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日中首脳が2年半ぶりに会談—APEC首脳会議
[2014.10.30] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | Русский |

21の国・地域が参加するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が11月10、11日、中国・北京で開かれ、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」の早期実現を目指した共同研究を始めることなどで合意。2年半ぶりとなる日中首脳会談も行われた。

関係改善の第1歩

安倍晋三首相と中国の習近平国家主席は10日、北京の人民大会堂で約25分間会談。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海を念頭に、両国の防衛当局間のホットライン設置など「海上連絡メカニズム」の早期運用開始で一致した。安倍首相は「日中両国が戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係を改善させていくために大きな一歩を踏み出すことができた」と成果を強調した。

日中関係が尖閣諸島や靖国神社参拝問題で大きく冷え込む中、両国の首脳は会談できない状況が長く続いていた。事態の打開に向け、谷内正太郎国家安全保障局長が6日に訪中して中国高官と会談。双方が尖閣諸島をめぐる問題について「異なる見解を有していると認識」し、「政治・外交・安保対話を徐々に再開」するなど、4項目からなる合意文書のとりまとめにこぎつけ、首脳会談開催の環境が整った。

安倍首相は北京で、ロシアのプーチン大統領とも会談し、「来年の適切な時期に」大統領が訪日するよう準備を開始することで一致。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領とは、APEC夕食会の場で話をした。

アジア太平洋地域の貿易・投資自由化、経済統合推進の動きは現在、TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉の推移が注目されている。APECに合わせてTPP首脳会合も北京で開かれたが、交渉妥結の目標時期が首脳声明に明記されず、先行きに不透明感を残した。

発足25年迎えたAPEC

APECは1989年、オーストラリアのホーク首相が提唱し、ASEAN各国や日本、米国、カナダなど12か国が参加して発足。欧州、北米で市場統合が進展する中、アジア太平洋地域でも経済発展のための新たな枠組みが必要との認識が広がり、設立を後押しした。米国の主導で、1993年からは年1回のAPEC首脳会議も始まった。

1994年にはインドネシア・ボゴールでの首脳会議で、先進国・地域は2010年までに、途上国は2020年までに域内での貿易・投資自由化を目指すという「ボゴール宣言」を採択。「貿易と投資の自由化」「ビジネスの円滑化」「経済・技術協力」の3本柱を中心に取り組みを進めてきた。参加メンバーは拡大し、1998年には現在と同じ21の国・地域となった。

緩やかで、開かれた協議体が特徴

APECの特徴は、この枠組みがメンバーを法的に拘束しない、コンセンサス(全会一致)方式による「緩やかな協議体」であること。このため中国のほか、台湾(APEC内の公式名称はチャイニーズ・タイペイ)、香港(同・中国香港)といった地域の参加も可能となっている。また「開かれた地域協力」を基本理念とし、APECの活動によって実現した自由化措置を域外にも適用するというシステムを採用。差別的な経済ブロックとは一線を画している。

一方、参加メンバーに先進国と途上国が混在していることに加え、「緩やかな協議体」というもともとの性格から、この枠組みがメンバーすべてを拘束する自由貿易協定(FTA)へ移行することは難しい。APECの自由化の遅さに失望したメンバーの中には新たな枠組みを求める動きも出て、これが現在のTPP交渉につながっている。

APECの主な歩み

(青字は世界の動き)

1989 APEC創設
冷戦終結、米カナダ自由貿易協定が発効
1991 中国、台湾、香港がAPECに参加
EU創設を定めたマーストリヒト条約の協議合意
1993 クリントン米大統領の提案で、首脳会議をシアトルで初開催
EU設立、GATTウルグアイラウンド妥結
1994 2020年までの域内貿易・投資自由化を目指す「ボゴール宣言」を採択
NAFTA(北米自由貿易)が設立
1995 ボゴール目標実現に向けたガイドライン「大阪行動指針」を採択
WTO(世界貿易機関)設立
1996 各参加国・地域の自由化に向けた「マニラ行動計画」を採択
APECビジネス諮問委員会(ABAC)の設立
1997 早期自主的自由化分野(EVSL)として15分野を特定
アジア通貨危機の発生
1998 ロシア、ペルー、ベトナムか参加し、21の国・地域という現行体制に
EVSL優先9分野の一括自由化について、事実上の決裂
2001 中国のWTO加盟
2004 ABACが「APECワイドのFTA」提案
2005 東アジアサミット創設
2006 米国がFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を提案
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国によるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が発効
2008 資源価格の高騰、リーマンショック
2010 横浜での首脳会議で「FTAAPへの道筋」を採択
TPP、環太平洋パートナーシップへの拡大交渉を開始
2011 欧州債務危機
2012 ロシアのWTO加盟
2013 日本がTPP交渉に参加
RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉開始

現在のAPECは貿易・投資の自由化、経済・技術協力の分野に加え、地域の「成長戦略」策定・実施の取り組みも行っている。さらに「人間の安全保障」をキーワードに、食糧の安全保障、保健、防災、テロ対策の協力などにも活動範囲を広げている。

(2014年11月12日改訂)

タイトル写真:日中首脳会談を前に握手を交わす安倍晋三首相と中国の習近平国家主席=2014年11月10日、中国・北京の人民大会堂(時事)

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