それぞれの「スマホ敗戦」——ソニー・NTTドコモ・任天堂、2014年中間決算
[2014.12.02] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL |

ソニー、NTTドコモ、任天堂。いずれも日本を代表する企業だが、スマートフォン(スマホ)戦略に手こずり、2014年度中間連結決算(4-9月)では不振に泣いた。

中国勢の安値攻勢に沈むソニー

ウォークマン、ハンディカム、VAIO(バイオ)などかつて世界市場を席巻した「ソニーブランド」。しかし、最近では社内からも「何を作っている会社なのか分からない」との声が聞こえてくる。

ソニーの最近の業績不振は目を覆うばかりだ。3694億円の過去最高益を上げたのは6年前の08年3月期。原動力となったのは液晶テレビ(BRAVIA)、パソコン(VAIO)、デジタルカメラ(サイバーショット)などの強力ブランドだった。しかし、翌年から12年3月期まで4期連続で赤字。13年3月期にはいったん黒字転換(415億円)したものの、14年3月期には再び1283億円の大幅赤字に転落した。なぜこれほど急激な不振に陥ったのか。

パソコン事業。1996年からVAIOブランドで展開してきたものの、拡大路線が裏目に出、11年ごろから円高などもあって赤字体質が定着。黒字化のめどがつかないため投資ファンドに売却し、13年度決算で、917億円の営業損失(うち409億円は構造改革費用)を計上した。テレビ事業も10年連続で営業赤字が続いていたが、直近は累積赤字額が縮小。何とか売却は免れ、今年7月に分社化された。こちらは本体にとってはさほどの重荷ではなさそうだ。

むしろ、ソニーの業績の足を強く引っ張っているのは、同社が再生に向けた中核事業と位置付けていたスマホ事業の予想以上の失速だ。特に高性能機ではなく、中国や南米など新興国の普及価格帯機市場で、韓国勢に加え中国勢などにシェアを奪われている。小米科技(北京市)など中国メーカーが台頭し、今年4-6月期の販売は前年同期を割り込んだ。15年3月期の販売計画も7月に5000万台から4300万台に下方修正。その後、さらに4100万台に引き下げた。

ソニーは12年に旧ソニー・エリクソンを完全子会社化し、スマホ事業では拡大路線を突っ走っていた。しかし、中国勢の攻勢で事業計画の見直しを迫られ、15年3月期決算では、エリクソン買収で取得した営業権(のれん代)1760億円を減損処理した。最終利益は500億円の赤字から2300億円の赤字へと一気に膨れ上がり、1958年の東京証券取引所上場以来、初の無配も決まった。

新料金体系の誤算で3位に転落したドコモ

かつて日本国内携帯電話市場で50%を超える圧倒的シェアを誇っていたNTTドコモ。しかし、最近の凋落ぶりは無残だ。これまで“格下”だったソフトバンクが派手な海外M&A(企業の合併・吸収)や出資する中国の電子商取引大手アリババ集団の株式上場などで快進撃を続けていること、iPhone(アイフォーン)導入でドコモに先行したKDDIが2ケタ増益を確保しているのとは極めて対照的だ。ドコモの今期決算は、2割営業減益となる見込みだ。

ドコモは10月31日、第2四半期決算と併せて、15年3月期の連結業績予想も公表。営業利益は前期比23.1%減の6300億円と予想。期初に見込んでいた7500億円を1200億円も下回った。営業利益で初めて通信3社の最下位になった。通信業界の巨人・ドコモにとって悪夢だ。

不振の原因は、今年6月に同社が先陣を切ってスタートさせた「新料金プラン」。これがユーザーの動向を完全に見誤り、裏目に出た。月々2700円の定額通話料金と使用内容に応じて課金するデータ料金を組み合わせたプラン。定額料金以上を支払っているヘビーユーザーが新料金プランに殺到。加えて、少ないデータ容量を選択するユーザーが多かった結果、200億円の増益要因になるはずが、1000億円の減益要因になる見通しだ。

ドコモは、ソフトバンク、KDDIが先行導入し、顧客離れの最大の要因となっていた米アップル社の人気スマホ、iPhoneをとうとう昨年秋に導入し、反撃に出たはずだった。今年4-9月には契約純増数が前年同期23万件から119万件に回復、他社への流出数も月間13万件が3万件に収まるなど改善していたものの、新料金プランの見込み違いで、業績の底が抜けた格好になった。

