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新幹線の歴史
[2014.10.01] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL | العربية | Русский |

“夢の超特急”といわれた東海道新幹線が1964年10月1日に開業してから満50年を迎えた。開業以来、乗車中の乗客死亡者ゼロという記録を誇る新幹線。その歴史はさらに戦前にまでさかのぼることができる。

戦前の幻の“弾丸列車”から新幹線へ

日本初の鉄道が新橋~横浜間に開業したのは1872年(明治5年)。線路は狭軌(レール幅1067mm)を採用した。これは当時の政府が英国から鉄道技術を導入した際、険しい地形が多い日本には狭軌が適しているという英国人技術者の助言があったことが影響した。以来、日本の国有鉄道(現在のJR)の線路は狭軌となった。

その後、日本が敷設・運営した朝鮮半島や満州(現在の中国東北部)の鉄道の規格との統一や列車の高速化のため、明治時代末期から何度となく標準軌(広軌、レール幅1435mm)への改軌が何度も計画されたが、計画は政争の具となって断念を繰り返した。1939年(昭和14年)には輸送力がひっ迫した東海道本線と山陽本線の広軌新線建設と高速列車運行が計画され、用地買収や一部のトンネル建設が進められた。“弾丸列車”と呼ばれたこの計画も太平洋戦争の戦況悪化のために断念されたが、用地買収済みのルートや着工したトンネルは戦後の東海道新幹線に活用されることになった。

開発計画に関わった親子三代

東海道新幹線建設当時の国鉄総裁で「新幹線の父」と呼ばれる十河信二は、鉄道院官僚として戦前の改軌計画に携わっていた。その十河が新幹線建設のために国鉄技師長に任命した島秀雄は弾丸列車計画にも参加していた。それだけでなく、島の父親で鉄道院技術幹部だった島安次郎も改軌計画や弾丸列車計画に深く関与。さらに秀雄の長男である島隆も国鉄技術者として新幹線車両開発に参加した。まさに島家の親子三代は、新幹線の歴史に深く関わってきた。

このように新幹線は、人的な面でも戦前の改軌・弾丸列車計画と強く結びついている。しかし、東海道新幹線開業前に建設費が予算を超過した責任を取る形で辞任を強いられた十河、そして十河とともに技師長を辞職した島は、開業式に招待されることはなかった。ただし、今は十河の業績を記念するレリーフが東海道新幹線の東京駅プラットホームに設置されている。

新幹線の成功が世界の高速鉄道開発を刺激

戦後再び東海道本線の輸送力がひっ迫して東海道新幹線構想が具体化し始めた1957年、米国での鉄道事業衰退を理由に反対の声も少なくなかった。しかし1964年の東海道新幹線開業後、乗客数は順調に推移。1970年の大阪での万国博覧会開催に向けて、列車本数の増加や16両編成化などの輸送力増強が行われた。1972年には山陽新幹線が新大阪~岡山間で開業し、1975年には博多まで全通した。博多開業の直前には食堂車が登場し、サービスの向上も図られた。

他方で1970年代には東海道新幹線の線路劣化や沿線への騒音・振動などの問題が表面化した。線路劣化については1974~82年にかけ半日程度の運休を伴う総点検や若返り工事をたびたび実施。騒音・振動についても、沿線住民による訴訟と和解(1986年)を経て、防音壁設置や車両の改善などの対策が採られていった。

新幹線はいくつかの問題を抱えつつも、乗客の安全な輸送を実現し、営業面を含め全体として成功を収めた。この新幹線の成功は、欧州諸国を中心とする世界の高速鉄道開発を刺激し、フランスのTGV(1981年運行開始)やドイツのICE(1991年運行開始)などにつながっていった。特にTGVは当時の新幹線の最高時速210kmを上回る時速270kmで運行し、新幹線以前に鉄道高速化で世界をリードしていたフランスの復権を印象付けた。その後、日本も新幹線の速度向上に取り組み、現在では東北新幹線でTGVと同じ時速320kmを実現している。

