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第二次安倍内閣の1年
[2013.12.26] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 |

第二次安倍内閣は2013年12月26日、発足満1年を迎えた。2012年12月の衆院選、2013年7月の参院選で連続して大勝し、衆参両院のねじれ状態を解消。「決められない政治」から脱却し、矢継ぎ早に新政策を打ち出した。アベノミクスによるデフレ脱却、「積極的平和主義」を掲げた外交・安保政策など安倍カラーを強く打ち出した。安倍内閣1年の実績を焦点となったキーワードで振り返る。

デフレ脱却へ成長戦略、消費税引き上げ

〈アベノミクス〉 日本経済の再生に向け、(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略――の政策を「3本の矢」として打ち出した。これらの政策により長期デフレから脱却し、今後10年間の平均で名目国内総生産(GDP)成長率3%程度、実質GDP成長率2%の実現をめざす目標を掲げた。

第一の矢である金融政策では、日本銀行総裁に黒田東彦氏を起用し、「異次元緩和」を実施した。一連の金融政策が市場関係者から好感され、円安・株高が進行した。2013年12月時点で円相場は1ドル=104円台で推移、日経平均は1万6000円台を回復、2007年12月以来ほぼ6年ぶりの水準に達した。また12月の月例経済報告では「デフレ」の文字が削除された。

第二の矢として、弾力的な財政政策の出動による景気テコ入れ策を実施。2014年度予算の歳出額は、当初予算としは過去最大の95兆8800億円に達した。

第三の矢は成長戦略の策定と実行。官民の有識者による「産業競争力会議」で議論し、2013年6月に成長戦略(日本再興戦略)を閣議決定した。成長戦略には、(1)日本産業再興プラン(2)戦略市場創造プラン(3)国際展開戦略――の3つの行動計画と成果目標を盛り込んだ。秋の臨時国会では産業競争力強化法などが成立した。成長戦略の実行計画は2014年初めに決定する。

国家戦略特区法に盛り込んだ規制緩和や税優遇措置などはこれからだ。円安効果で輸出産業を中心に業績改善が見られるが、中小企業などでは海外からの輸入原材料の値上がりの影響もある。アベノミクス効果が日本全体に広く浸透するのにはまだ時間がかかりそうだ。

〈消費税増税〉 2013年9月、来春からの消費税引き上げ(現行5%から8%へ)を決めた。社会保障と税の一体改革をめざした消費税増税は前民主党政権時代に路線が敷かれたものだ。成長戦略のアクセルを踏みながら、消費増税のブレーキを踏む形となるため、2014年度予算案では景気の腰折れを防ぐ狙いから財政面の対策を強化した。2015年10月には8%から10%への再引き上げが予定されている。

しかし、消費税増税に伴い生活関連商品の税率を抑える「軽減税率」の導入問題など、課題は残されている。2014年度税制大綱では方向性の明示にとどまり、実施する場合の導入時期などは明記していない。この議論は2014年以降、本格化する。

「原発ゼロ」から「原発推進」へ方針転換

〈エネルギー政策〉 福島第一原発事故で揺れるエネルギー政策では、同原発からの汚染水漏れ問題が大きな課題となったが、十分な対応策を講じることはできていない。基本的には「脱原発」路線の民主党政権時代の方針から、「原発推進」にかじを切った。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」発言が、「脱原発」の野党側を勢いづかせるなど波紋を広げている。

自民党は2013年7月の参議院議員選挙で、「エネルギー政策をゼロベースで見直す」とする一方で、原発については原子力規制委員会が「安全」と判断すれば再稼働するとの公約を掲げた。このため、小泉発言を受けても「党の方針は不変」(石破茂幹事長)との立場だ。目の前の経済活動や国民生活に必要なエネルギーを供給する一方で、温室効果ガスの排出抑制に取り組まなければならないためだ。

活発な首脳外交、日中韓の関係は険悪化

〈外交・安保政策〉 「積極的平和主義」を掲げる安倍晋三首相は精力的な安保・外交政策を展開。1年間で訪問国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟全10カ国をはじめ、ロシア、トルコなど延べ29カ国に上り、意欲的な首脳外交を展開した。日米同盟関係を最重要視し、故ジョン・F・ケネディ大統領暗殺50周年の節目となる2013年10月には、オバマ政権が任命したキャロライン・ケネディ新駐日大使が着任、成熟した日米関係を両国民に印象付けた。

一方、日中韓の3カ国関係は、近年にない不安定で険悪なムードが続き、尖閣・竹島の領土問題や歴史認識問題が安倍内閣にとっても外交上の最大の懸案となっている。特に、安倍首相が就任1年となった12月26日、靖国神社を参拝したことで、中韓両国は猛反発した。習近平・中国国家主席(2013年3月14日就任)、朴槿恵・韓国大統領(2013年2月25日就任)との正式な首脳会談はまだ開かれておらず、「近くて遠い国」という異常な状態が継続している。