同社はまた、18年3月期に14年3月期(8191億円)以上の営業利益を目指す中期目標も発表。親会社NTTの鵜浦博夫社長は中期目標について、「最低限の取り組みだ」と述べ、「必達」との認識を示した。昨年のドコモは、推奨するスマホメーカーを2社だけに絞る「ツートップ戦略」を展開したものの、他機種への流出に歯止めを掛けるには至らなかった。やることなすことうまくいかない巨人の戦略には親会社の視線も厳しい。

旧来型ビジネスモデルに固執する任天堂

ファミリーコンピュータ(ファミコン)などで世界のゲーム市場を席巻した王者・任天堂。業績は3期連続営業赤字から抜け出しつつあるものの、今後も本格的に回復軌道に乗るかどうかを懸念視する向きが多い。

今やスマホからゲームをダウンロードして楽しむソーシャルゲーム(オンラインゲーム)全盛の時代。しかし、任天堂は「ゲーム機本体(ハード)とゲームソフトを一体で開発するビジネスは今後も経営の中核」(岩田聡社長)として、独自路線を貫いているからだ。独自路線は良しとして、市場から見放されては、いくら王者でも生きていけない。

家庭用ゲーム機が押され気味なのは同社の業績にも表れている。09年3月期に過去最高益を記録した業績は12年3月期から3期連続で連結営業赤字に沈没した。とりわけ13年3月期は本業のもうけを示す営業損益が464億円の赤字と前期の364億円の赤字から拡大した。据え置き型ゲーム機「Wii U」の販売が落ち込んだことが響いた。

ただ、復調の兆しも見える。14年4-9月期決算によると、営業損益が2億円の赤字と前年同期(232億円の赤字)から大幅に縮小したからだ。12年の発売開始以来、ソフト不足で苦戦が続いていた「Wii U」が今年5月に人気レースゲーム「マリオカート8」を投入した効果もあって欧米を中心に向上。年末には「Wii U」向けに人気格闘ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」、携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」向けには人気ソフト「ポケットモンスター」を導入する予定で、通期では4期ぶりの黒字転換(営業利益400億円、純利益200億円益)を見込んでいる。

しかし、気になるのは、高性能化するスマホの予想以上の普及だ。13年の総出荷台数は前年比38%増と初めて10億台の大台を突破した。6000万台程度のゲーム機を圧倒している。岩田社長は「スマホやタブレットがいくら普及しても、世の中の変化に合わせて提案すれば、ゲーム機がなくなることはない」と強気だが、果たしてその読みは当たるのか。

「復活シナリオ」の決め手はどこに

3社ともそれぞれの事情で今中間決算では「スマホ敗戦」を喫したが、スマホ事業を継続・強化するにせよ、距離を置くにせよ、スマホの影響下から逃げ出すことは不可能だ。世界中で吹き荒れているスマホの嵐を避けることはできない。 

ソニーにとっては「スマホは撤退せず継続する事業」(平井一夫社長)だ。ゲーム(プレイステーション)、デジタルイメージング(イメージセンサー)両事業と並んで、エレクトロニクス分野のコア事業だからだ。中国では投入機種の絞り込みや、販売地域・販売手法を見直すなど、黒字が出る体質への転換を目指す。今期中に血のにじむ構造改革を貫徹できるかどうか。ソニーが復活できるかどうかの鍵はそれが握っている。

ドコモが期待するのは15年2月から、携帯電話と自宅で使う固定通信サービス(光回線)を組み合わせることで、利用料が安くなる「セット割」の導入だ。ソフトバンクやKDDIには既に認められているが、市場シェアが下がったことで、ドコモにも認められたのは皮肉だ。これを生かせるかどうかがドコモの利益回復の鍵を握っていると言えそうだ。

スマホとはあくまで距離を置く独自路線を貫く決意を示している任天堂は10月、「睡眠と疲労の見える化」をテーマとした新規健康事業を発表した。睡眠や疲労の状態を手軽に測定できるセンサーを2015年度から販売する。既存商品のように身に付ける必要がなく、楽しく続けられるのが特徴だ。ゲーム事業で培ったノウハウを生かした健康促進サービスで活路を開く狙いだ。これまた独自経営だ。

(編集部・長澤 孝昭)

カバー写真=2014年9月中間決算を発表するソニーの吉田憲一郎・最高財務責任者(中央、提供・時事)

  • [2014.12.02]
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