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2015年の旅行収支、“爆買い”外国人旅行者で黒字1兆円台へ

経済・ビジネス 社会

円安の「効果」もあってか、旅行収支が劇的に黒字化したことが財務省の集計で明らかになった。

日本人海外旅行減、訪日外国人増で初の黒字転換

財務省が8日発表した国際収支状況統計(速報)によると、2015年1~10月の旅行収支は9058億円の黒字となり、通年で初めての黒字転換がいきなり1兆円の大台乗せとなる見通しとなった。

同収支は、現在の統計を取り始めた1996年から赤字を続けており、黒字転換すれば20年で初めて。統計の開始が早い財政年度ベースでは2014年度に55年ぶりの黒字転換している。

サービス収支の中で2013年に黒字が同じ大台に乗せた知的所有権収支(今年1~10月は1兆9190億円の黒字)とともに、5年連続が見込まれる貿易収支の赤字を相殺する2本柱として各方面から期待されている。

旅行収支は訪日外国人が日本で消費した「収入」から、日本人が海外で消費する「支出」を除いた差引額。これまで一貫して赤字が続いてきたが、支出面では円安などで海外旅行する日本人の数も現地での消費額も減る一方、収入面でも同じ円安を背景として訪日外国人が政府目標(2020年に2000万人)を今年前倒し達成しそうな勢いで増え、「爆買い」と呼ばれる中国人観光客を中心とした旺盛な買い物需要もあった。このため、月ベースでは昨年10月以降13カ月連続で黒字が続いてきた。

知的所有権収支も着実な伸び

他方、特許使用料など日本企業が海外とやり取りする知的財産等使用料の収支である知的所有権収支は、企業による海外進出と海外生産の広がりを背景として2003年に黒字転換(黒字幅は1491億円)してから着実に黒字幅を広げたが、10年かけて1兆3422億円(2013年)とようやく1兆円台の大台に乗せたばかり。しかし、この知的所有権収支もアベノミクス後の円安効果もあって近年さらに勢いを増し今年は2兆円台乗せをうかがっている。

この結果、1~10月の海外とのモノ・サービス、投資の取引状況を示す経常収支は14兆5700億円の黒字。同期の貿易収支は輸出62兆9838億円に対し輸入63兆5344億円で差し引き5506億円の赤字となった。サービス収支の中の二つの黒字が貿易赤字を相殺し、貿易・サービス収支全体の赤字拡大にブレーキをかける構図が形成されている。

「日本経済の下支え」に期待——観光庁

観光庁は今年1兆円台をうかがう旅行収支の黒字について、「最終的に通年でいくらになるかは予断を持って答えにくい」と慎重ながら、「これだけの黒字があるということは外国人旅行者が増え、日本での食事、買い物を楽しんでいただいているということで良いことだ」(観光庁国際観光課)と歓迎した。

そのうえで、なかなか浮揚する気配がみえない日本経済に対して「下支えという好影響も与えている」と評価、「外国人旅行者の増加が経済にいい影響を与えているのでこれを一過性に終わらせないで全国津々浦々に呼び込むようにしたい」とコメントした。

執筆=三木孝治郎・nippon.com編集部

カバー写真=財務省

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