〈日本版NSCと特定秘密保護法〉 安保防衛政策に関しては、特定秘密保護法が秋の臨時国会で成立。創設した国家安全保障会議(日本版NSC)とともに、「車の両輪」と位置づけ、安保防衛の機密情報を米欧の同盟国と共有できる態勢を構築した。政府は12月17日、国家安全保障会議とそれに続く閣議で、今後10年程度の外交・安保戦略の指針となる初の「国家安全保障戦略」を決定した。国際社会の平和と安定に積極的に関与する「積極的平和主義」の方針に沿ったもので、同時に中国による尖閣諸島周辺での領海侵入や防空識別圏設定などをけん制している。

2020年東京五輪招致に成功、経済効果に期待も

2013年最大の明るいニュースは、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致の実現だ。9月7日にブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年夏季五輪開催都市に東京が選ばれ、日本中が沸き立った。夏季五輪は1964年の東京開催以来で、日本での五輪開催は1972年札幌、1998年長野の冬季五輪と合わせ4度目となる。

IOC総会には安倍首相も現地に乗り込み、最終プレゼンテーションを行った。五輪招致委員会や政・官・財・スポーツ界が一丸となり、「安心、安全、確実な五輪」をPRした招致活動が結実した。今後の景気浮揚効果が期待される。他方、招致活動の立役者の一人・猪瀬直樹東京都知事が医療法人グループからの資金提供問題で12月19日辞職に追い込まれた

第二次安倍内閣(2012年12月26日発足)の1年間の主な出来事

日付 出来事 説明
2013年1月16日 アルジェリア人質事件発生、日本人10人死亡 イスラム武装勢力がアルジェリア東部の天然ガス関連施設を襲撃、「日揮」社員ら日本人10人が死亡。
1月22日 政府・日銀が2%のインフレ目標を発表 政府・日銀は長引くデフレ脱却に向けて2%のインフレ(物価上昇率)目標を明記した共同声明を発表。
3月15日 安倍首相、TPP交渉への参加を表明 安倍首相は環太平洋経済パートナーシップ(TPP)交渉への参加を表明。日本は7月23日から交渉会合に正式参加した。交渉は目標の年内決着ならず。
3月16日 日銀新総裁に黒田東彦氏が就任 日銀新総裁に金融緩和論者の黒田東彦・前アジア開発銀行(ADB)総裁が就任。4月以降、「異次元緩和」に市場が反応、円安、株高が加速した。
4月5日 日米両政府が米軍施設返還計画を発表 日米両政府は沖縄県の嘉手納基地以南の米軍施設・区域の返還計画を公表。普天間飛行場は、名護市辺野古への移設を前提に2022年度にも返還可能とされた。
5月23日 日経平均が1万5600円台を回復 日経平均株価が約5年5カ月ぶりに1万5600円台を回復。
6月24日 衆院定数の「0増5減」が成立 衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法(改正公職選挙法)が成立。
7月21日 参院選で自民・公明両党が過半数獲得 第23回参院選で自民党は65議席を獲得し圧勝、公明党と合わせると参院の過半数を確保した。衆参両院で与党が多数派となり、国会のねじれが解消された。
8月20日 福島第一原発のタンクから汚染水漏れが判明 東京電力は、福島第一原発の貯蔵タンクから推計300㌧の汚染水が漏れたと発表。政府が本格的な対策に乗り出した。
9月7日 2020年東京五輪・パラリンピック開催が決定 ブエノスアイレスのIOC総会で、2020年夏季五輪・パラリンピックの開催都市に東京が選ばれる。夏季五輪開催は1964年以来、56年ぶり。
10月1日 消費税率8%への引き上げ決定 政府は消費税率を2014年4月から現行の5%から8%へ引き上げを決定。増税による景気腰折れを防ぐため、5兆円規模の新たな経済対策策定も発表。
11月23日 中国が尖閣諸島を含む防空識別圏を設定 中国が尖閣諸島を含む東シナ海に防衛識別圏を設定。日本の防空識別圏と重なり、日本政府は中国に抗議、撤回を要求。
12月16日 特定秘密保護法が与野党論戦の末、成立 外交や安全保障に関する機密情報を守るための「特定秘密保護法」が成立。政府はこれに先立ち、国家安全保障会議(日本版NSC)も創設した。
12月24日 2014年度予算案決定、歳出最大の95兆8800億円 2014年度一般会計予算案の歳出総額は95兆8823億円で、当初予算としては過去最大。国債費は23兆2700億円と厳しい財政状況が続いている。
12月26日 安倍首相が在任中初の靖国神社参拝 安倍首相は、第二次安倍内閣発足から1年のフシ目で、靖国神社を初参拝した。現職首相の靖国参拝は、2006年夏の小泉純一郎元首相以来、7年4カ月ぶり。
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