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災害時、最大14万人の応援部隊派遣:首都直下地震で

社会

政府は2016年3月29日、首都直下地震が起きた場合の応援救助部隊派遣や物資輸送など、発生直後の応急対策を盛り込んだ活動計画をまとめて公表した。

被災地の東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県に、最大で14万人の警察官、消防士、自衛隊員を全国から派遣。被災自治体からの要請を待たずに、地震発生直後から国などが支援物資(食料や毛布など)の調達輸送に着手し、発生から3日間で被災都県に設けた8カ所の拠点に届ける「プッシュ型支援」を行う。救助・医療活動、消火活動、物資輸送をスムーズに行うために「緊急輸送ルート」を設定し、東京都心には8方向からのルートを確保することも決まった。

死者2万3000人、帰宅困難者800万人を想定

東京など南関東地域は、これまでにも繰り返し大きな地震が発生。1923年の関東大震災(マグニチュード7.9)では10万人以上の犠牲者が出た。フィリピン海プレートの沈み込みによって、南関東でマグニチュード7クラスの地震が発生する確率を「今後30年で70%」と予測する公的な研究もある。

今回は、都心南部を震源とするマグニチュード7クラスの地震発生を想定。都心部は震度6強の強い揺れに襲われ、最悪の場合、死者は約2万3000人に上ると想定した。

要救助者は最大7万2000人。火災で焼失する建物は最大41万棟で、倒壊も含めると最大61万棟の建物被害があると想定した。

帰宅困難者は最大800万人で、東京都だけでも最大490万人に上ると想定。避難所への避難者は最大720万人で、今後、一時滞在施設の確保を進めないと多くの人が行き場を失うおそれがあるという。

要請待たず、被災地に緊急物資輸送

応急対策活動計画では、4都県以外の全国から警察、消防、自衛隊合わせて最大14万人を被災地に派遣。域内の警察官、消防士、消防団員を含め、最大34.7万人を動員して救助や救急、消火活動にあたる。このための人員、物資輸送は、航空機450機、艦船・船舶330隻を活用してあたる。

応援部隊

警察 1万4000人 (域内動員8万人)
消防 1万6000人 (域内動員12.7万人)=消防団員含む
自衛隊 11万人
全体計 最大34.7万人
航空機 450機
船舶 330隻

医療面では、4都県にある150の災害拠点病院を最大限活用。全国1400の災害派遣医療チーム(DMAT)を、事前に指定した拠点に空路と陸路で送り、臨時の医療施設を設置する。

被災地の自治体、各家庭で備蓄している物資は地震発生から数日で枯渇すると予想されることから、緊急物資については被災地の要請を待たずに行う「プッシュ型支援」を実施。発生4日目から7日目までに、必要な物資(食料5300万食、毛布34万枚、おむつ416万枚など)を緊急輸送する。

要請なしで被災地に届ける物資

食糧 5300万食
毛布 34万枚
育児用調製粉乳 20トン
おむつ 416万枚
簡易/携帯トイレ 3150万回分
(注:発生から4~7日目の必要量)
飲料水 22万立方メートル
(1~7日目まで。水道事業者が対応)

被害が甚大になると予想される都心部へのアクセスを確保し、人員、物資派遣が円滑に行われるよう、都心に向けた8方向の幹線道路と、その放射状の道路を結ぶ環状幹線道路を「緊急輸送ルート」とし、一般車両の交通規制も実施される。

「むやみに帰宅しないで」と呼びかけ

4都県に加え、東京への通勤者が多い茨城県も含めて最大800万人と推計する帰宅困難者については職場や学校、近くの一時滞在施設に数日間とどまる「一斉帰宅の抑制」を徹底するよう呼びかける。

政府は今後、首都直下地震対策で、以下の点を国民に要請していくという。

【平常時】
  • 電話の「伝言ダイヤル」など、安否確認手段を確認しておくこと
  • 最低3日分の水・食糧・生活必需品の備蓄
  • 家具の固定、「感震ブレーカー」設置などの地震対策
【地震・災害発生時】
  • 火災発生時の早目の避難
  • むやみに移動しない、自動車を利用しないこと
  • 物資の買い占めをしないこと
バナー写真:大阪府堺市の警察施設で、倒壊した建物内での救助活動を想定した訓練をする警察官ら=2016年1月撮影(時事)

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