シリーズ Japan Data
2015年の経常黒字、5年ぶり増の16兆円
原油安で貿易赤字縮小、爆買いで旅行収支が初の黒字
[2016.03.10] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL |

2015年の国際収支統計は、原油安による貿易赤字の縮小と旅行収支の黒字転換などから、経常黒字が16. 6兆円と大きく改善した。

黒字幅は5年ぶり、大震災前の高水準

財務省が発表した2015年の国際収支速報によると、海外との総合的な取引状況を表す経常収支は16兆6413億円の黒字となり、黒字幅は前年の6.3倍で5年ぶりの高水準になった。

1)原油安による貿易赤字の縮小 2)旅行収支の53年ぶりの黒字転換–などが影響した。この結果に対して国内のメディアは「黒字の構造は様変わりしている」(朝日新聞)、「経常黒字大国の復活。日本の稼ぐ力が輸出から投資やサービスに移っていることが鮮明になった」(日本経済新聞)ととらえ、「円安政策だけに頼るのではなく、円高に耐えられる競争力構築が求められる」などと分析した。

2015年の国際収支状況

 (単位億円) (前年比%)
経常収支 166413 629.00%
貿易収支 -6434 6.19%
輸出 751773 101.45%
輸入 758207 89.73%
サービス収支 -15628 50.74%
第1次所得収支 207767 114.66%

出所:財務省統計から作成

経常黒字は2010年(19.3兆円)以降は減少が続き、14年は2.6兆円と過去最小に落ち込んでいた。15年は5年ぶりの増加で東日本大震災前の水準に近づく水準まで回復した。

震災前は輸出による貿易黒字が経常黒字をけん引してきたが、震災後は海外への証券投資や海外子会社からの配当金などが支えるように構造が変化している。

15年の経常収支のうち、貿易収支は6434億円の赤字。赤字額は前年(10兆4016億円)に比べ16分の1に減少した。アベノミクス下の急激な円安にもかかわらずその効果を上回る原油安の大波を受けて輸入額が75兆8207億円と前年比10.3%減少したことが大きく影響した。輸出額は自動車や電子部品が伸び、75兆1773億円と1.5%増えた。

旅行黒字1.1兆円、知財2.4兆円がサービス収支改善支える

これに対してサービス収支は1兆5628億円の赤字。赤字額は49.3%減った。サービス収支の赤字は96年の67兆円から長期的に縮小傾向にあり、過去最小を記録した。

収支の改善を主導したのが1兆1217億円と1962年以来初の黒字となった旅行収支だ。

訪日外国人数が2020年の政府目標(年間2000万人)に肉薄する1973万人と過去最高を更新し、円安で日本人による海外での消費が減少したため収支が大幅に好転した。

同じくサービス収支のうち、特許使用料などから成る知的財産権等使用料も大きく伸び、比較可能な96年以降で最大の2兆4034億円となり旅行収支との2本柱に成長した。

経常黒字全体を支えるとされる第1次所得収支は黒字額が前年比14.7%増の20兆7767億円となり、データを比較できる85年以降で最も大きくなった。日本企業による海外証券投資や海外子会社からの配当金等を含む同収支は2004年以降10兆円台で上昇傾向をたどっていたが15年に初めて20兆円の大台に乗せた。

海外M&A活発化で伸びた第1次所得収支、今後も「高水準を維持」へ

第1次所得収支の伸びには 1) 企業による海外でのM&A(合併・買収)活発化や2) 海外証券への投資増——が貢献した。M&A助言会社のレコフによると、2015年の日本企業による海外M&Aは伊藤忠商事による中国最大の国有企業グループ「中国中信集団」への株式取得や保険業界を中心とした金融関係の大型案件が相次いだことから前年比93.9%増の11兆2585億円と過去最高を更新した。

みずほ総合研究所は最近の経常収支の動向について、「輸出の回復ペースは緩慢だが、原油安等により輸入金額が低下し、貿易収支は小幅の赤字~黒字で推移している。輸出の大幅増は期待しづらいものの、原油価格が低位で推移するとみられるため、当面の貿易収支は小幅の赤字~黒字の推移が続く」と分析。

旅行収支については「2015年は中国人訪日客の増加が顕著だったが、これはビザの緩和が主因で2016年は伸びが鈍化する」と予想。為替相場が依然として円安水準にあるため第一次所得収支は高水準を維持することなどから、「経常収支は高めの黒字が続く」(主任エコノミスト坂中弥生氏)と予測している。

文・三木 孝治郎(編集部)

タイトル写真:訪日外国人旅行者数の推移を説明する石井 啓一国土交通大臣(2016年1月19日)

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