国際競争の激しい鉄道の高速化については、日本は1962年以来、超電導磁気浮上式リニアモーターカーの開発を進めている。1997年には実験線での有人走行で最高時速531kmを達成した。JR東海は、2027年の東京~名古屋間開業を目指すリニア中央新幹線の開発を推進しており、完成すれば時速505kmで運行する予定だ。

新幹線システムの輸出は成功するか

近年、新幹線を運行するJR各社は、高頻度での定時運行や乗車中の乗客死亡事故ゼロの安全性を売りに、新幹線システムの輸出に取り組み始めている。日本の新幹線システムは、在来線と分離した専用線、総合指令所による一元的な運行管理、列車の速度をコントロールする自動列車制御装置(ATC)などの特徴を持ち、既に海外での新幹線技術の活用も始まっている。

2007年に開業した台湾高速鉄道は当初欧州の技術で建設が進められたが、ICEの脱線事故や台湾の大地震を機に車両やATCなどに日本の技術が導入され、“台湾新幹線”と呼ばれる。同じく2007年に運行を開始した中国の高速鉄道車両の一部は日本の新幹線車両をベースにしている。ただ、海外で日本の新幹線システムを丸ごと導入した例はまだ存在していない。米国やインドなど新幹線技術の導入に関心を示す国々が増える中、新幹線のシステムとしての輸出が成功するか、注目される。

新幹線の歴史・将来予定年表

1939年(昭和14年) 鉄道省(当時)が弾丸列車計画(最高160 km/h、東京から下関まで広軌の新線を敷設して9時間で結ぶ計画)を策定  
1941年(昭和16年) 弾丸列車の3つのトンネルなどを着工 12月8日(日本時間)
太平洋戦争開戦
1943年(昭和18年) 戦況悪化により工事中断。ただし日本坂トンネルは工事が継続され、1944年に完成(工事が中断された新丹那トンネルとともに、後に東海道新幹線で使用)  
1945年(昭和20年)   8月15日
第2次世界大戦終戦
1957年(昭和32年)

5月 鉄道技術研究所が講演会「超特急列車 東京―大阪間3時間への可能性」を開催、社会の注目を浴びる

7月 国鉄(当時)、幹線調査室を設置

 
1958年(昭和33年)

7月 運輸省(当時)の有識者調査会、広軌の東海道新線建設を運輸大臣に提言

11月 東海道線(在来線)東京~大阪間のビジネス特急「こだま」運転開始

12月 東海道新幹線建設を閣議決定

 
1959年(昭和34年) 4月20日 東海道新幹線着工 5月
1964年東京オリンピック開催決定
1961年(昭和36年) 世界銀行による借款(8000万ドル)に調印  
1962年(昭和37年) 神奈川県内に東海道新幹線試験用モデル線が完成(開業後は営業線として使用
鉄道技術研究所で超電導磁気浮上式リニアモーターカーの研究開始
 
1964年(昭和39年) 10月1日 東海道新幹線 東京~新大阪間開業 10月10日~24日 
東京オリンピック開催
1967年(昭和42年) 山陽新幹線着工  
1969年(昭和43年) 翌年の大阪万博に向けた輸送力増強のため、東海道新幹線「ひかり」号を12両から16両編成に
1970年(昭和45年)   大阪万博開催
1971年(昭和46年) 東北・上越新幹線着工  
1972年(昭和47年) 3月15日 山陽新幹線 新大阪~岡山間開業  
1974年(昭和49年) 成田新幹線着工  
1975年(昭和50年) 3月10日 山陽新幹線 岡山~博多間開業  
1977年(昭和52年) 超伝導磁気浮上式リニアモーターカー宮崎実験線の一部が完成  
1982年(昭和57年) 6月23日 東北新幹線 大宮~盛岡間、上越新幹線 大宮~新潟間開業  
1983年(昭和58年) 反対運動により成田新幹線の工事凍結。1987年、正式に開業を断念。工事済み部分は後にJRと京成電鉄の成田空港アクセス路線などに使用  
1985年(昭和60年) 3月14日 東北・上越新幹線 上野~大宮間開業  
1987年(昭和62年) 4月1日 国鉄分割民営化、JR 7社が発足  
1989年(平成元年) 北陸新幹線着工  
1991年(平成3年) 6月20日 東北・上越新幹線 東京~上野間開業  
1992年(平成4年) 7月1日 山形新幹線(ミニ新幹線) 福島~山形間開業  
1996年(平成8年) リニア山梨実験線の一部が完成(将来リニア新幹線の営業線としての使用を想定)  
1997年(平成9年) 3月22日 秋田新幹線(ミニ新幹線) 盛岡~秋田間開業
10月1日 北陸(長野)新幹線 高崎~長野間開業
 
