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東アジアの不協和音をよそに、着々と進む日米協議の枠組み整備

政治・外交

オバマがアジア歴訪で地域安定化への主導性を明言できた背景。いよいよ形を現した日米の共同安全保障体制。

オバマ米国大統領の来日(2014年4月23~25日)で、日米両政府は「日米同盟」の揺るぎない関係を確認するとともに、アジア太平洋地域における平和と安定のために、安保・防衛面での協力を一層強化していくことで合意した。

米国は近年、財政問題から国防予算の削減を強いられ、経済関係を深める中国から「新型大国関係」を求められるなど、東アジア地域で台頭する中国に対し影響力、発言力を落としてきている。昨年末、東シナ海の尖閣諸島上空を含む空域に中国が「防空識別圏」を設定した際に、日米の対応に温度差が見られた例のように、日本の安全保障の主軸である日米同盟が弱体化するのではという懸念が日本国内外で生まれ始めている。しかし、実務レベルでは、トップレベルの発言や各国政府発表が打ち出すイメージとはかなり異なる動きが、しかも加速度的に進んでいる。

日米協議の柱は閣僚級協議「2プラス2」

特に尖閣諸島をめぐる中国の攻勢や北朝鮮によるミサイル発射・核実験への対処をめぐり、日米の安保・防衛協力は近年、緊密化し、連携を強めている。その中心となるのは、日米安全保障協議委員会(Japan-United States Security Consultative Committee, SCC)の閣僚級の協議で、 通称「 2プラス2」と呼ばれている。メンバーは、日本の外相、防衛相、米国の国務長官、国防長官の4人である。

同委員会は重要な節目に開かれ、日米防衛協力指針(ガイドライン)見直しや沖縄米軍基地の整理・縮小に関する日米特別行動委員会 (SACO) 合意などを行ってきた。特に2013年10月3日に日本で開催された「2プラス2」では、1997 年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直し作業を2014年末までに終えることで合意するとともに、安保・防衛協力ではサイバーや宇宙領域などを含む15の分野での協力拡大、在日米軍再編協力の加速で一致した。

局長級協議は5つの枠組み

閣僚級に次ぐ局長級協議については、「日米安全保障高級事務レベル協議」「日米防衛力小委員会」「日米合同委員会」「BMD上級運営委員会」「サイバー対話」の5つの枠組みで協議が行われている。

「日米安全保障高級事務レベル協議」(Security Subcommittee、SSC)は、日米の次官・局長級のメンバーが安保の重要問題について意見を交換する場。外務省北米局長・防衛省防衛政策局長、米国から国務次官補・国防次官補などが参加する。

「日米合同委員会」(Japan-U.S. Joint Committee)は、日米地位協定の実施に関して必要な協議を行う機関。外務省北米局長・防衛省地方協力局長など、米国から在日米大使館公使・在日米軍副司令官などが参加する。

「日米防衛協力小委員会」 (Subcommittee for Defense Cooperation、SDC)は、緊急時に自衛隊と米軍が共同対処行動をとるために必要な指針など、防衛協力のあり方について研究・協議する枠組み。北米局長、防衛省の防衛政策局長、運用企画局長、統合幕僚監部代表、米国から国務次官補、国防次官補、在日米大使館、在日米軍・統合参謀本部・太平洋軍代表が参加する。

「BMD上級運営委員会」は、弾道ミサイル(BMD)脅威に対するミサイル防衛及び関連作戦の実施に当たっての構想、役割・任務を相互に明確にするための日米防衛当局間の協議機関。

 「日米サイバー対話」は、2013年5月に第1回対話が開催され、国際的なサイバー空間における脅威の認識共有、インフラ防衛の具体的な対処方法、国際的なルール作りでの日米協力を協議する機関。

審議官級で幅広く協議

閣僚級、局長級協議の政策を具体化するため、審議官クラスの協議も随時行われており、通称「ミニSSC」と呼ばれている。具体的には、①日米拡大抑止協議、②化学・生物・放射能・核防護作業部会(CBRN)、③情報保全のための日米協議、④安全保障に関する日米宇宙協議、⑤役割・任務・能力・作業部会――が設けられている。

また、宇宙に関しては「包括的日米対話」も2013年から開催されており、資源探査、防災、環境観測、科学、国家・国際安全保障などの諸分野における宇宙に関する事項や協力について、幅広く議論している。

今回のオバマ大統領訪日は、これらの日本との新たな枠組みを背景に、東アジアの安定化への関与を改めて確認、強調するという意義をもったものとなった。

カバー写真:2013年10月3日、東京で開かれた「2プラス2」後の共同記者会見。写真提供・時事

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