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日本の難民政策:受け入れは「狭き門」
[2015.05.06] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

地域紛争や内戦の激化で母国を追われる避難民が世界で増えている。日本は人道支援を行う国際機関に対しては十分な貢献をしているが、難民申請した外国人を難民認定して自国に受け入れることにはきわめて消極的。なぜ日本の「門戸」は狭いのか。

世界の難民数は5100万人

難民が世界的に急増している。過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭などで、シリアやイラクで数百万人規模の人びとが国外避難を余儀なくされていることなどが背景にある。難民の多くは近隣国や受け入れに寛容な欧州などに向かう。最近ではリビアからの難民船が地中海で転覆し、多数の死者を出す痛ましい事故も起きている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界全体の難民数は2013年時点で5100万人(推定)にのぼり、第二次世界大戦後で最も多くなっている。同年に世界各国で難民と認定された人は21万人を超え、世界全体では申請者の約4割が難民認定を受けている。また、2014年の先進国への難民申請者数は86万6000人と前年より45%増え、22年ぶりの高水準という。難民申請を受けた国はドイツが17万3000人と最多で、米国がこれに続く。

日本の難民認定率はわずか0.2%

これに対し、日本での難民認定(※1)は極端に少ない。日本は1981年に難民条約に加入。翌年には難民認定制度をスタートさせ、申請数は近年、アジアを中心に急増している。法務省が今年3月に公表したデータでは、日本政府に対し難民認定の申請をした外国人は2014年で5000人と、日本が難民の受け入れを開始以来、最多となった。前年より1740人多い。

国籍別難民認定申請者数の推移

  2011年 2013年
1 ミャンマー 491 トルコ 658
2 ネパール 251 ネパール 544
3 トルコ 234 ミャンマー 380
4 スリランカ 224 スリランカ 345
5 パキスタン 169 パキスタン 241
6 バングラデシュ 98 バングラデシュ 190
7 ナイジェリア 52 インド 165
8 インド 51 ガーナ 114
9 イラン 49 カメルーン 99
10 カメルーン 47 ナイジェリア 68
  その他 201 その他 456
  総数 1,867 総数 3,260

注:法務省入国管理局の資料を基に作成

しかし、政府が難民と認定したのはわずか11人。率にして0.2%にとどまっている。この難民認定数を2013年のデータで比較すると、日本は6人(申請3260人)だが、米国2万1171人、ドイツ1万915人、フランス9099人などで、お隣の韓国でも57人となっている。日本の2014年までの累計認定者数は633人。2010年から難民の第三国定住(※2)も受け入れているが、こうした日本の難民認定・受け入れ率は、先進諸国の中で最低水準だ。

難民申請には制度の悪用例も

日本への難民申請・認定数が欧米諸国に比べ極端に少ないのは、紛争地から遠いという地理的要因が第1にある。さらに、信頼できる受け入れコミュニティーが少ないことも影響している。難民認定の審査・決定を行う法務省入国管理局担当者によると、最近の難民申請者の中には「迫害を受ける恐れ」という難民定義からかけ離れ、経済的に豊かな日本での就労を目的に申請する“偽装難民”の例も多い。

実際に、「政府からの迫害」を申請理由に挙げる割合は全体の10%程度で、難民認定の趣旨を理解していないケースも多い。「2005年に384人だった難民申請者が、2014年には5000人にまで増えた背景には、こうした諸要因も関係している」(法務省入国管理局)という。

UNHCRへの拠出額は世界2位だが…

主要国に比べ難民認定数が絶対的に少ない日本に対し、「難民受け入れに冷たい」「十分な難民保護政策を行っていない」などの批判は根強い。難民支援団体などは「日本の難民認定が国際的な基準に比べ厳しすぎる」と指摘している。一方、日本は2014年で、米国に次ぐレベルの1億8161万ドルをUNHCRに拠出し、間接的な人道支援への貢献度は大きい。

こうした中、日本が難民条約に加入して30周年の節目となった2011年には、衆参両院が難民保護と難民問題の解決策に向けた継続的な取り組みに関する決議を採択し、“世界初の国会決議”として注目された。さらに、専門家による法相の私的懇談会が2014年末、難民政策の見直し案をまとめた。迫害の方法などが多様化しているのに対応した保護の仕組みを創設することを提言するなど、難民問題への取り組みを強めようとしている。

朝鮮有事の難民受け入れは想定せず

ただ国内での難民政策の議論では、朝鮮有事の際の難民受け入れなど政治外交上の微妙な問題が絡む事態については想定しておらず、現状で議論が尽くされているとは言えない。アジアを中心とする各国の難民受け入れをどこまで広げ、国内に受け皿となる基盤をつくれるのか。先進国の一員として、難民救済という人道支援で日本の本気度が問われている。 

文・原田 和義(編集部)

タイトル写真:「第三国定住」の枠組みで日本に移住するため、来日したミャンマー難民の家族=2013年9月、成田空港(時事)

(※1)^ 難民認定 難民条約が規定する「難民」とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団に属していることなどを理由に迫害を受ける恐れがあり、その国を既に離れている人」と定義される。難民認定を受けると、永住許可のほか、国民年金や福祉手当などの受給資格が得られる。

(※2)^ 第三国定住 すでに難民キャンプで生活するなどして難民となっている人を、別の国が受け入れる制度。UNHCRは「自主帰還」「庇護国への定着」とともに、「第三国定住」を難民保護に必要不可欠な手段、と位置づけている 。

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