シリーズ Japan Data
定着するか相次ぐ社外トップ起用
[2014.08.04] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | العربية |

日本の企業社会でトップ人事のあり方が変わろうとしている。社内から後継社長を選ぶのではなく、国際経験や他業種で実績を示してきた経営者をスカウトし、自社のトップに据えようという動きだ。欧米企業ではすでに一般的だが、日本ではまだ事例は少ない。日本的な企業風土の中で、外部からの社長起用はどこまで広がるだろうか。

日産やJAL再建で手腕を見せた例も

外部から経営者を迎え入れた例は以前からある。日産自動車や日本航空(JAL)、りそなホールディングス(HD)などが経営再建のため、実績のある経営者をトップに据えた。

経営危機にあった日産自動車では1999年、資本提携先の仏ルノー社から送り込まれたカルロス・ゴーン氏が日産の社長兼最高経営責任者(CEO)に就任。その後、社内改革に辣腕を振るい、業績を回復させた。独特の経営哲学を持つ稲盛和夫・京セラ会長は2010年2月にJALの代表取締役会長に無給で就任、JALの経営再建にこぎつけた。これは鳩山由紀夫首相(当時)からの要請を稲盛氏が受けたものだった。

こうしたトップ人事は特殊な例だが、ここへきて注目を集めているのは、資本関係や業種のつながりもない他社から通常のトップ人事の形で、自社の会長や社長に人材を迎え入れるケースが今年になって相次いでいるためだ。

国際性を備えた経営のプロに期待

2014年4月、老舗化粧品メーカー、資生堂の新社長に日本コカ・コーラで社長、会長を務めた魚谷雅彦氏が抜擢され、世間を驚かせた。6月には日本マクドナルド会長だった原田泳幸氏が、顧客情報漏えい事件で揺れる通信教育大手ベネッセHDの社長兼会長に就任し、危機対応に乗り出した。

サントリーHDも7月になって、コンビニエンスストア大手、ローソンの新浪剛史会長が9月から社長に就任するというサプライズ人事を発表した。サントリーが創業者一族以外から社長を迎えるのは初めて。佐治信忠サントリー会長兼社長が、旧知の新浪氏に社長就任を打診したのは3年前というが、総合商社でのビジネス経験もある新浪氏の国際感覚に着目した。

このほか、建材・住宅設備機器最大手のLIXIL(リクシル・グループ)の藤森義明社長は米ゼネラル・エレクトリック(GE)で、カルビーの松本晃会長兼CEOは米ジョンソン&ジョンソンで、それぞれ日本法人のトップを経験してきた国際派だ。

白羽の矢が当たるのは、外資系企業のトップとして実績を重ねてきた人材が多い。経済のグローバル化が進む中で、世界の市場に向けて新たな経営ビジョンや戦略を打ち出し、それを実行に移せるビジネスリーダーが求められる時代を反映している。

また、百戦錬磨の経営のプロに「外部からの目」で、自社の経営内容を客観的に判断してもらい、日本的経営体質の中に浸ってきた従業員らに発想の転換を促し、グローバル競争に勝ち残る攻めの経営をしようという狙いもあるようだ。

社外からのトップ登用、日本はまだ3% 

こうした外部からのトップ起用は、欧米企業では一般的だが、日本はまだ少ない。米国系経営コンサルティング会社「Strategy&」(日本法人名:プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー)がまとめた2013年の年次調査(世界の大手上場企業2500社を対象)によると、日本企業では新任CEOの97%が内部昇格者と圧倒的で、外部から招へいされたCEOは3%にとどまっている。米国・カナダでは外部招へいの割合は23%、西欧諸国では25%、エジプト、トルコ、南アフリカ、メキシコなどその他新興国では40%に達する。(図1、2)

この調査結果からは、ほかにも日本企業の社長人事の特徴が浮かび上がっている。新任CEOの平均年齢は61歳と最も高く、世界平均の53歳に比べて極めて高い。また、日本国外で勤務経験のある新任CEOは37%と、2012年の17%に比べ大幅に増えた(世界平均は35%)。その一方で、日本企業が2009年~2013年に日本人以外のCEOを迎え入れた割合は、わずか2%(世界平均は18%)である。

グローバル化に適応できる経営者を

他社で実績を示した有能な経営者をスカウトする手法が、日本企業に今後どこまで広がるかは不透明だが、経済のグローバル化が進展する中で、従来の社内発想の枠組みを越えた新たな経営感覚や事業戦略を模索する現経営者の明確な意思の表れともいえる。社内および社外からの登用を問わず、グローバル化時代に適応する経営者が求められていることをうかがわせる。

モノづくりを中心に日本企業が世界市場で勝ち続けた時代から今や、新興国の追い上げなど激しい競争の中で生き残りを図る時代。国内では終身雇用や年功序列が崩れて久しい。経営者らは後継社長を生え抜き社員の中から探す以外に、社外の有能な経営者のスカウトも視野に入れ始めた。外部からの社長起用が増えれば、一般社員にとって「出世してトップに上り詰める夢」は、さらに遠のくかもしれない。

(編集部・原田 和義)

カバー写真=彼らが幹部になるころ会社は? 東京・丸の内を集団で歩く新入社員たち(提供/時事)

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