1998年(平成10年) 九州新幹線(鹿児島ルート)着工 2月7日~22日
長野オリンピック開催
1999年(平成11年) 12月4日 山形新幹線 山形~新庄間開業  
2002年(平成14年) 12月1日 東北新幹線 盛岡~八戸間開業  
2004年(平成16年) 3月13日 九州新幹線(鹿児島ルート) 新八代~鹿児島中央間開業  
2010年(平成22年) 12月4日 東北新幹線 八戸~新青森間開業  
2011年(平成23年) 3月12日 九州新幹線(鹿児島ルート) 博多~新八代間開業  
2012年(平成24年) 九州新幹線(長崎ルート)着工  
2014年(平成26年) 10月1日 東海道新幹線開業50年  
2015年(平成27年) 3月14日 北陸新幹線 長野~金沢間開業予定
リニア中央新幹線着工予定
 
2016年(平成28年) 3月 北海道新幹線 新青森~新函館北斗間開業予定  
2020年(平成32年)   東京オリンピック開催予定
2022年度(平成34年度) 九州新幹線(長崎ルート) 武雄温泉~長崎間開業予定  
2025年度(平成37年度) 北陸新幹線 金沢~敦賀間開業予定  
2027年(平成39年) リニア中央新幹線 品川~名古屋間開業予定  
2035年度(平成44年度) 北海道新幹線 新函館北斗~札幌間開業予定  
2045年(平成57年) リニア中央新幹線 名古屋~新大阪間開業予定  

将来予定は2014年10月現在

 

最高時速向上の歴史・予定

1957年(昭和32年) 【試験】国鉄の研究所が開発に参加した小田急の特急用電車「SE車」が狭軌鉄道の世界記録(当時)となる145 km/hを達成
1958年(昭和33年) 東海道線(在来線)特急「こだま」 110 km/h
1959年(昭和34年) 【試験】「こだま」用電車で163 km/hを達成
1964年(昭和39年) 東海道新幹線 210 km/h
1979年(昭和54年) 【試験】リニア宮崎実験線で517 km/h(無人走行)達成
1982年(昭和57年) 東北・上越新幹線 210 km/h
1985年(昭和60年) 東北新幹線 240 km/h
1986年(昭和61年) 東海道・山陽新幹線 220 km/h
1990年(平成2年) 上越新幹線 275 km/h(現在は240 km/h)
1992年(平成4年) 東北新幹線 275 km/h
東海道新幹線 270 km/h
1993年(平成5年) 山陽新幹線 270 km/h
1995年(平成7年) 【試験】リニア宮崎実験線で411km/h(有人走行)達成
1997年(平成9年) 山陽新幹線 300 km/h
【試験】リニア山梨実験線で531km(有人走行)、550km(無人走行)達成
2011年(平成23年) 東北新幹線 300 km/h
2013年(平成26年) 東北新幹線 320 km/h
2015年(平成27年) 東海道新幹線 285 km/h(予定)
2027年(平成39年) リニア中央新幹線 505 km/h(計画)

太字は営業運転

バナー写真:東京駅で行われた東海道新幹線一番列車の出発式(1964年10月1日、写真=時事)

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