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LCC(格安航空会社)、国内線でシェア1割に

経済・ビジネス

簡素なサービスと徹底した効率化による低価格を売り物にしたLCC(格安航空会社)が、日本でもようやく根付きはじめた。国土交通省によると、国内線のLCCシェアは2015年10月(速報値)で9.3%。2015年平均(1~10月)で10.1%と、運航開始から4年余りでシェア2ケタに達する勢いだ。

Peach皮切りに続々参入

日本の旅客航空輸送は長らく、フルサービスエアラインと呼ばれる日本航空と全日空、日本エアシステム(2004年に日本航空と経営統合)の3社が国内線をほぼ独占。1990年代後半からの規制緩和でスカイマークやAIR DO(エア ドゥ)などの新規航空会社が参入し、低運賃でLCCに近いビジネスを展開した。しかし、大手も各種の割引運賃を導入して対抗。新規参入組の経営は多くの場合、低迷した。

政府がさらなる航空自由化にかじを切ったのは2007年。第1次安倍政権の「アジアゲートウェイ構想」に基づき、韓国やタイなど外国航空会社の首都圏以外の空港への自由乗り入れを認めたことが契機となった。2010年には日本航空の経営破たんで国内の地方路線存続が危ぶまれる事態にもなり、LCCの参入促進が明確な政策となった。

国内航空で自ら「LCC」と銘打ったのは、2012年3月に運航を開始したピーチ・アビエーションが第1号。この年にはジェットスター・ジャパンなども運航を開始し、「日本のLCC元年」と言われた。

日本で国内線を運航するLCC

拠点空港 使用機材 運航開始
ピーチ・アビエーション 関西、那覇、成田 エアバスA320 2012年3月
バニラ・エア 成田 エアバスA320 2013年12月
ジェットスター・ジャパン 成田、関西 エアバスA320 2012年7月
春秋航空日本 成田 ボーイング737 2014年8月
エアアジア・ジャパン 中部 エアバスA320 2016年夏ごろ(予定)
(以下は日本の新規参入航空会社)
スカイマーク 羽田、神戸 ボーイング737 1998年9月
AIR DO(エア ドゥ) 羽田、新千歳 ボーイング767、737 1998年12月
ソラシドエア 羽田、那覇 ボーイング737 2002年8月
スターフライヤー 北九州 エアバスA320 2006年3月

専用ターミナルも整備進む

国土交通省によると、2012年に2.1%だったLCCの国内線旅客数シェアは2013年に5.8%と急上昇。2014年には7.6%となり、国際線のシェア7.5%を上回った。

関西空港では2012年、成田空港では2015年に、LCC専用ターミナルの供用を開始。簡素化した施設で航空会社のコスト負担を抑制することで、LCCの運航増加を後押ししている。関西空港は新たなLCCターミナル(国際線専用)を2017年春にオープン予定。中部空港(名古屋)もLCCターミナルの建設を決めた。

成田、関西、中部が主な拠点

大手航空や既存の新規参入会社と異なり、日本のLCCは国内線が一極集中する羽田空港(東京)に発着枠がなく、成田空港や関西空港を主な拠点にしている。これは近年増大する外国人旅行客にとって、日本到着後の移動手段として“使い勝手がいい”とも言える。

関西空港を主な拠点とする

ピーチ・アビエーション は、全日空や香港の投資会社が中心となって設立。国内線14路線のほか、関西、羽田から台湾、韓国などへ国際線9路線を運航する。全日空からは独立した事業運営をしており、格安運賃で若者層など新たな需要を掘り起こした。

ジェットスター・ジャパン は、日本航空とカンタス航空(オーストラリア)、三菱商事などが主要株主。成田、関西の両空港を拠点に国内17路線を運航する。日本と香港、台湾を結ぶ国際線も手がけている。

バニラ・エア は全日空の連結子会社で、国内線は成田から札幌、奄美、那覇の計3路線を運航。成田から台湾、香港への国際便もある。

春秋航空日本 は、中国のLCCである春秋航空の系列。成田と広島、佐賀を結ぶ2路線を運航する。国際線は成田―武漢、成田―重慶の2路線で日本と中国を結ぶ。春秋航空(中国)は中国からアジア各都市にさまざまな路線を展開しており、そのネットワークを使った事業運営が強みだ。

エアアジア・ジャパン は、マレーシアの格安航空会社エアアジアが主導し、楽天などが資本参加して2014年に設立。中部空港を拠点とし、2016年夏に中部―札幌、仙台の国内2路線、中部―台北の3路線が就航予定。その後は中国や米ハワイなどへの就航も視野に入れている。

文・nippon.com編集部

バナー写真:成田空港の格安航空会社(LCC)専用「第3ターミナル」で手を振る(右から)バニラエア、ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本の各航空会社の職員=2015年3月(時事)