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新たな成長戦略、閣議決定

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アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略の改定版では、予想通り、農協改革、法人税引き下げの文言が盛り込まれた。日本の収益力はどこまで回復できるだろうか。

パワーアップした成長戦略改定版

安倍内閣は2014年6月24日、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」と、アベノミクスの成長戦略「日本再興戦略改定版」を閣議決定した。安倍晋三首相は記者会見で、「1年前に策定した成長戦略は大きな実を結んでいる。経済の好循環を一時的なもので終わらせず、景気回復の実感を全国津々浦々にまで届ける。そのために成長戦略を大胆にパワーアップした」と述べ、新たな成長戦略の実行に意欲を示した。

第2次安倍内閣は2013年6月、アベノミクスの第1の矢(大胆金融政策)、第2の矢(機動的な財政政策)に続く第3の矢として民間活力を引き出し日本経済再生につなげるための成長戦略を打ち出した。今回の改訂版は、成長戦略で積み残しになっていた課題に対応するため、政府の産業競争力会議などの場で検討してきた施策をまとめたものだ。今回は業界団体などの反発が強い農業や医療改革を盛り込んでいる。

日本の「稼ぐ力=収益力」を強化

改定版成長戦略では、経済の好循環を続き継続させるために「日本の『稼ぐ力=収益力』を強化し、同時に日本再興戦略で残された課題(雇用・人材、医療、農業等)にも対応。企業経営者や国民一人ひとりに具体的な行動を促していく」としている。

今回注目されるのは、主要国に比べ高い法人実効税率の段階的に引き下げ、国内外の企業が日本で活動しやすい環境づくりに力を入れた点だ。さらに、“ウィメノミクス”という女性の活躍を促進する諸施策や、柔軟で多様な働き方を実現するため、高度な専門職を対象に労働時間ではなく仕事の成果で評価する「脱時間給」の働き方を導入することにした。

「岩盤規制」も突き崩す

また、雇用・人材、医療、農業分野などで、これまで関係省庁や業界団体の既得権益を守ろうとする「岩盤」のように固い規制・制度の改革にメスを入れた。外国人が日本で活躍できる社会をめざし、外国人技能実習制度を抜本的に見直すほか、農林水産業を成長産業化するために、既存の農業委員会や農業協同組合(JA)などの一体改革やコメの減反政策廃止の方向を打ち出した。

安倍首相は景気の現状について、「今春多くの企業で給料がアップし、夏のボーナスは過去30年間で最高の伸びが見込まれる。有効求人倍率は17カ月連続で上昇し、7年9カ月ぶりの高水準にある。企業の収益が雇用の拡大や所得の上昇につながる経済の好循環が生まれようとしている」とし、経済の好循環を継続するためにも成長戦略の実行が欠かせないと強調した。

しかし、そうした施策の実行プランは、2014年末の予算編成や税制改正での議論、関連法案の成立を待たなければならない。

■政府が発表した「日本再興戦略」改定2014の概要(改革に向けての10の挑戦)

1、日本の「稼ぐ力」を取り戻す

①    企業が変わり、「稼ぐ力」を強化するため、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を図る。

②    200兆円以上の資金を保有する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」を念頭に、公的年金の運用を見直し、収入を増やしやすい株式での運用割合を高める。

③    産業の新陳代謝とベンチャーの加速、成長資金の供給。

④    成長志向型の法人税改革を実施。数年で法人実効税率を20%台まで引き下げる。

⑤    科学技術イノベーションの推進とロボット革命。ロボットによる産業革命については「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、2014年末までに5カ年計画を策定。

2、担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革

⑥    女性の就業率(25歳~44歳)を2020年に73%へ、指導的地位を占める女性の割合を30%程度に高める。そのために学童保育の拡充、女性就労に中立的な税・社会保障制度等を実現。

⑦    柔軟で多様な働き方の実現。年収1000万円以上の高度な専門職を対象に、働いた時間ではなく仕事の成果で評価する働き方を導入。具体的な職種などは今後審議する。

⑧    外国人が日本で活躍できる環境整備。外国人技能実習制度の対象を2015年度から期間を3年から5年に延長。国家戦略特区での家事支援人材の受け入れなど。

3、新たな成長エンジンと地域の支え手となる産業の育成

⑨    JA全中の権限縮小、中央会制度を新たな制度に移行。JA全農の株式会社化など農業改革を進める。6次産業化、輸出の促進などで農業の成長産業化を図る。

⑩    健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供。公的な医療保険を利用できる保険診療と、利用できない保険外診療を組み合わせて受信する混合診療を大幅に拡充する。

カバー写真=経済財政諮問会議で「骨太の方針」の答申を受け取る安倍首相(写真提供=時事)

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