身の「生の証言」が印象的だ。それによると、視覚障害者は「映画の中に入り込んで、横たわるように」鑑賞するのだという。映画への愛を描こうとした監督の心に深く響いた言葉に違いない。(編集部)

©2017 “RADIANCE”FILM PARTNERS/KINOSHITA, COMME DES CINEMAS, KUMIE

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作品情報

監督・脚本=河瀨 直美
キャスト=永瀬 正敏、水崎 綾女、神野 三鈴、小市 慢太郎、藤 竜也
製作統括=木下 直哉
プロデューサー=澤田 正道、武部 由実子
撮影=百々 新
配給=キノフィルムズ
製作年=2017年
製作国=日本・フランス合作
上映時間=102分
公開日=2017年5月27日
公式サイト=http://hikari-movie.com/
フェイスブック=https://www.facebook.com/hikari2017/

予告編

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