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「月80時間以上の残業」2割超の企業で発生—初の「過労死白書」まとまる
[2016.11.10] 他の言語で読む : ENGLISH | ESPAÑOL | Русский |

過労死の実態を政府がまとめた初めての白書「過労死等防止対策白書」が、10月7日に閣議決定された。厚生労働省が新たに実施した調査で、「過労死ライン」とされる1カ月80時間以上の残業をした正社員がいる企業が23%に上る結果が出るなど、長時間労働がなかなか解消できない実態が改めて浮き彫りになった。

長時間労働による過度の肉体的、精神的疲労が心身の健康を損ない、ついには死に至る「過労死」。日本では1980年代後半から社会問題となり、2014年に議員立法で「過労死等防止対策推進法」が成立、施行された。今回の白書は同法で定められた政府による初の国会報告で、過労死の現状や、防止に向けた対策の策定・推進状況がまとめられている。

“認定”過労死は年180人超:「氷山の一角」との声も

厚生労働省は過労死・過労自殺の認定基準に照らし、一定の要件を満たした過労死・過労自殺を労働災害に認定している。白書によると、2015年度中に脳内出血や心筋梗塞など、脳・心臓疾患で死亡して労災保険支給が決定されたのは96人、また精神疾患による自殺者(未遂を含む)で支給が決定されたのは93人だった。


脳・心臓疾患による死亡者の支給決定件数は、2000年代に比べると若干減少している。一方、精神疾患による自殺者の支給決定件数は徐々に増える傾向にある。とりわけ、「業務上に強い心理的負荷がかかったことで、うつ病など精神障害を発病した」とする労災請求件数は、2015年には1515件に達した。1999年の請求件数は155件で、この16年で10倍も増加している。

白書では、警察庁や内閣府のデータとして、勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者が2015年に2159人に上ったとも報告している。この数字を見ても、“認定”過労死の数は「氷山の一角」に過ぎないことがうかがわれる。

15年に労災認定されたケースを見ると、脳・心臓疾患での死亡者のほとんどが月80時間以上、精神障害による自殺者の多くが月100時間以上の残業をしていた。過労自殺者93人のうち、月160時間以上もの残業をしていたケースが18人にも上った。

正社員の労働時間、高止まり続く

日本の労働者の年平均労働時間は14年で1741時間。1900時間を超えていた1995年から徐々減っているが、欧米諸国と比べるとまだまだ差がある。また、労働時間の減少は主にパートタイム労働者の比率が上ったことによるもので、一般労働者の総実労働時間は2000時間前後で高止まりしている。

厚生労働省は2015年12月から16年1月にかけ、企業約1万社(回答は1734社)と労働者約2万人を対象とするアンケート調査を実施。それによると、1年間に月80時間を超える残業をした正社員がいる企業は22.7%に達した。

月80時間の残業は、労災認定の目安になる「過労死ライン」といわれる。業種別にみると、情報通信業(44.4%)、学術研究、専門・技術サービス業(40.5%)、運輸・郵便業(38.4%)、複合サービス業(34.1%)、建設業(30.8%)などの割合が高かった。

労働者調査では、正社員の36.9%が高いストレスを抱えていることが判明。残業時間が多いほど比率は上がり、週20時間以上残業する人では54.4%が「ストレスが高い」と判定された。

これとは別の2013年の調査(厚生労働省「労働者健康調査」)では、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は52.3%。その内容(3つ以内の複数回答)を見ると「仕事の質・量」(65.3%)が最も多く、「仕事の失敗」「対人関係」などを大きく引き離している。

文・ニッポンドットコム編集部

バナー写真:大手広告代理店・電通の元社員、高橋まつりさん(当時24歳)の労災認定を受けて記者会見する母親の幸美さん。高橋さんは東京大学を卒業し、入社1年目の2015年12月に自殺した。「過労自殺」の認定は大きな波紋を呼び、東京労働局はその後、電通本社などを立ち入り調査した=2016年10月7日、東京都千代田区(読売新聞/アフロ)

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