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「和牛」—「WAGYU」の登場で新時代に突入
[2015.10.15] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | Русский |

神戸ビーフや松阪牛に代表される和牛は、日本の貴重な宝。しかし、最近は和牛の遺伝子を持つ外国産WAGYUが登場し、両者の違いが分からなくなりつつある。日本政府は今のところ、外国産WAGYUを国内で「外国産牛」と位置づけ、「和牛」とは呼ばせない方針だ。日本の「和牛」とは何か。

和牛の定義:黒毛和種など4品種

農林水産省が2007年に発表したガイドラインによると、「和牛」と表示できる牛肉は、以下の4品種とその交雑種であることが家畜の登録制度で確認でき、かつ牛トレーサビリティ制度により国内で出生、飼育が確認できることが条件となっている。

黒毛和種
(全国)
霜降り肉を生産する能力が高く、和牛全体の95%を占める。
褐毛(あかげ)和種
(熊本県、高知県)
脂肪交雑が適度で、赤身が多い。熊本和牛「あか牛」、「土佐あか牛」など
日本短角種
(岩手県、青森県、北海道)
東北北部原産で、古くは南部牛と呼ばれていた。放牧適性が高い
無角和種
(山口県)
角がない。肉用に重点をおいて改良が進められたが、現在の飼育頭数はきわめて少ない

黒毛和種の牛

日本短角種の牛

この結果、オーストラリア産や米国産のWAGYUが輸入されても、それは「外国産和牛」と表示できず、単に「外国産牛肉」となる。

霜降りの度合いが格付けに重要

日本における牛肉の生産量(部分肉、14年度)は35万2000トンで、うち和牛は16万4000トン。残りは乳牛、交雑種などだ。

国産の牛肉は社団法人日本食肉格付協会が格付けを行っている。牛肉の格付けには2つの等級が使われる。1つは歩留まり等級で、もう1つは肉質等級。歩留まり等級はA、B、Cの3段階に分かれ、Aが最も良く、肉質等級は5、4、3、2、1の5段階に分かれ、5が最も良い等級となる。

・歩留まり等級 高A―B―C低
生体から皮、骨、内蔵などを取り去った後の枝肉(えだにく)の割合が標準より多いものがA、標準なのがB、標準より少ないものがCとランク付けしている。同じ体重でもたくさんの肉が取れるほうが良いとされる。

・肉質等級  高5―4―3―2―1低
評価は「脂肪交雑(霜降り)」、「肉の色沢」、「肉の締まりとキメ」、「脂肪の色沢と質」の4項目について、5(かなり良い)、4(やや良い)、3(標準)、2(標準に準ずる)、1(劣る)の5段階で行われる。4項目の総合的な判定から肉質等級が決まる。中でも霜降りの度合いが評価の大きなウェートを占めている。赤身であれば、必然的に格付けは低くなる。

現在の日本の格付けはむしろ供給業者からの評価で、肉の「おいしさ」を求める消費者の評価とは別物とも言える。肉のおいしさは「香り」や「うま味」、「食感」などや食べ方、嗜好などによっても違ってくるからだ。牛肉を扱うプロの間でも、「霜降り度があまりにも高くなりすぎた結果、以前に比べると和牛の味は薄くなった」との指摘も聞かれる。

大小合わせて300ものブランド

国内の和牛産地では、それぞれ「品種」や「原産地」「肉質」などの基準を定め、認証制度をつくるなどして“地元の和牛ブランド”のレベルアップ、プロモーションに余念がない。消費者の信頼を獲得し、ブランドイメージが上がれば、商品価格の維持・上昇につながる。現在、国内には大小合わせて約300のブランド和牛がある。

最高級のブランドとしては「神戸ビーフ」(兵庫県)、「松阪牛」(三重県)、「近江牛」(滋賀県)、「米沢牛」(山形県)などが挙げられる。「仙台牛」(宮城県)は和牛の中で唯一、格付けA5ランクの肉だけが名乗れるブランドで、同じ産地のA4、A3クラスの肉は「仙台黒毛和牛」と別の名前が付けられる。

和牛の輸出促進に向けた取り組み

日本政府は2020年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に倍増させる目標を立てている。うち牛肉は、12年の50億円を5倍の250億円(4000トン)に増やすことを目指している。

和牛の輸出は2001年の牛海綿状脳症(BSE)、10年の口蹄疫の発生などで停止していたが、12年に米国およびカナダ向けが解禁されたのに続いて、香港、アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール、タイ向けも輸出可能となった。昨年にはメキシコ、フィリピン、ニュージーランド、ベトナム、欧州連合(EU)、カタールにも輸出できるようになった。今年に入って、認定を受けた兵庫県内の2施設という条件付きながらロシアも和牛の輸入を認めた。

和牛統一マーク

中央畜産会は2007年に、「和牛統一マーク」を制定。 “本物の和牛”を選ぶ際の目印にと、日本から海外に輸出される和牛牛肉にこのロゴが付けられている。

日本は13年に中央畜産会に輸出戦略検討委員会を設置し、オールジャパンとして輸出促進に取り組んでいる。政府は今後、中国など牛肉需要の拡大が見込まれる国に対しても輸入解禁を求める働き掛けを強める考えだ。

文・長澤 孝昭(編集部)

バナー写真:「第64回松阪肉牛共進会」で最高賞に輝いた牛。競り市では2300万円で落札された=2013年11月24日、三重県松阪市(時事)

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